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カテゴリー: security

  • Missing ! 大量の爆発物

    ラージャスターン州のドールプルにある公営企業の工場からマディヤ・プラデーシュのサーガルに運ばれる途中だった爆発物と起爆剤を積んだトラックが、今年4月から7月までの間になんと61台も行方不明になっているというニュースがメディアで報じられたのは8月半ばであった。 

    これらは掘削目的で製造・運搬されていたものということだが、トラック61台の積荷は合わせて300トンという大量の爆発性の危険物であり、テロ組織等の手に渡っているのではないかと懸念されていたことは言うまでもない。 

    61 trucks carrying tones of explosives go missing (videos from India) 

    その報道の数日後、行方不明になったトラックのうち4台が発見されたとのニュースが流れたものの積荷は見つかっていない。またトラックを運転していた人々はどこに行ってしまったのだろうか。行方不明の61台のうちの58台は、書面上では目的地であるサーガルに到着しているように偽装されていたとのことだ。 

    4か月のうちに散発的に起きた事件とはいえ、全体でこれほど大掛かりなトラックを蒸発させることができるのは一体どういう犯人たちなのか。これほど沢山の『戦利品』をどこに秘匿できるのかという点から、第一に疑われるのは当の取引関係者たちだ。これが積荷の横流しや架空取引等を繰り返していた結果であるとすれば、金額はともかく扱っていたものが爆発物と起爆剤という国の治安への影響から、歴史に残る経済事件となる可能性がある。 

    300 tonne explosive missing (The Tribune) 

    だがここにきて、事件はとんでもない展開を見せている。行方がわからなくなっているトラックが、なんと『あと102台もある』というのだ。これらも先述のラージャスターン州のドールプルからマディャ・プラデーシュのサーガルならびにアショークナガルに運搬途中に蒸発してしまったものだという。積荷の総量は合わせて850トンに達する見込みだ。 

    163 explosives-laden trucks went missing: MP police (ZEE NEWS) 

    まだ事件の全容や背後関係が明らかになっていないため、現時点でいろいろコメントするのは早計かもしれないが、危機管理という点においてインドという国の足元そのものが脆弱であることを如実に示した事件でもある。 

    今年10月の英連邦大会開催までひと月あまりとなっているが、失踪中の163台のトラックに積まれた危険物の行方が気になるところだ。

  • 奇襲!

    これはテロというよりも、まぎれもない戦争である・・・と私は思う。先週土曜日にパーキスターンのイスラマーバード郊外にある同国陸軍本部を武装集団が襲撃し、人質を取って立てこもった事件である。
    Brazen attack hits Pakistan army HQ (DAWN.COM)
    Skilled commandos rescue hostages (DAWN.COM)
    反政府勢力のタリバーンが犯行声明を出しており、軍の側の警備の不手際も指摘されているが、テロリストたちによる軍中枢を狙った奇襲作戦の『華々しい戦果』の裏には、天地驚愕させるような大仕掛けや綿密に練り上げた陰謀があったのではなかろうか。今後次第に明らかにされるであろう、この事件の背景に関わる様々な情報に注目していきたい。
    大規模なテロ事件の続発、著名政治家の暗殺、タリバーン勢力によるスワート地方の実効支配と政府軍による奪還等々に加えて、中央政府の不安定な政権運営など、気がかりなことばかりが常態化しているパーキスターンの政情だが、近年の出来事の中でも最大級の衝撃的な事件である。
    いまや印パ関係以上に、パーキスターンという国自体の行方を案じずにはいられない。隣邦がどういう国になっていくのか、インドにとって外交上の問題のみならず、自国内においても相当な影響を及ぼしていくことは必至である。

