ただいまメンテナンス中です…

カテゴリー: politics

  • ニュース雑誌 Northeast Today

    インド北東地域の通称「セブン・シスターズ」。アッサム州、アルナーチャル・プラデーシュ州、トリプラー州、ナガランド州、マニプル州、ミゾラム州、メガーラヤ州のことだが、「充分にインドらしさがある」アッサム州とそれ以外の州では様相が大きく異なる。

    地理的には隣接していながらも、民族的にも文化的にも差異が非常に大きく、それぞれ別々の国であるかのようだ。ヒンドゥー教や仏教に取り込まれることがなかった地域さえある。
    北東地域を総括する共通項といえば、「どれもインド共和国に所属している」ということくらいではないだろうか。

    そんな民族のモザイクのような魅力に溢れる北東地域だが、アッサム州を除けば巷にこの地域の情報があまり多くないのは、同州以外は経済的に重要な地位を占めていないという事情はもちろんのこと、人口が少なく、地元マスメディアのインフラが貧弱であることなどがあるだろう。情報発信力が弱いだけではなく、記事の質や信憑性といった面でも、アッサム州を除く北東地域以外とは比較にならないといって間違いない。

    そんな中で、北東インド地域を包括する月刊ニュース雑誌Northeast Todayはなかなか重宝する。アッサム州の州都グワーハティーをベースとするメディアだが、ヨソではあまり話題にもならない「セブン・シスターズ」各地のニュースを精力的に取り上げている。

    興味深いことは他にもある。誌面で取り上げられる中央政界のニュース、対中国その他の国際関係の記事などが、北東地域の視点から書かれていることだ。

    近年は、MAGZTERで定期購読もすることができるようになっているのだから、インド世界も狭くなったと言えるかもしれない。月刊誌であることから、トピックのフレッシュさの面で不利になることは少なくないため、同誌のウェブサイトのほうも併せてチェックしていくといいだろう。

  • ニュース番組Aaj Takの 「So Sorry スワッチ・バーラト最新版」

    ニュース番組Aaj Takの 「So Sorry スワッチ・バーラト最新版」

    おい、あんたたち!
    ちょっとキレイにしたらどうだ!
    家の中だけじゃなくて小路も、道路だけじゃなくて溝も、自宅周辺だけじゃなくて地域をキレイにしようぜ。
    家だけじゃない、屋敷だけじゃない、寝室だけじゃない、庭だけでもない。
    そもそも君たち、インドはなぜ汚いんだ。

    ・・・といった具合の歌とともに、清掃を呼びかけるモーディー首相が人々に訴える。

    So Sorry: Swachh Bharat

    ニュース番組Aaj Takの中でしばしば流れる風刺アニメのシリーズだが、これは昨年10月にモーディー政権がSwachh Bharat Abhiyan(クリーン・インディア運動)を打ち出した直後にリリースされたSo Sorry: Swachh Bharat Abhiyanの最新版だ。

    番組でしばらく間をおいて同じアニメが何度も出てきたり、これが毎日繰り返されたりすると飽きてしまうものの、So Sorryシリーズにはなかなか秀逸なものも多いので、見応えがある。何かちょっとした出来事があると「どんな具合に取り上げるのかな」と期待したりもしてしまう。

    政治がエンターテインメントの具にもなるのはインド人たちの政治意識の高さならではのことであるし、辛辣な風刺も少なくないことに、メディアのしたたかさ、批判精神の旺盛さを感じたりもするだろう。

    2月にデリー首都圏の選挙があり、AAP(Aam Aadmi Party)が70議席中67議席を占めるという大勝で新政権が発足したが、この選挙戦の迷走ぶりについてこのようなものがあった。

    So Sorry – Aaj Tak – So Sorry: On ‘parachute netas’

    So Sorry:’Kiran raise’ BJP’s hope

    インドの政治動向をフォローしていないと、何のことだかよく判らなかったりするかもしれないが、多少なりとも関心があれば、今後フォローしていくと楽しいことだろう。

  • ナガランド 暴徒による性犯罪者のリンチ殺害事件の背景

    2月24日にナガランド最大の街であるディマープルで起きたナガ女性に対する暴行事件で逮捕された男性が収監される刑務所が暴徒に襲われ、この男性が外の往来に引きずり出されて殺害されるという凄惨な事件が3月6日に発生した。

