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カテゴリー: health

  • ナマステ・インディア2014 閑散とした会場

    ナマステ・インディア2014 閑散とした会場

    920日の土曜日にナマステ・インディアの会場を訪れてみた。場所は東京の代々木公園イベント広場。

    まさにガラガラの状態

    もしかすると「デング熱騒ぎで閉鎖されているのでは?」と思う方もあるかもしれないが、閉鎖された地域とは隣接しているものの、ここはそうした措置の対象にはなっていない。

    だが、週末であるにもかかわらず、イベント広場の西側のグラウンド、東側のフットサルコートも人影がなく、これら当面の間利用が中止となっているようだ。

    さて、例年のような大混雑が少しは緩和されているのではないだろうか、と思いつつ足を向けてみたのだが、会場に着いてみると、何やら行われている様子ではあるものの、開催される日を間違えて来てしまったのかと思ったほどであった。

    何しろ人出が非常に少ない。ここに掲載した写真は昼過ぎの時間帯に撮ったものである。かつてこんなに寂しい開催日があっただろうか?

    ミティラー画のアーティストたち

    中止とせずにやはり開催することが決まったのが910日であったが、出展されている方の話によると、同じように出展しようとしていた業者等の間で相当数のキャンセルがあったとのことだ。そのため、スペースをかなり狭めて開かれているし、それがゆえに当初割り当てられていた場所からの配置換えもかなりあったようだとのこと。同様にステージのプログラムについてもいくつか中止されたものがあるとのこと。

    レストラン関係の出店取りやめも多かったようだ。それがゆえに、来場者はとても少ないながらも、食事時には出てきているレストランのカウンター前にはそれなりの行列が並んでいるように見えることとなった。

    「まぁ、これくらいのほうがゆっくり見ることができていいですよ。」という声は来場者たちの間からはあり、それはそれでいいのだが、少なくとも初日においては、例年と比較して来場者数や盛り上がりという面で大幅な失敗ということになることは否めないであろう。主催者や出展者の方々にはとても気の毒なことである。

    もうすでに公園内では念入りに蚊の駆除はなされているはずだし、この気温の低い中で蚊の行動が活発であるはずもない。そうでなくとも、要はデングを媒介する蚊に刺されなければ罹りようもない病気であるため、虫除けを持参すれば済む話である。

    まさに「風評被害」ということになるかと思うが、921日の日曜日はもう少し賑やかになって、多少の盛り上がりを見せてくれることを願いたい。個人的には、例年どおり本日ここでいろいろな方々にお会いすることが出来て、やはり来てみて良かったのだが。

     

  • エボラの脅威は対岸の火事ではない

    西アフリカでエボラ出血熱がこれまでにない規模で流行している。

    致死率が90%以上と非常に高いこと、発病後の症状が劇的に激しく、治療方法が確立していないことなどから、大変危険な病気であるということは誰もが認識していたものの、これまでは農村部の限られた人口の間で散発的に小規模な感染が伝えられるという具合であったため、この地域における風土病というような認識がなされていたのではないだろうか。

    だが今回、ギニアで発生したエボラ出血熱が隣国のシエラレオネとリベリアにも及び、ギニアでは首都のコナクリにまで広がるという事態を迎えており、空前の規模での流行となっている。以下のリンク先記事によれば、感染者は635名に及んでいるという。

    史上最悪、西アフリカでエボラ感染拡大(毎日新聞)

    今回、これほどまでに感染が拡大したこと、農村の限られた地域での流行と異なる部分などについてはいろいろ指摘されているが、首都での流行については、これが旅客機等により、地続きではない国々にまで飛び火する可能性を秘めていることをも示している。

    コナクリからフランス、ベルギーといった欧州の国々、ダカールやモロッコ等の周辺国へのフライトがあり、それらの到着地から接続便で北米やアジア方面にも接続することができる。

    そんなわけで、地球のどこの国に暮らしていても、とりわけ今回の流行については、対岸の火事と傍観しているわけにはいかないという危惧を抱かせるものがある。

    あまり想像したくないことだが、これが人口稠密で、インドをはじめとする南アジア地域に飛び火するようなことがあったら、あるいは同様に人口密度の高い日本で発生するようなことがあったら、一体どのような大惨事になることだろうか。だがこれは絵空事ではなく、前述のとおり、ごく短時間で世界のどこにでも移動できる現代では、充分にあり得る話である。

    流行地からは、このようなニュースもある。エボラ出血熱を発症したものの、完治して生還した事例だ。

    エボラ完治「奇跡」の妊婦、喜び語る シエラレオネ(時事ドットコム)