  • スィク教徒 インドへの回帰

    政治的混乱が続くネパールにおいて、バンドやストは日常茶飯事となっているが、望まない休業を強いられて収入が落ち込むビジネス経営者はもちろんのこと、日銭で稼ぎ家計が自転車操業の人々もとても困っていることだろう。
    そうした中、ネパールでの商売に見切りをつけて引き揚げてしまう投資家も少なくないようで、先日ネパールのメディアにこんな記事があった。
    Chronic banda displaces Sikh community (eKantipur.com)
    ビジネスチャンスを求めて、今から遡ること43年前くらいからビールガンジに定着して運輸業に従事し、当地のみならずネパール全国でこれを操業してきたスィク教徒たちが、昨今のネパールの政治状況を嫌ってインドへ回帰する流れになっているということだ。
    古来、テライ地域、インド国境に面したネパールの平原部には深いジャングルが広がり、人口密度は希薄であったとされる。しかし開墾が進むにつれてこの地域は農業に適した肥沃な大地であることに加えて、人口圧力の高い国境の反対側、つまりインドのビハールやU.P.の人々の移住・定着などもあった。
    今ではネパールの総人口のおよそ半分を抱えるようになっているテライ地域において、インドに起源を持ち、人種的、言語的、文化的に国境の向こうにより強い絆を持つマデースィーと呼ばれる人々が占める割合は高い。彼らは長年不利な立場に置かれていたが、近年は活発な政治活動を通じて政治的な立場を強めているのは各メディアで伝えられているとおり。
    初代副大統領パルマーナンド・ジャー氏はマデースィー出身で、就任の宣誓をヒンディー語で行ない大きな非難を浴びることとなったが、彼の母体政党であるマデースィー人権フォーラムは、ヒンディー語をネパールの公用語に加えるべきであると主張している。
    ネパールという国自体が、インドとの間のある意味特別な関係から人々の行き来は頻繁で、国境の反対側に雇用機会を求めたり、起業したりという人々は非常に多いが、隣国インドと接するテライ地域での人々の行き来は頻繁なようで、仕事関係はもちろんのこと、国境を越えた通婚や親族訪問なども少なくない。
    この地域に、私たち外国人が越えることのできる地点もいくつかあるが、インドとの間に時差 (ネパールのほうが15分早い)があること除き、埃っぽい田舎町や農村風景に国境の手前とこちら側での視覚的な違いはほとんど感じないだろう。
    先述の記事中には、『6年前までビールガンジにはスィク教徒の452家族が暮らしていたが、今ではわずか29家族になってしまっている』とある。明らかに隣国インドからやってきた外来の人々であることが不利に作用していることもあるかもしれない。
    だが昨今続いてきた混乱により、国の基幹産業である観光業の不振、加えて世界的な景気後退による追い討ちなどもあり、地元のビジネスマンたちにとっても明るい先行きが見えないことには変わりがないだろう。
    輸送業界からのスィク教徒の引き揚げは決して無視できるものではないようで、これがその他各産業界に与えるインパクトを憂う形で記事は結ばれている。

  • 悪夢は続く?

    スリランカ政府軍に追い詰められたタミル人武装グループLTTEのリーダー、プラバーカラン並びに主要幹部が殺害されたことなどによって同組織は事実上壊滅し、長年続いたスリランカの内戦が終結したことが伝えられたのはつい先月のことだった。
    近年、組織が分裂して弱体化したことに加え、2001年9月11日にアメリカで同時多発テロが起きたことにより、国際社会のスタンスの変化が自らの闘争に与える影響をプラバーカランをはじめとする幹部たちが見極め損なったことが、組織壊滅につながる最大の失策であったといわれる。
    しかし国外にも広くネットワークを築いてきており、スリランカ政府の力の及ばないところに在住する活動家も少なくないLTTEは、そう簡単に息の根を止められたわけではなかったようだ。
    目下、スリランカ国内での武装組織としての存在は滅亡させられたとはいえ、今度は国外で臨時亡命政府を発足させることを宣言。スリランカ政府にとって、かつてLTTEが実効支配していた地域ならびにタミル人問題への今後の対応を間違えば、悪夢はまだ続くことになるのかもしれない。今後の成り行きに注目したい。
    ‘New government’ for Tamil Tigers (BBC NEWS South Asia)
    देश से बाहर सरकार बनाएगा एलटीटीई (BBC HINDI.com)
    Breaking the deadlock through transnational governance (Tamilnet)

  • 忍び寄るテロの危険?

    アメリカ政府による同国市民に対する『インドがテロ攻撃にさらされる高い危険がある』と警戒を呼びかけている。確かに在デリーのアメリカ大使館のサイトも、6月2日付でそうした内容を伝える文章を掲載している。
    Recent Warden Messages (駐印アメリカ大使館)
    これを受けて、インド中央政府のチダンバラム内務大臣が火消しに回るといった動きがメディアで報じられている。
    アメリカ政府が確固たる証拠を得ているのか、それとも他に何か政治的な意図があってこういう情報を流しているのかよくわからない。
    昨年11月にムンバイーで起きた大規模なテロのことが脳裏をよぎるが、何も起きることなく平穏に日々が過ぎていくことを願いたい。
    US cautions its citizens, India upset (ZEE NEWS.COM)
    US issues advisory, MHA assures India safe (Indian Express)