    Indian ‘rapist’ who was lynched by mob who broke into prison and beat him to death had ‘offered his victim £50 to keep quiet about the attack’, she claims (MailOnline)

    メディアが掲げるヘッドラインを目にする限りでは、インドで近年増加している性犯罪に対して業を煮やした市民たちの怒りが社会の秩序と正義を求めて暴発という具合に読めるだろう。もちろんそれには間違いないのだが、もうひとつの側面がある。

    文化も人種も異なる「抑圧者」インドに長年虐げられてきたとされる鬱積とベンガルやアッサムからの移民流入に対する不満の爆発で、こちらは前述の社会秩序や正義とは大きくベクトルが異なるコミュナルなものとなる。

    今回の事件については、ディマープルでしばらく続いていた市民による抗議活動の延長線上にある。

    Protest against Feb 24 rape rattles Dimapur city (Nagaland Post)

    レイプ事件を起こした犯人はアッサム州出身のムスリム男性(2月24日の事件発生後以降しばらくはそのように伝えられていた)であった。そして被害者は地元のナガ女性。ディマープルは、ナガランドの最大都市でありながらも、州内のその他の土地と異なり、アッサム州に隣接する平地にあり、人口の相当部分がナガランド州外の平地から来た日々とであるため、まったくナガランドらしくない普遍的な「インドの街」に見える。
    そんなディマープルの刑務所に押し掛けた数千人とも言われる群衆の大半は地元ナガランドの人々であったようだ。

    ナガランド州首相は、この事件の背景にコミュナルな対立の構図があることを否定しているが、同州内のいくつかの有力な在野政治団体がこの機を利用しないことはないだろう・・・というよりも、そうした組織がこれを絶好の機会とみて、市民による抗議活動の中に活動家を合流させて扇動し、数の力に任せてこの事件を起こしたと捉えるほうが正しいことと思われる。この事件は、現在それなりの安定を手に入れたナガランド州をふたたび不安定な状況へと陥れる導火線となり得るかもしれないため、今後の進展から目を離すことができない。

    また、2月24日にこの事件が起きた際の報道では、犯人の男性は「アッサム出身のムスリム」ということになっていた。また3月6日のこの事件を受けて、アッサム州首相は、おそらくこの事件がナガランドの野党勢力中の政治団体による反ベンガル人、反アッサム人のシンボルとして利用されていることを念頭に置いて、デリーの中央政府に対する治安強化を促す発言をしている。

    殺害された性犯罪者について、いつしかナガランドポストのような地元メディア、そして全国をカバーする大手メディアでもこの男性をアッサム人ではなく「バングラデシュからの不法移民であることが疑われる者」と報じるようになっている。「外国人による犯罪」とすることにより、国内でのコミュナルな色あいを薄めようという当局の意思が反映されているのか、報道機関による自制ということなのかもしれない。あるいは隣国から不法に移住したがゆえに、逮捕された際に自らのアイデンティティーを偽っていたことが後になってから判明したということなのかもしれないが。

    Centre concerned as tensions run high in Nagaland (The Hindu)

    北東インドでコミュナルな色合いの濃い流血事件が起きると、その背景には奥深い闇が横たわっていることが多々ある。

  • J&K州新政権発足

    昨年12月に州議会選挙が実施されたJ&K州だが、単独で全87議席の過半数を抑えることができた党はなく、水面下で連立を模索する工作が続いていたが、前回よりも議席を減らして政権から陥落することとなったJKN(Jammu & Kashmir National Conference )とは対象的に今回は議席数を伸ばしたPDP(Jammu & Kashmir Peoples Democratic Party)が、とりわけ地域色が非常に強いこの州ながらも、前回の2008年の選挙時以上に大きな躍進を見せた「外来勢力」のBJPと組むという、「火中の栗を拾う」かのような決断をした結果、PDP+BJPという、先行き不透明な連立政権が発足することとなった。

    J-K to have BJP-PDP govt as Mehbooba Mufti, Amit Shah finalise CMP (financialexpress.com)

    今回の主要各党の議席数を過去の選挙結果とともに眺めてみると、ここしばらく同州の政権を担ってきたJKNの退潮ぶりが際立っている。

    また、今回の選挙で主な政党が抑えた地域を俯瞰してみると、ジャンムー、カシミール、ラダックという異なる民族、宗教、文化が行政区分において一括りにされている州らしく、あまりに明解すぎるほどはっきりと分かれていることが一目瞭然だ。