    流行の抑え込みとともに、ぜひとも期待したいのは病理学的な解明と治療法の確立である。今はただ、今回の大流行が一刻も早く収束を迎えることを祈るとともに、医療現場で命を賭して患者たちへの対応に当たっている医師たちに敬意と大きな感謝を捧げたい。

  • マッチャル・マール・エクスプレス

    マッチャル・マール・エクスプレス

    デリーでは蚊の発生時期にマラリアやデングを媒介する蚊を減らすため、2週間に1度、マッチャル・マール・エクスプレスを走らせている。

    鉄路からホースによる液剤の散布の届く範囲に限られるため、どの程度の効果があるのかは疑問ではあるものの、蚊ならびにその幼虫の駆除を実施することにより、沿線住民への啓蒙を促すことの意味はあるし、まさにそこが狙いということなのだろう。

    ひとりひとりの心がけなくしては、都市部において蚊が媒介する伝染病の防止はあり得ないので、これを含めた広範囲な対策が求められるところだ。

    Northern Railway’s mosquito terminator on the prowl (NDTV)

    Delhi’s Malaria Express (The Hindu) ※こちらは昨年の記事

  • インドで新薬治験による死者多数

    しばらく前(2012年11月1日付)のものではあるが、看過できない記事がある。

    Have India’s poor become human guinea pigs (BBC NEWS MAGAZINE)

    従前から、インドは外資系製薬会社をはじめとする医薬品の治験大国として知られている。こうなったのは、2005年にインド政府が医薬品の治験に関する規制緩和を実施したからとのことである。

    人口規模が桁違いに大きく、様々な分野のデータを収集しやすいこと、英語が広く普及しており、現場の医療従事者の中でもとりわけ治験を実施する臨床現場の医師については、英語を駆使できるのは当然であることも好都合だ。

    都合が良いといえば、事故が起きた際の処理にかかる手間や費用についても同様なのだろう。これによる事故についてもしばしば報じられてきたが、具体的にどれくらいの件数が発生しているのかについてはよく知らなかった。

    だが、上記リンク先記事によると、死亡事故だけで、2008年に288件、2009年に637件、2010年に668件、2011年には438件も発生しているのだという。対象となるのは、往々にして貧困層の人たちで、治験に関する説明をして、当人たちからきちんと同意を得ているかということについても不明瞭な部分が少なくない。

    1984年12月、マッディヤ・プラデーシュ州のボーパールのユニオン・カーバイドの工場で起きた有毒ガス漏れにより、25,000名もの市民が亡くなった事故は、史上最大の産業事故として語り継がれている。そのユニオン・カーバイド社による賠償の一環として建てられたボーパール記念病院でも、やはり治験による事故が発生しており、前述のガス事故で被害を受けた人たちもその中に含まれているというのは、あまりにひどい話だ。

    インド自身についても、周辺国で同様のケースを生じさせているのではないかということが懸念されないわけではない。インドの医科大学が、ネパールで近代的な病院を建てて、地域医療に貢献しているが、これとて単純に善意で行っているというわけではないだろう。医科大生や経験の浅い医師等の学びと実践の場でもあることは言うまでもない。それはともかく、こうした施設もまた、製薬会社の治験を引き受けるのには絶好の環境であることは間違いない。

  • 肉食は危ない ? !

    「肉を食べると嘘つきになり、約束を守らない不正直者となり、窃盗や性犯罪を犯すことになる」などと言われたらビックリするだろう。

    Meat makes you immoral, says textbook (THE HINDU)

    India textbook says meat-eaters lie and commit sex crimes (BBC NEWS INDIA)

    インドの小学校の保健の授業で使用されるテキストにそんな記述があるということで話題になっている。

    どの教科書を採用するかについては、各学校の裁量によるものであるとのことなので、この内容の教科書がすべての小学校で使用されているわけではないようだが、この図書を発行しているS. CHAND社は国内最大級の教科書会社なので、その影響は決して小さくないだろう。

    また「肉食=不道徳で犯罪につながる」という記述は、インド社会に馴染みのない国々では奇異なものに聞こえることから、こんな風に扱われたりすることは想像に難くない。

    Textbook: Meat Eaters Steal, Fight, Commit Sex Crimes (TYT NETWORK)