  • トラ死すとも・・・

    インドの隣国スリランカ。LTTEの最高指導者、プラバーカランが死んだ。スリランカのタミル人反政府組織が国軍に降伏したことが報じられた直後、後は彼の身柄拘束がひとつのカギとなる・・・と伝えられたものの、実はその時点で彼はすでに殺害されていた。
    2008年11月24日に『キリノッチはどうなっているのか?』で取り上げたことがあったが、2004年の内部分裂以降弱体化していたLTTEに対し、昨年1月に政府は停戦破棄を通告、特に同年後半から政府は国軍による攻撃をエスカレートさせ、力によるLTTEの粉砕の意思を明らかにしていた。
    近隣国ということもあり、インドのマスコミにもたびたびLTTEにまつわる記事が掲載されているのを目にした。スリランカ国軍によるこの時期からのLTTE実効支配地域へ進攻について、これを『これが最終的な局面へと繋がるだろう』と読んでいたようで、決定的な展開へのシナリオを掲載するメディアもあり、ほぼその予想どおりに事が運ばれていったといえる。
    しかしながら他国のメディアでは、その後スリランカ情勢について、たいした報道をしていなかった。11月下旬に開始された当時のLTTE実効支配地域の『首都』であったキリノッチ攻略により、LTTEが本拠地を東へと移動していくことになる。
    今年の年明けあたりだっただろうか、彼らが民間人を『人間の盾』として立てこもっていることが次第に広く伝えられるようになり、日本のメディアにもそうした状況が少しずつ報道されるようになってきていたところである。
    1983年に本格的なゲリラ闘争に手を染めて以来、海外のタミル人組織や旧東側ブロックの国々からの武器調達等により、正規軍顔負けの戦闘能力と、都市部等においては爆破テロ等で揺さぶりをかけるなど、スリランカにおいて非常に大きなプレゼンスを示してきた。
    それだけに、ラージャパクサ大統領率いるスリランカ当局が、LTTEが弱体化してまだ回復しておらず、『テロとの闘い』という建前が反政府組織殲滅に当たる国軍の暴虐に対する非難に対する護符として使えるこの機を逃してなるものか、と一気呵成に片付けてしまうという賭けに出た。
    当初から予想された欧米その他先進国等から批判と反発を浴びつつも、非常に満足のいく結果を得たということになるのだろう。
    26年間、国軍を向こうに回して闘い続けてきたトラは死んだ。しかし対話による和解ではなく、力による粉砕という手段を経ての反政府組織殲滅は、果たして同国の安定をもたらすのだろうか。
    長年に渡って彼らが撒いて来た『テロリストの種』は、静かに水を含んで殻を膨らませ、あちこちで小さな芽を吹いているかもしれない。あるいはすでに蔦を伸ばして新たな居場所を模索しているのではないだろうか。

  • 煽る政府と暴走するメディア

    今回はインドと関係のない話題で恐縮である。先週土曜日に初めて耳にした『豚インフルエンザ』の話題だが、その後の急速な展開には大いに戸惑っている・・・というよりも、日本のメディアによる取り扱いやこれに対する社会の反応について、大いに疑問を抱いている。
    4月28日までの報道によれば、メキシコでこのインフルエンザの感染によるものと疑われる死亡例が152件であることが目を引くが、その他の国における感染者は、アメリカで64人、カナダで6人、スペインで2人、ニュージーランドで3人、イスラエルで1人、コスタリカで1人の感染が確認されている(その他の国における推定感染者を除く)とのことだが、実際のところどういう病気なのかはよくわかっていないようだ。
    先述の報道の時点では、メキシコにおける死亡例の多さが注目されているものの、その他の国ではまだ死亡例は報告されていない。また症状は通常のインフルエンザと同程度で、患者は順調に回復しているとのこと。
    何故、同じ型のウイルスでも、メキシコとその他の国々でこうも違うのか、まだその理由はよくわかっていないようだ。現地の医療事情や地域的な要因、つまりインフルエンザが頻繁に流行する地域ではよく見られる型のウイルスによる流行であっても、普段それとあまり縁がない地域では大きな被害をもたらすことがあるという。
    日本で馴染み深い(?)A香港型のインフルエンザの流行により、2002年にマダガスカルで、5,000人の患者中、死者374人という惨禍をもたらした例がある。当地でこの型のウイルスにかかった経験が少なく、免疫が低い人々に広まったこと、栄養状態や医療の普及状態などといった要因も絡み合い、重症化する例が多くなったとされる。もちろん今回のウイルスは、私たちにとっても新型であるとされるわけだが、地域的には人々の持つ耐性に差があったりすることはあるのかもしれないという説もある。
    メキシコとそれ以外の国において、ウイルスが悪さをする程度が違うことだけではない。メディアの報道とそれを目にした人々の反応にも、国や地域によってかなり温度差があるようだ。日本の対応は、ご存知のとおり非常に厳格である。
    もちろん死者が大量に出てからでは遅いわけで、その前に被害を限定的に封じ込めよう、またその被害が及ばないように水際で阻止しようという意図はよくわかる。だが今回のインフルエンザについて、メキシコ以外で感染した例においては、毒性がそれほど強いものではないことがほぼわかっている今、これほどヒステリックになる必要があるのか、こうした対応に伴う高い代償を払ってまでそういう姿勢を取ることに合理的な理由があるのかどうか疑問なのだ。
    日本のマスメディアにも問題があるようだ。『言葉の壁』のため、大多数の人が読むのが自国の日本語メディアに限られるので、テレビのニュースや新聞記事等の論調にいとも簡単に『洗脳』されやすい。日本において、それらメディア自体の均質性が高いため、どこも同じようなことを書きたてる。そのため、情報が統制されている状態に近いともいえるかもしれない。
    言葉の壁以外にも、日本語圏自体が人口1億2千万を越える大言語圏であり、しかもこれの言語圏が日本国内に限定されるといって差し支えないものであるがゆえに、日本語による報道自体がほぼ同じ傾向に集約されやすいということもあるかと思う。