    カシミール地域では、地場政党のJKNからPDPへと支持政党が移行したこと、ラダック地域ではやはりコングレスが強いことはさておき、BJPの急伸ぶりはジャンムー地域に限られる。同床異夢で連立したPDPとBJPのもとに、州内での地域間対立の火種とともに、蚊帳の外に置かれたラダック地域の不満が伸長するのではないかという懸念を抱えていると言えるのではなかろうか。

    そうした不安定要素に加えて、杞憂かもしれないが、ちょっと不吉なものを予感させるようなものもある。

    Jammu and Kashmir torture hubs shed horror Cargo: Makeover for Sringar’s dreadful interrogation centres (Mail Online India)

    80年代末から90年代にかけて、カシミールで反政府運動、分離活動が燃え上がってきた時期、治安当局による凄惨な拷問がなされていた3つのスポットのうちのひとつが、PDP党首メヘブーバー・ムフティの父親であり、先代の党首でもあるムフティ・モハンマド・サイードの現在の邸宅となっていることだ。

    カシミールの人々の庶民感覚があれば、そのような忌まわしい場所を邸宅にすることはないであろうし、それを理由とする扇動や攻撃が充分に予想されるものでもある。

    (ラージコート2は後日掲載します。)

  • 自国内の「無国籍者」に他国籍を買うクウェート

    インドとは関係のない話で恐縮であるが、こんなニュースが目に付いた。

    無国籍住民に大量の外国籍を買うクウェートの真意 (ニューズウィーク)

    クウェートにて、昔からその土地に住み着いていたベドウィンの子孫にコモロ連合の国籍を買い与えており、コモロ連合はすでにそうした人々に対してパスポートを発行しており、こうした措置に対して人権団体が反発しているとのこと。

    確かに、記事中にあるとおり、無国籍であった人々の立場に公的な位置づけがなされることにより、それに応じた行政サービスを含めた措置が可能となるという面はあるのだろう。

    しかしながらその結果として、彼らが代々居住してきた(国境のこちら側と外側とを行き来しながら暮らしていたにしても)土地の市民ではないということが明確となることにより、つまり「外国人」となることにより、クウェート国内で暮らしていくには、当局の発行する在留資格が与えられることにより可能となるわけである。

    当然のことながら、クウェートで「自国民」と同じ権利を有することにはならず、様々な不利益が容易に想像できる。また、在留資格が延長できなかったり、失効するようなことがあったりすれば、「外国人」である以上、国外に退去しなくてはならなくなる。

    そうした人々に対して、まず在留資格を与える時点で選別がなされるということも可能となり、無事に在留資格が与えられたにしても、個々に対して恣意的な対応や措置、つまり国外への退去強制という手段がなされるのであろうし、それを実行できるようにするというのがこうした政策の意図であろう、というのがこの記事の意味するところであるが、まさにそれ以外の目的は考えにくい。

    そのコモロ連合とはどのような国かといえば、アフリカ東部のマダガスカル近くにある島嶼部から成る小国で、概要についてはこちらをご参照願いたい。

    コモロ連合基礎データ(外務省)

    海洋交易を通じてアラブ世界との交流が盛んであった地域だけに、住民の大半がイスラーム教徒であり、アラブ系住民も多い国ではある。

    クウェートに居住しながらも、こうした国の籍を与えられた人々に対して、「本国」から必要な庇護が与えられるとは考えにくく、仮に住み慣れた国での在留が認められず、縁もゆかりもない「本国への送還」となった場合、大変な苦難が待ち受けていることは言うまでもない。

    これはクウェート国内に居住する無国籍の人々に対する地位保証の措置ではなく、明らかに金満国家による棄民政策である。

  • Uberタクシー運転手によるレイプ事件

    インドでも無線タクシーのサービスが定着して久しい。Meru、Mega Cabs、Easy Cabsなど利用してみるたびに、従来型のタクシーとはドライバーの態度、運転の安全性、明朗な会計等々、ずいぶん違うものだと感じ、価格差以上のお得感があると思っているのは私だけではないだろう。

    そうした新手の無線タクシー各社と比較してさえも、Uber社のタクシーは他とは一線を画したビジネスモデルを展開し、利便性、目新しさと安心感などから消費者たちからは好意的に迎えられていたはずであった。このユニークなサービスに関する解説を加えるメディアは、世界で急速に事業を展開して高い評価を受けつつも、各国で既存の業界等との軋轢をうむUber社については、多少の疑義は抱きつつも、概ね好意的に捉えていたはずであった。