    確かに今でも保守的なヒンドゥーの年配者には、「酒を飲むようになると、タバコも吸うようになるし、肉を食べてみるようになる。すると女や賭博にも手を出すようになってしまう・・・」などという物言いをする人は少なくないので、厳格なヒンドゥーのモラル上においては、確かにその教科書に書かれているとされる内容は誤りではないということになるだろう。たとえそれが科学的には何の裏付けもないものであるとしても。

    経済や社会のグローバル化とともに、伝統的なモラルや価値観が失われつつある今の時代に警鐘を鳴らしていると好意的に捉えることも可能かもしれないし、中央政界で与党への返り咲きを目論むサフラン勢力の差し金ということもあるかもしれない。

    ただし、こうした記述で問題なのは、科学的な根拠の有無という点よりも、菜食を美徳と尊ぶ文化以外のコミュニティへの配慮がまったく無いことだろう。祝祭時に家畜を屠り、盛大に祝うムスリムその他の肉食文化の全面的な否定であり、多文化・多民族が共生するインドにおいて、コミュニティ間の不協和を増長するだけである。マジョリティの文化の唯我独尊的な美化と子供たちへの刷り込みは、どうもいただけない。

  • ラダックのレーへ

    ラダックのレーへ

    早朝の便でデリーを発ってラダックに向かう。以前も2回ほど飛行機で入ったことがあるが、海抜3,500mあるため、高いところに弱い人にとっては着いてからしばらくはかなりキツかったりする。中途陸路で少しずつ高度を上げて行けば問題ないのだろうが、私にはそんな時間はないので、どうしても飛行機でということになる。

    DIAMOXという薬については、当初半信半疑であった。多くは緑内障で処方される医薬品であるというではないか。これを服用することにより、毛細血管の流れがよくなるため、眼圧を下げる効果があるからだという。

    同様に、呼吸器や脳についても、血の巡りがよくなるため、むくみが生じにくくなることから、軽度の高山病に対する予防が期待できるのだという。高地に入る24時間前から12時間ごとに1錠服用するということになっている。高地に入ってからも同様に12時間ごとの服用を3日間続ければ、その間に高度順応が出来てしまうという話を医師から聞いた。更に高いところに行く場合、例えば500m以上高いところに行く場合も同様に、24時間前から開始して、12時間ごとに1錠という、このルーティーンをさらに繰り返せば良いとのこと。

    窓の下に広がる壮大な雪山の景色を目にしながら飛行機は大きく旋回してレーの空港に着陸した。機外に出て深呼吸すると、心なしか空気が薄いような気がする。たぶんしばらくすると例の頭痛がやってくるのだろうなぁ、と思いながら宿に向かう。

    簡単な朝食を摂り、荷物を部屋に置いてから町に出る。レーの王宮を見物してからそのすぐ上にある寺院を目指す。さほどの斜面ではないにもかかわらず、ひどく息切れがすることから、やはり空気が薄いことを実感する。

    ハァハァ言いながら歩き回り、夕方になってから宿に戻る。併設している食堂でビールを飲んでいるオランダ人男性がおり、ついつい私も「ビール一本!」と注文してしまいそうになるが、やめておく。前回、といってもずいぶん昔のことだが、着いたその日に酒で乾杯した後、丸二日間続くひどい「二日酔い」になった記憶があるからだ。

    果たして、DIAMOXの効果は想像以上に素晴らしかった。高所に弱い私だが、坂道で息切れする以外は、翌日になっても、翌々日になってもどうもない。

    この薬は、日本では処方してくれるクリニックはごく限られているし、保険外診療とのことで、金銭的にもかなり高くつく。だが嬉しいことに、インドにおいては、例えばデリーなどではごく普通の薬局でも購入することができ、しかも10錠で72Rsと非常にお手頃である。

    海抜3,500m程度いっても侮るなかれ。稀ながらも、この標高でも高山病になり、重症化する人だっている。そうでなくとも、しばらく頭痛がしたり、気分が悪かったりという人は決して少なくない。とりわけ低地から直接飛行機で入る場合など、なおさらのことだ。空路を利用する場合、私のように往々にして時間に余裕がない人が多いこともあり、着いてすぐから「普通でいられる」ことは実にありがたい。

    これからラダックに向かわれる方、DIAMOXはオススメである。副作用といえば、トイレが少々近くなることくらいか。(ゆえにむくみ止めの効果があるわけで・・・)