    (さらに…)

  • 邦字メディア

    このところ、タイの政治の動きが気になり、同国の英字メディアに加えて邦字紙バンコク週報のウェブサイトを眺めていたらこんな記事が目に止まった。
    インドの民間航空、バンコク便を延期 (バンコク週報)
    ここにある民間航空とは、キングフィッシャー・エアラインのことで、今年3月からバンガロール・バンコク便を毎日運行させる予定であったのだそうだ。しかし機材繰りの関係でこれを今年10月に延期。また発着地もバンガロールの代わりにムンバイーとコールカーターからそれぞれバンコクに就航させる予定だという。 今のところ、首都デリー便は予定されていないようだが、日本からバンコク経由でインド行きの選択肢が増えるのは喜ばしいことである。
    ところでバンコク週報といえば、ご存知のとおりバンコクをベースとする週刊の邦字紙。昨日は、想像を超える多数のアクセスがあった模様で、日中一杯はまったくつながらなかった。もちろんタークシン元首相支持者たちのデモ活動、政府が鎮圧に乗り出し、軍隊と衝突して死者まで出る騒ぎになっているがゆえのことである。
    1976年の創業当時は週間バンコクと称していたそうだ。他にも海外の邦字紙といえば、シンガポールの星日報、フィリピンのマニラ新聞、インドネシアのじゃかるた新聞等、各地でいろいろ出ている。
    現在これらは紙媒体のみならず、多くがウェブサイトも開設しているため、昔は現地の日本人社会周辺でしか見かけることのなかったこれらのメディアに、いとも簡単にアクセスできるようになっている。たまに覗いてみると、日本で発行されるメディアには取り上げられないトピック、日本のメディアとは違った視点なども感じられ、なかなか興味深いものがある。
    海外の邦字メディアへのリンクをまとめて掲載しているところはないかな?と探してみると、ちょうどいいサイトが見つかった。
    海外の日本語新聞 (岸波通信)
    こうした電子媒体をも含めた邦字メディア、つまり海外発の日本語による報道といえば、おおまかに分けて三つに類型できる。
    ?在留邦人向け
    まず第一に、先に上げた仕事などのために現地に在留している日本人たちのためのメディアだ。往々にして駐在期間が数ヶ月から数年と限られており、往々にしてその国や地域の事情にあまり通じておらず、コトバの問題もあり地元メディアによるニュースをなかなか得にくい人たちが主な購買層となるだろう。現地ニュースを噛みくだいて伝え、これと合わせて在留邦人たちに役立つ生活・娯楽ニュースなどを提供することに意義がある。
    ?日系人ならびに定住者向け
    サンパウロ新聞ニッケイ新聞に代表される、海外に移住した日系人たちを対象に発行されているものだ。在住国のニュースが日本語で書かれている点では前者と似ているとはいえ、読者層の大半にとって『故郷』とは在住国そのものであるため、日本に対するスタンスがずいぶん違う。『父祖の国』の日系人に対する処遇がしばしば記事になったりもする。また『納骨堂詐欺にご注意』などという見出しが目に付いたりするのも、そこに根を張って生きる日系人たちの立ち位置が感じられる。また日系人たち(おそらく年配の方々が中心か?)の間で、日本の出身地を単位とする県人会活動が盛んなことも、そうした記事が多く含まれていることから推測できる。
    ?と?は、かならずしもはっきりと境界を区切ることができるものではないかもしれない。タイやインドネシアなどで生活の糧を得る生業を持ち、長年定住して家庭をもうけ、終の棲家としている日本人は少なくないし、ブラジルをはじめとする日系人社会の中に出入りする非定住型の日本人もある。
    ?日本語版外国メディア
    最後に前者ふたつとは明らかに発行主体と目的が異なる邦字メディアがある。日本から見て外国の報道機関が、自国その他のニュースを日本語により日本人読者を相手に発信するものだ。必ずしも発行主体のある現地在住日本人を対象とするものではなく、日本で暮らす日本人たちに自分たちの国の様子を伝える役目をも担っている。ウェブ版の韓国の朝鮮日報、中国の人民日報などがこのタイプに当たる。もちろんロイター・ジャパンのような外国通信社が発信する日本語ニュースもここに分類できるだろう。
    ?はともかく、?と?については、一時滞在も含めて相当まとまった数の現地在住の日本人ないしは日系人の人口がなくては存在しえない。それがゆえに、アジアを中心とする各地で、新たな邦字メディアが生まれたり、日本語による主に娯楽関連のミニコミ紙が登場したりと活発に推移しているのとは裏腹に、中南米の邦字メディアについては、日系人の世代が下るにつれて、日本語を理解しない人が増えていること、父祖の国への文化的な関心も薄れていくことから、かなり苦戦しているところが多いということも耳にする。
    インドの邦人人口はまだそれほど多くはないとはいえ、今後日印関係がより緊密なものになっていくのだとすれば、いつの日かインドで発行される邦字新聞というのも出てくるのだろうか。『日本語で読むインドニュース』を標榜する有料のウェブサイト、インド新聞や無料のインドチャンネルなどというものがあり、活発にインド関連のニュースを発信しているものの、これらはちょっと違う気がする。内容もさることながら、メディア自身が立つ軸足の関係である。
    今、広く知られている邦字紙によるウェブサイトは、言うまでもなく既存の紙媒体のメディアが時代に合わせてウェブ版でも発信するようになったものだ。今の時代に発刊する邦字メディアは、紙面作成や頒布に人手やコストがかかるうえに、流通するエリアに限りがあり、保存性もよろしくない紙媒体をスッ飛ばして、直接電子媒体で・・・というのがいいのかもしれない。
    ともあれ、メディアは社会の公器とはいうもの、れっきとした商売でもあるので、やはりそこはそれなりの需要があり、採算が見込まれることなしに存在しえないことは言うまでもない。