    世界中に旋風を巻き起こすUber社とは?(INDIA GO)

    最低料金は30ルピー、Uberがインドで低価格タクシー「UberGo」を開始(gaika.net)

    10 little-known facts about Uber (The Times of India)

    とりわけ同社による低価格タクシー、Uber Goというサービスの導入には大きな期待が持たれていたはずだ。

    Uber Go launched in India, claims to be cheaper than an autorickshaw (indiatoday Tech)

    ところが、すでに各メディアで報じられているが、12月5日にあってはならない事件が発生したことにより、こうした評価が地に堕ちることとなった。

    Delhi Woman Raped, Allegedly by Uber Cab Driver (NDTV)

    すでに現在、犯人のシヴクマール・ヤーダヴは逮捕されているが、彼は数年前に同様の性犯罪を起こして逮捕・服役した経歴があることが明るみに出ている。昨日のインドのテレビのニュース番組では、「2時間ほどのインタビューで誰でも運転手になることができる」などという話も出ており、同社に対する社会の信用が失墜することは免れないだろう。この事件を受けて、同社のデリーにおける営業は停止処分を受けている。

    It’s the end of the road for Uber in Delhi (rediff NEWS)

    とりわけ人が主体となるサービス業において、まさにそこで働く人こそが最大の人的資源であり、やはり「人材」というものが大切である。

    しかしながら従来からのタクシーにおける一般的な運転手やサービスの質は残念ながら相当低いものであるため、このような事件があっても、やはり長期的にはUberの優位は揺るがないのではなかろうかと思われるのは皮肉なことである。

    先述のインドのテレビニュースでは、このUberのドライバーによる事件に関して国会で取り上げられた議論の様子も放送されていた。しかしながら従来型のタクシーがUberのサービスよりも安心なのかといえば、まったくもっとそうではないのがインドのタクシー業界の現状だ。

    人口大国であり、数々の優秀な人材を抱える国ではあるものの、必要とされるレベルの人材が社会のすべての分野に広く揃っているわけではないところが、この国の大きな課題のひとつどあるともいえるだろう。

  • インドの華人コミュニティ

    TAIPEI TIMESのウェブ版に、中印紛争以降のインドで迫害や不利益を受けてきた中華系コミュニティに関する記事が掲載されている。

    FEATURE: India’s fading Chinese community reflects on war past (TAIPEI TIMES)

    彼らが紛争勃発後に、敵性国民としてどのような扱いを受けてきたかについては、上記リンク先にあらましが書かれているので、あらためて説明するまでもないだろう。

    彼らのコミュニティは、コールカーターに集中しているが、紛争以前にはムンバイーにも小さなコミュニティは存在していただけでなく、その他の主要都市にもいくばくかの華人人口があったようであり、現在もまだ残っている人たちがあるようだ。

    北東地域もその例外ではなく、アッサムにもかなりの数の華人たちの姿があったようだ。紛争勃発当時はまだアッサムの一部であった現在メガーラヤ州の州都シローンで、今でも商いを営む中華系の家族があることからも容易に想像がつくだろう。

    近く、インド人作家のリター・チョードリーによる、アッサム地方に暮らした華人たちに焦点を当てた歴史小説が出版される予定だ。

    Makam by Rita Chowdhury

    この本は、今年の春あたりに出る予定であり、私自身もそのころすでに予約しているものの、どういう理由なのか知らないが、かなり遅れているようだ。大変興味深い内容であるに違いないので、とても楽しみにしている。まぁ、気長に待つことにしようと思っている。

  • インドのチベット人

    以前、MAJNU KA TILLAと題して書いてみたデリーのマジヌー・カー・ティッラーだが、この地はasahi.comの連載:地球を食べるの記事でも取り上げられているのを見つけた。

    (地球を食べる)望郷の味チベット料理 (asahi.com)

    中国による「チベット解放」後にインドに難民として逃れてきたチベット人たちに、インド政府は相応の待遇を持って迎えてきたと言える。その中で経済的に成功した者も少なくないが、彼らはあくまでも異国インドに難民として仮住まいをしている立場にしか過ぎない。