    緑内障を患っている方など、長年大量に服用されているケースもあることから、この薬自体が身体に何か悪く作用することもないだろう。

  • トークイベント 「ポスト 3.11をふんばるインド・パキスタン的生き方」

    今年3月以降、家電の大型量販店、アマゾンや楽天その他の通販サイトで線量計が売られているのを見かけるようになっている。

    線量計なるものが世の中にあることを初めて知ったのは、1986年のチェルノブイリ原発事故が発生してからだっただろうか。『ガイガー・カウンター』により、放射線の値を測定している様子をテレビで目にして、一見普通に見える事故現場周辺地域で、目に見えない危険物質が飛散しているということについて、背筋が寒くなる思いをした記憶がある。

    ガイガー=ミュラー管を使用したガイガー・カウンター以外にも、シンチレーション検出器その他いろいろな種類のものがあり、測定の対象や目的により様々な線量計があるのだが、いずれにしても放射線のある環境下での職務に就いている人、あるいは特定の医療従事者以外が手にすることはない特殊な装置だと思っていた。少なくとも今年の3月までは。

    3.11の津波被害に起因した福島第一原発の事故以来、そうした『特殊装置』が普通に身の回りに見られるようになってきた。多くは個人が使用する目的であるため小型の製品だが、それらが目の玉が飛び出るような価格で販売されていた。

    そんなに大量生産・大量消費されるような類のものではないとはいえ、これまで私たちが手にしてきている携帯電話その他の家電製品に比べて、製造にかかるコストがそんなに大きなものなのかどうかわからないが、手にしてみると意外にチャチな製品が、実売価格にして10万円前後あるいはそれに迫る価格で売られているのを見て、唖然としたものだ。

    しかしとりわけ事故現場に近いエリアに住んでいる人々にとっては、たとえそれが避難地域外であったとしても、政府の発表する内容だけでは何がどうなっているのかはっきりしない状態の中、自分の身は自分で守るしかない。

    小中学生、幼稚園、保育所の子供たちにガラスハッヂと呼ばれる個人線量計を配布した地域もあると聞く。これを身に付けて1か月経過したら回収して検査機関に送り、その子供たちには新しいものを配布してまたひと月身に付けさせて・・・といったことを繰り返しているとのことだ。行政として子供たちの被ばく量を測定する目的があるとのことで、意義自体は理解できるものの、何ともやりきれない話だ。

    そこからやや離れた首都圏においても、いくつかのホットスポットについての情報などが出てくるにあたり、やはり不安でこうした機器を購入した人たちは少なくないだろう。それがゆえに全国の顧客が相手の通販サイトはともかく、首都圏の家電量販店でも線量計が販売されているのだ。

    そうした線量計について、震災・原発事故以前の価格が空前の品薄状態を背景に、数倍に跳ね上がった製品、そうした価格で積極的に捌いた業者も少なくなかったことは耳にしていた。おそらくここにきて線量計の『バブル状態』も一服したのか、従前から販売されているモデルの価格はかなり下落してきていることに気が付いているこの頃。

    大手通販サイトで『線量計』と検索してみると、102,900円 → 17,000円やら69,800円 → 13,500円などという価格表示をしている業者がいくらでもある。ボロ儲けをアテ込んでの在庫がダブついたのか、線量計の大きな市場となった日本向けに製造元が生産体制を大幅増強したのか知らないが、確かに原発事故からしばらくはそんな金額で販売されていたモデルだったと記憶している。それが『市場価格』というものだということになるのだろうが、一市民から見るとまさに火事場泥棒的な商売だ。早い時期に購入した人たちは『何!17,000円のものを102,900円で売りつけていたのか!』と怒り心頭のはずだ。

    いずれにしても、これまでそうした機器に縁の無かった一市民が線量計を持つということが珍しくなくなってしまった状況に私たちは置かれており、これまで海外でも安全・安心という評判を得ていた日本そのものに、大きな疑問符が付くようになってしまっている。

    今さら、グチばかり言っても仕方ない。放射能汚染は今後長期間続くことは明らかだ。加えて放射線による直接の健康被害はさておき、ここのところジリジリと後退してきていた日本の国力が、こうした事態であることを背景にさらに削がれていくことは間違いないことも肝に銘じておかなくてはならない。

    さて、前置きが長くなったが、本題に入ろう。12月6日(火)19時30分(開場19時)から東京都渋谷区宇田川町のUPLINK FACTORYにて、J-one talks vol.01「ポスト3.11をふんばるインド・パキスタン的生き方」が行われる。

    J-oneの主宰者で、ナマステ・ボリウッドの主宰者/発行人でもある、すぎたカズト氏がMCを務めるトーク会だ。ナマステ・ボリウッド誌サイトにもこのイベントについての情報が掲載されているので、こちらも併せてご参照願いたい。