  • BS1の『内偵員』

    すでに放送が終わってしまった番組で恐縮だが、NHKのBS1で、本日午後8時から9時まで、『BS世界のドキュメンタリー 内偵員〜インド・人身売買との闘い〜』がオンエアーされていた。
    NHKのウェブサイトの番組紹介にもあるように、ムンバイーの歓楽街で売春を強要されている少女たちを救うために取り組んでいるNGO,Rescue Fondationで内偵員としての任務に従事するスタッフの活動を追ったドキュメンタリー。
    定期的に髪型を変え、必要に応じて変装して隠しカメラを持って売春宿に客を装って入る。あらかじめ情報を得ている少女本人と接触するなどして情報を得て、警察と協働して摘発に臨む様子を描いている。
    Rescue FoundationのNewsletterのページをクリックすると表示される内容は、この番組で取り上げられていた。
    この内偵員という仕事、もちろんアンダーグラウンドな世界の仕事に干渉することになるため、探りを入れる相手に身元が割れると命の危険があり、またその社会で面が割れてしまうと仕事にならないため、なかなか成り手が見つからず、慢性的な人手不足の状態にあるようだ。
    この団体の代表者は、創設者であり、最初の代表者であった人物の妻。ご主人は、救出活動を行なった帰りに、乗用車が大破する事故に遭い亡くなっている。その背景にはマフィアの関与も取りざたされていたのだとか。その遺志をついでこの責につくことになったということだ。
    またこの団体では、保護された後のリハビリや社会復帰を助ける施設も運営しており、ウェブサイトでは、そうした活動を紹介するギャラリーも設置されている。
    内偵の様子や警察と協働での摘発・救出活動の映像については、よく日本の民放であるような『摘発 歌舞伎町24時』といった番組でも見かけるような構成であった。
    よくわからないのは、この団体そのものの背景だ。専従のスタッフを抱えて施設もかなりしっかりしたものを持ち、相当な資金力があることを感じさせる。
    売春させられている個々の女性の動向についても、近々他の店に移る予定であることを把握していたり、仕事がムンバイーからデリーに移ったことやそこで働いている店が特定できたりするなど、相当な情報網を持っているようだ。
    しかも警察と合流して現場の摘発に参加しているようなので、単に被害女性の保護と更正のために市井の人が取り組んでいる運動というわけではないように思う。
    たぶん、かなり政治的なコネクション、相当有力なパトロンあってこそのことではないかと思うのだが、そのあたりについて番組が踏み込んで取り上げているわけではない。
    もちろん、それだからといって、彼らの活動の価値が否定されるわけではないし、賞賛されるべき取り組みであることは何ら変わりがないのだが、この活動のアウトラインを知るうえで重要なファクターなので、とても興味をおぼえずにはいられない。
    現在のところNHKのウェブサイト、BS世界のドキュメンタリーには示されていないが、いつかこの番組が再放送される機会があるのではないかと思うので、ご関心のある方はぜひご覧いただきたい。