    しかしながら、すでに三世代目、四世代目に入ってしまっており、国籍は持っていないものの生まれも育ちもインドで、祖国チベットを訪れたことさえない、事実上の「チベット系インド人」化してしまっている現在、彼ら自身がこれからどうしていくのか、またインド政府も将来的に彼らに対してどのような対応をしていかなければならないのか、真剣に取り組まなくてはならないだろう。

    現在のダライラマも未来永劫に彼らとともにこの世におられる訳ではない。インド中に散らばるチベット人たちを結ぶ大きな求心力が失われたとき、彼らのコミュニティはどうなっていくのだろうか。

    インドをはじめとする在外チベット人コミュニティをまとめあげる存在の代替わりは、それがたとえ次に転生するダライラマであっても、俗人の中から選ばれた人物がその役割を担うことになっても、相当な混乱が生じることは間違いない。中国当局による工作の可能性はもちろんのこと、彼ら自身の中にも野心を抱く者たちの存在があり、激しいさや当てが繰り広げられることは避けられない。

    また、現在のチベットの情勢が変わる見込みもないわけだが、万が一、将来何か思いもよらないことが起きて、彼らが帰還することが可能になったとしても、すでに数世代に渡り生活基盤を築き上げ、それなりに安定した生活を営む現在インド在住のチベット人たちの果たして何割が戻ろうと決心することだろうか。

    遠くない近未来には、彼らインド在住のチベット人たちがインドに帰化することを求めなくてはならず、そしてインド政府もそれを受け容れなくてはらない日がやってくることは想像に難くない。

  • National Geographic 11月号

    Facebookである方が書き込まれたことから知ったのだが、National Geographic11月号の特集はSorrow on the Mountainと題して、今年4月にエベレストで発生した大規模な雪崩による「エベレスト史上最悪の日」とされる歴史的な事故が取り上げられている。

    地元ネパールで登山に関わる人たちの仕事と暮らし、事故の顛末と遭難した人々やその周囲の動き、山をめぐる経済効果や労働問題、事故の後に持ち上がった政治的な動き等々が各種メディアを通じて報じられてきたが、それらを俯瞰する形で読んでみると、この事故が起きる前から、その背後にあった社会問題が浮き彫りにされているように思う。もちろん、それらは現地で登山関係の仕事に従事している人々にとっては、周知の事実に過ぎないのかものであったとしても。

    そこに登山の仕事がある限り、そこでの稼ぎを求めて行かなくてはならない男たちがいる。名峰を征服する登山隊の華々しい活躍は彼らの支えがあってこそのものであり、登山活動がそこにある限り、こうした男たちやその周辺の産業で働く人々にも恩恵が及ぶことになる。また、登山料等の収入は、国家に対しても貴重な財源となり、300万ドルもの収入を与えることになるなど、経済的な効果は計り知れない。

    それほど重要な産業なのだが、これを支える最前線の現場、つまり登山の仕事でほとんどの補償もない状態で、命の危険を冒して働く人々に依存している現状。だが、その仕事による収入を必要としている男たちや彼らが養う家族があり、登山者たちもそうした彼らを必要としているというジレンマ。労働条件の改善は必要であるとはいえ、そこにマオイストたちがツケ入る隙間も大きなものであるわけで、これが政治絡みの騒動へと繋がる。とりわけこの国の「基幹産業」のひとつともなれば、なおさらのことだ。

    上記に示したリンク先でも記事内容のあらましは判るとはいえ、ぜひ印刷された今月号を手に取っていただければ幸いだ。記事内にいくつも散りばめられて、文章同様に、あるいはそれ以上に多くを語りかけてくる写真とその解説を読みながら、この問題についていろいろ考えさせられるものがある。

  • ディーワーリー

    ディーワーリー

    インドの祝祭、ディーワーリー。隣国のネパールではティハールとして人々が祝う。

    このディワーリーの祝祭が祝日として定められている国はかなり多く、南アジアのインド、ネパール、バングラデシュ、スリランカ等以外でもシンガポールモーリシャスフィジーガイアナスリナムトリニダード&トバゴといったインド系移民が多い国々でも公休日となっており、かなりグローバルなお祭りであるといえる。

    しかしながら、インドの隣国にして、国内に幾つものヒンドゥーの伝統的な聖地や名刹を抱えている(分離後は廃れてしまっているが)パキスタンについてはこの限りではない。

    Pakistani Hindus ask government to give Diwali holiday (BBC NEWS ASIA)

    印パ分離独立の際にインド側に移動したヒンドゥー教徒たちの人口が多いとはいえ、今でも総人口の1/20を占めるということは、決して無視できる数字ではない。そもそも同国は、旧宗主国イギリスが去った後に、ヒンドゥーがマジョリティーとして支配することを嫌うアンチテーゼとしてのムスリム国家建設を目指したという歴史経緯があるとはいえ、社会的に高い地位を占める者、影響力の大きな者が去ってしまったことが、その背景にあるといえる。

    たかが祝日と言うなかれ。現在同国内で続くヒンドゥーたちへの蔑視やヒンドゥー自身の受難が主にインドのメディアにてしばしば報じられているが、年中行事の中でも最大級の祝祭が軽視されているところに、彼らの置かれた立場が透けて見えると言っても決して大げさではないだろう。

  • ミャンマーからインドへの陸路越えが可能に

    ある方のFacebook書き込みで知ったのだが、なんとミャンマーからインドへの陸路による国境越えが可能になっているようだ。ミャンマー側でのパーミット取得が必要なようである。

    その陸路による出国・入国地点は、ミャンマーのサガイン管区のMorehからインドのマニプル州のTamuである。この情報は、こちらをご参照願いたい。

    Myanmar / India Land Border Crossing at Tamu/Moreh Open (Lonely Planet THORN TREE FORUM)

    Crossing the Indo-Burmese Border on Motorcycle (THE IRRAWADI)

    どちらの地域も現在では自由に旅行できるようになっている。しかしながらどちらの地域にも長く抗争を続けてきた反政府武装勢力が存在し、現在は停戦状態にあること、ときおり治安に関する問題が生じていることは頭に入れておきたい。

    Trade resumes at India-Burma border (DVB)

    もしかすると、数年後にはポピュラーな国境越え地点となっている可能性もある。数年前にパーミット無しでの入域が可能となったものの、さほど注目を浴びることなく、期待されていたほど観光の振興に繋がっていないインド北東部が、ちょっとしたブームとなる可能性もあるかもしれない。

    しかしながら、外国人の出入境も可能となっていることから、物流ルートとしてもそれなりの機能を果たすようになっているものと思われることから、両国側ともこの出入国地点のエリアがもはや辺境ではなく、ダイナミックな通商のルートとなりつつあることが、容易に想像できるだろう。

  • インド亜大陸にアルカイダの支部

    アルカイダのリーダーのアイマン・ザワヒリーの声明は気になるところである。

    亜大陸に支部を設立することを宣言するとともに、ミャンマー、バーングラーデーシュとともにインドのアッサム、グジャラート、カシミールのムスリムたちに対する支援を表明している。

    Al Qaeda Opens New Branch on Indian Subcontinent (New York Times)

    アルカイダは従前よりアフガニスタンやパーキスターンで活動を続けてきたが、ここにきて「支部を設立する」と言うからには、亜大陸での活動を本格化させるという強い意志の表明ということになるだろう。

    これを受けて、インドのメディアの反応はこのような具合。

    Nation on alert as al-Qaida launches India wing for ‘return of Islamic rule (THE TIMES OF INDIA)

    Al Qaeda Launches Wing in Indian Subcontinent (NDTV)

    Al-Qaeda declares new front to wage war on India, calls for jihad in the subcontinent (The Indian EXPRESS)

    http://indianexpress.com/article/india/india-others/al-qaeda-leader-ayman-al-zawahiri-announces-formation-of-india-al-qaeda/

    イスラームの敵 ?

    今年5月にインド首相に就任したナレーンドラ・モーディー氏。インド国内で清廉なイメージとグジャラート州首相として発揮した行政手腕とその果実としての同州の経済成長などから期待値が高く、改革に対する果敢な姿勢から現在までのところ好調な滑り出しを見せている。また、つい先日の訪日の際には安倍首相とともに経済面のみならず国防面でも積極的な協調姿勢を打ち出し、日印新時代の幕開けを印象付けたモーディー氏である。

    しかしながら、アルカイダは氏を「イスラームの敵」と位置付けることも想定しているらしいとの報道もある。もとよりインド国内においても2002年のグジャラート州で発生した暴動の際に、その前年に同州の首相に就任したモーディー氏による関与が長らく疑われてきたこともあり、インド国内外でそれなりの説得力を持つものとなることは否定できない。