  • 香港飯店の昼下がり

    以前、香港飯店で取り上げてみたコールカーター華僑の鐘さん兄弟が経営する食堂の話である。昼下がりのヒマそうな時間帯に、『やぁ、どうも!』と店内に入ってみると、なにやら彼ら兄弟が一人の男性と話し込んでいる。
    『古い友人がオーストリアから帰ってきたんだ』とのことである。彼もまた中華系で鐘さんたち同様、この街で生まれ育った客家人とのこと。 一見、ダージリンあたりからやってきた人か?と思ったと思わせるような印中混血の風貌と肌色ではあるが。
    彼の実家はコールカーター市内中心部のチッタランジャン通り界隈にあり、父親は大工をしているそうだ。鐘さんの香港食堂の内装はその人の手によるものだという。
    男性は20歳になる前からオーストリアに出て、いくつかの職場を転々としながら16年間、中華料理のコックとして働いてきたそうだ。『みんな私はもう二度とコールカーターに戻らないと思っていたようだし、自分自身もそう考えていた』と言う。
    インドに戻ってきたのは一時帰国というわけではなく、思うところあり、オーストリアでの生活をたたんでインドに再定着するつもりで帰ってきたとのこと。ちょうど近くを通りかかったので、旧知のこの店に顔を出してみたというわけらしい。
    年の中印紛争後、コールカーター在住の華人人口は急減し、多くは海外に出たとされるが、それ以降もより良い機会を求めての移住はなかなか盛んなようだ。沢山兄弟がいるようだが、アメリカに住んでいる者、台湾に住んでいる者、オーストラリアに住んでいる者といろいろいるらしい。今の時代、世界各地で中華系の人々の移動はますます盛んである。
    もちろんその背景には、インドでの環境の問題があり、ベターな暮らしを得ることを目的に海外に出て行く動機となっているのだが、さしあたって必要となる資金を調達できることや移住先での仕事等のツテといった、移住や出稼ぎにあたって必要な手立てを自らのネットワークを通じてちゃんと持ち合わせているのはたいしたものだ。
    男性の兄弟でオーストラリアや移住した人、台湾に住んでいる人がいるということだし、この店の経営者である鐘さんの姉だか妹だかもカナダに住んでいる。その子供たちが、たまにコールカーターを訪問することがあるそうだ。
    『でもインドでの様子には馴染めないみたいだよ。あの子たちの故郷はこの街なのにね』と鐘さん。
    普段は兄弟家族同士では客家語で会話している鐘さんだが、今日はこのオーストリア帰りの男性を交えてヒンディーで話している。彼自身は中華学校で教育を受けたわけではないし、中華コミュニティにどっぷり浸かって育ったわけではないとのことで、華語よりむしろヒンディー語のほうが話しやすいそうだ。
    『まぁ、中国語も一応できるんだけど・・・』
    それにしても、本来土地の言葉であるベンガル語ではなく、ヒンディー語であるというのは、コスモポリタンのカルカッタ商業地育ちらしいところかもしれない。
    彼は、しばらく両親ところに世話になり、これからインドで何をして生計を立てていくか考えてみるとのこと。
    『焦る気はないけど、まあ何か始めてみる。いつか結婚だってしたいし』
    この香港レストランは、サダルストリートに近いことから、外国人旅行者の姿も少なくないのだが、近隣や周辺地域在住らしき華人たちの姿、インドに仕事でやってきた中国人たちの姿をよく目にする。ときにそうした彼らの話をいろいろ聞く機会を持てるのは楽しい。

  • インドの西隣の核保有国にクーデター近し?