    Al-Qaeda wants to portray Narendra Modi as enemy of Islam (The Indian EXPRESS)

    過激派活動家を生む土壌

    本家のアルカイダと袂を分かったISISのイラクにおける戦闘に加わっているムンバイ―近郊出身のインド人ムスリムもいることがすでに明らかになっているが、その中の1人が戦死したことも8月下旬に報道されていた。

    Indian youth dies while fighting for ISIS (DIGITAL JOURNAL)

    Fighting for “Islamic Caliphate”, Kalyan Boy dies in ISIS war against Iraq (THE INDIAN REPUBLIC)

    インターネットの普及により、こうした過激派のリクルートが容易に国境を越えるようになって久しいが、インドにおいては英語を理解する人口が膨大であること、世界有数のムスリム人口を抱えているにも関わらず、ヒンドゥー教徒の大海にあってはマイノリティーの地位に甘んじており、英国からの独立の際に分離したパーキスターンとの関係などから、相対的に不利な立場にあるといえる。

    そのため世俗的に抑圧感を覚えていたり、社会生活に信奉しているイスラームの見地と相容れない部分を感じていたりしているムスリムは少なくないはずであるとともに、貧困層の中においては、自身の不遇をムスリムに対する社会の不条理な対応であると理由づけしてしまうこともあるだろう。とりわけ若年層、精神的に不安定で、家族に対する責任や義務などがまだあまり生じていない者たちの中から、過激思想に共鳴する者がある一定の割合で出てくることを防ぐのは容易ではない。

    そうした人々は隣国パーキスターンで活動するラシュカレトイバをはじめとする組織や地元インドで結成されたインディアン・ムジャヒディーンのようなグループで活動したりしてきたわけであるが、そうした選択肢の中にアルカイダも加わることになるのだろう。

    亜大陸のムスリム社会への影響

    ここしばらく鎮静化しつつあったインドにおけるテロ活動、カシミールの治安情勢が今後危惧されるとともに、亜大陸全体におけるムスリムのコミュニティ内の対立や分断も生じさせることになるかもしれない。各地に聖者廟があり、カッワーリーのような宗教賛歌の伝統も豊かなこの地であるが、こうしたものはワッハーブ派の流れの延長線上にあるアルカイダの視点からすれば、異端以外のなにものでもないからである。

    また、こうした中から非ムスリムの間からはムスリムに対するさらなる不信感が生じてきたり、これを政治的に利用する動きが出てきたりすることは誰にでも予想できる。とりわけ先の選挙で大勝したヒンドゥー保守派のBJP政権においては、そうしたことが懸念される。

    宗教的な信条はともかく、テロ活動に対する国民会議派を中心とする前政権の弱腰を批判していただけに、こうしたテロ対策については強硬な態度が求められるところでもあり、それは大きな事件が発生した場合の外交上の対応のみならず、国内における引き締め策にも反映されるであろう。

    過激派の「安全地帯」

    こうしたアルカイダの細胞組織や潜在的な賛同者は、亜大陸各地に散在することになるのであろうが、その核となる部分はやはりパーキスターンのFATA (Federally Administered Tribal Areas ※連邦直轄部族地域)に置かれることになるのだろう。いや、もうすでにそれは存在していることだろう。この地域は、こうした組織にとっても「セイフ・ヘイヴン」となっており、インドにとってはもちろんのこと、その地域を抱えるパーキスターンにとっても政治面においても、治安面においても大きなリスクとなっている。

    ここは、中国に対するジハードを唱えるETIM(East Turkestan Islamic Movement)の拠点も置かれているとされていることは、今年7月にETIM パーキスターンと中国と題して記事をアップしたところだ。

    亜大陸の多国間の協調が求められるが・・・

    当然のことながら、亜大陸におけるアルカイダと対峙するにあたり、主要な鍵となるのはパーキスターン政府の対応ということになり、ここしばらく落ち着いたムードにある印パ関係に多大な影響を及ぼすことも考えられる。

    アルカイダの脅威に対しては、各々の国が個別に対応して解決できるものではなく、南アジア地域全体の包括的な協力と協調が求められるところであるのだが、果たしてそれが実現できるのかどうか。それが容易に実現できるとは思えないところに、アルカイダの活路があるということにもなってしまうのだろう。