    インドのテレビAaj Takを見ていたら『パーキスターンに再びクーデターの危機迫る』というテロップとともに、危機を伝えるニュースが流れてきた。
    ‘पाकिस्‍तान में फिर हो सकता है तख्‍तापलट’ (Aaj Tak)
    緑豊かでのどかな風景の広がるスワート地方で、仏蹟等の見どころも多く、風光明媚な上部スワートとともに、観光地としても名高いエリアであったが、2007年に始まったタリバーンによる武装闘争のはじまりとともに、物騒な地域として知られるようになってしまっている。
    そのスワートで、今年2月にこの過激派勢力による彼らのイスラーム法による支配を認める政府当局の決定を憂慮する内外のメディアによる報道は記憶に新しいところだ。
    Pakistan agrees Sharia law deal (BBC NEWS South Asia)
    Aaj Takのテレビ報道によれば、当事者能力を欠く政府の元にあるパーキスターンで再びクーデターの動きが予想されるとのこと。続いて先日バーングラーデーシュ首都で発生した国境警備隊の反乱についても、パーキスターンのISIの関与の可能性を示唆するニュースも流れており、ちょっと背筋が寒くなる思いがする。
    もちろんパーキスターンと対立関係にある隣国のメディアによる報道であること、とりわけ昨年11月26日にムンバイーで発生した大規模なテロ以降、同国に対する囲い込みの姿勢を強めているインド発のパーキスターン国内情勢に関するニュースである部分はある程度差し引いてとらえる必要はあるかもしれない。
    しかしながら、インドの隣国の政局の混迷ぶりを目にすれば、誰もが多少なりとも懸念しているところではないだろうか。
    同国内の不穏な動き自体もさることながら、こうした状況を横目に第三国による大掛かりな陰謀が着々と進められているのかもしれないし、こうした報道の裏側にはそれを現実のものとしようという意思が蠢いているのかもしれない。
    これが杞憂であればそれに越したことはないのだが、テレビから流れるニュースを見つめながらいろいろと思うところの多い本日の夕方であった。
    とりあえずは、国はどこであれ、世の中が平安であること、無辜の市民たちに犠牲を強いるようなことが起きないことをを祈るのみである。

  • 偽札はお持ちですか?

    インディア・トゥデイ2009年2月16日号英語版
    インディア・トゥデイ(英語版2月16日号P.20〜P.30、ヒンディー語版2月18日号P.16〜P.24)に、偽造通貨に関する興味深い記事が出ていた。同誌を購読されていなくても多少なりとも興味のある方は、ウェブ上のPDF版をご覧いただければと思う。登録(無料)すれば、これをそのままダウンロードすることもできる。
    以前は同誌ウェブサイトで定期購読者以外に提供される情報はかなり限定されていたものだが、昨年あたりから方針が変わったのか発売中および過去の誌面のPDF版を誰でも閲覧およびダウンロードできるようになっている。
    これが売り上げにどういう影響を与えるのかよくわからないが、インドで今起きていることを伝える社会の公器であるマスメディアとして、模範となる姿勢だと私は感じている。内容はもちろん、広告を含めて市販されているものと同一だ。私は紙媒体は読み終えたらすぐに処分しているが、後で何か参照したいときに便利なので、毎週PDF版を自宅PCに保存している。
    売り上げといえば、取り立てて大きな事件が起きなかった今週号だが、かなり興味をそそる特集だっただけに、かなり販売部数を伸ばしたのではないかと私は推測している。ある意味、テロよりも身近で重大なテーマだけに、続報が待たれるところである。
    さて、前置きが長くなってしまったが本題に入ろう。『FAKE CURRENCY』というタイトルの特集記事は、流通しているインドのお金のうち9千億ルピーあるいは通貨の15%が偽物であるというショッキングなもの。記事冒頭には偽通貨の流通ネットワークがイラストで示されている。
    パーキスターンのカラーチー、ラーホール、クウェーターおよびNWFPで製造されたものが、ネーパール、バーングラーデーシュといった近隣国を通じて流れるルート、UAEのドゥバイからシンガポール、バンコクなどを経由して回流するルートがあるとのこと。また国内でこれらの流布の中心となっている地域としては、カシミール、ラージャスターン州のバールメール、グジャラートのカッチ地方、カルナータカのマンガロール、ケララ北部、チェンナイ、西ベンガルのマールダー、U.P.北部などが挙げられるのだという。
    昔から偽札に関する報道はメディアに出てくることはあったが、ここにきてその規模が格段に大きくなっている(500ルピーおよび1,000ルピーの額面の紙幣において発見さる偽札の数は、最近3年間で何と10倍になっているとか)こと、造りが非常に精巧になっていること、インド経済に与えるインパクトの大きさ、テロ活動の資金源となること、またこれらに対する当局の対応が後手に回っていることなどに対して警鐘を鳴らそうというのがこの記事の趣旨のようだ。
    背後には、インド出身で現在パーキスターンに潜伏しているとされる、もはや神話的存在(かなり若いころの写真しか出回っておらず、今では整形手術等でかなり違った風貌になっているらしい)となっている大マフィアのダーウード・イブラーヒムおよびバーキスターンの三軍統合情報部(ISI)の関与が指摘されるなど、非常に大掛かりなものらしい。
    P.22には、本物と偽物の紙幣の見分け方が図解されている。思わず手持ちのルピー紙幣を取り出して、マジマジと点検してしまう。ただしここに書かれているのは、現行のデザインの紙幣にセキュリティ強化のためのマイナーチェンジが行われた2006年以降に発行されたものに限った話だ。お札を縦に走る銀色の線の部分の具合が他の紙幣と違ったり、裏面に印刷年がなかったりしても、それが即偽札だと早トチリする必要はない。もっとも2005年以前に発行された紙幣のついての見分け方は出ていないので、ここに示されている内容だけで真贋の見分けがつくとはいえず、あくまでも2006年以降発行された紙幣についての話だ。最近、コールカーターの地下鉄車内でも同様の掲示物を目にしたことをふと思い出した。
    ただし今後偽札に対する警戒感が高まってくると、額面の大きなお札については、2005年以前に出た紙幣の受け取りが拒否されるケースが出てこないとも言えないだろう。自国通貨ではないが、外貨両替においてはそういう実例がある。
    1996年に米ドルのデザインが変更され、それ以前に発行された紙幣よりも肖像部分が大きくなっている。それよりも前に出た旧型紙幣も米国ではリーガルな通貨だが、偽札が多数存在するため、米国外では国により使えないことがあることは広く知られているところだ。
    新札でも50ドル、100ドルといった額面の大きなものになると、発行年やシリアルナンバー冒頭のアルファベット記号によっては、受け取りを拒否されることがあり得る。悪名高きCBナンバーなどはその典型だ。これまでに発見された精巧な偽札の存在がその原因だ。
    この紙幣見本のシリアルナンバーが『AK』から始まっているが、もし『CB』だと国によっては受け取ってもらえないことがあるので要注意
    すでに流通している偽札について、現金を扱う金融機関で厳重にチェックされているわけでもないようで、銀行の窓口やATMで普通に受け渡しがなされているようで、私たちがそうとは知らずに、パーキスターン製であるとされる偽インド紙幣を手にする機会は案外多いのかもしれない・・・というよりも、冒頭の偽札の割合が15%という数字が確かなものであるならば、相当頻繁にそれらを手にしていることになる。
    さて、手持ちの高額紙幣をすべからず点検してみて、『コレは怪しいゾ!?』というお札を見つけたらどうしようか?通常、それらは額面の大きなものであることから、記念に保存しておくよりも、むしろ『変だな』と思ったらそそくさと使ってしまうことだろう。金融機関に確認に出向くなんて面倒なことはしないし、警察署に届け出ようものならばかえって無用なトラブルに巻き込まれそうで怖い。
    運悪く所持金に混じっていた偽造通貨を当局に提出したら、相応の報奨金がもらえるような手立てがなされているわけではない。ゆえに『私が偽造したんじゃない。大切なお金を没収されたりしたら元も子もないではないか。アホらしい』『汗水流して稼いだんだ。れっきとした銀行のATMから引き出したお札がたまたまニセものだったとしても、なぜ私が自腹を切る必要があるのか。まったくもって馬鹿らしい』と、まずは自らの懐のことを、私を含めて多くの人々が考えるはず。かくして偽札は大手を振って世間を渡っていくことになる。
    偽札対策には、大衆への啓蒙や当局並びに金融機関でのチェック強化のみならず、不幸にしてそれを手にしてしまった個々(個人ならびに企業)への補償を含めた対応もまた不可欠なのではないかと思う一小市民の私である。偽造の手間は変わらないことに加えて、その旨みからしてニセ札は高額紙幣に集中している。ゆえに財布の中にそれを見つけてしまった場合、とりわけそれが個人の私財であった場合の苦悩を政府は汲み取るべし!! ・・・とはいえ、流通している通貨の15%を補償するというのは無理な相談に違いない。どうするんだろう、この偽札対策?
    ところで、あなたは偽札お持ちですか??
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