    ゲストスピーカーは、NPOジュレー・ラダック代表のスカルマ・ギュルメット氏、ビデオ・ジャーナリストのラシード・サマド・カーン 氏、そして当サイトindo.toのウェブマスターの矢萩多聞氏という豪華な顔ぶれだ。

    災害時にも強い南アジア流生活・共生術、南インド式保存食の作り方(試食あり)から放射能対策・情報リテラシーまで、といった具合に様々な角度からのトークが行われる。ポスト3.11に生きる私たちの日々のありかたについてじっくり考えてみる良い機会となるはずだ。

    チャージは2000円(1ドリンク+「J-one」創刊号1冊付)で、「J-one」持参の方は500円OFFとのことだ。会場となる渋谷 アップリンク・ファクトリーの所在地と電話番号は以下のとおり。

    東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1階 TEL.03-6825-5502

  • チェルノブイリは今

    チェルノブイリは今

    今年の9月に、チェルノブイリの現状を写真と文章で綴った本が出ている。

    ゴーストタウン チェルノブイリを走る

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    ゴーストタウン チェルノブイリを走る

    http://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0608-n/

    集英社新書ノンフィクション

    ISBN-10: 4087206084

    エレナ・ウラジーミロヴナ・フィラトワ 著

    池田紫 訳

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    1986年に起きた原発事故から四半世紀が経過したチェルノブイリにガイガーカウンターを持ち込んで、バイクで駆ける写真家エレナ・ウラジーミロヴナ・フィラトワがチェルノブイリの現状を伝えるウェブサイトを日本語訳した書籍だ。

    汚染地域に今も残る街や村。すでに暮らす人もなく朽ち果てていく建造物。家屋の中にはそこに暮らした家族の写真、子供たちの玩具が散乱しており、役場等にはソヴィエト時代のプロパガンダの跡が残っている。

    ソヴィエト時代、原発事故が発生する前のチェルノブイリは、中央から離れた周辺地であったが、それでも整然とした街並みや広い道路、広大な団地、病院その他公共施設、遊園地、映画館といった娯楽施設等々の写真からは、社会主義時代に築かれたそれなりに豊かであった暮らしぶりがうかがえる。

    人々の営みが消えてから久しい現地では、それとも裏腹に豊かな自然が蘇り、もう人間を恐れる必要がなくなった動物たちが闊歩している様子も記録されている。

    一見、のどかにも見える風景の中で、著者はそうした街や集落など各地で放射線量を図り、今なおその地が人間が暮らすことのできない危険極まりない汚染地であることを冷静に示している。

    これらの写真や文章は、著者自身のウェブサイトで閲覧することができる。

    elenafilatova.com

    チェルノブイリに関して、上記の書籍で取り上げられていないコンテンツとともに、スターリン時代の強制収容所跡、第二次大戦期の戦跡等に関する写真や記述等も含まれている。

    私たちにとって、チェルノブイリ原発事故といえば、今からずいぶん遠い過去に、遠く離れた土地で起きた惨事として記憶していた。事故後しばらくは、放射能が飛散した欧州の一部での乳製品や食肉などへの影響についていろいろ言われていた時期はあったものの、自分たちに対する身近な脅威という感覚はほとんどなかったように思う。まさに『対岸の火事』といったところだったのだろう。

    今年3月11日に発生した地震と津波、それによる福島第一原発の事故が起きてからは、原発そして放射能の危険が、突然我が身のこととして認識されるようになる。実は突然降って沸いた天災と片付けることのできない、それまでの日本の産業政策のツケによるものである。曲がりなりにも民主主義体制の日本にあって、私たち自らが選んだ政府が推進してきた原子力発電事業とそれに依存する私たちの日々が、いかに大きなリスクをはらむものであったかを思い知らされることとなった。

    順調な経済成長を続けているインドや中国その他の国々で、逼迫する電力需要への対応、とりわけ先行き不透明な原油価格、CO2排出量への対策等から、今後ますます原子力発電への依存度が高まることは、日本の福島第一原発事故後も変わらないようである。もちろん各国ともにそれぞれの国内事情があるのだが。

    原発事故後の日本では、食品や生活環境等様々な面で、暫定基準値を大幅に引き上げたうえで『基準値内なので安心』とする政府の元で、放射能汚染の実態が見えにくくなっている中で、今も収束にはほど遠く『現在進行形』の原発事故の危険性について、私たちは悪い意味で『慣れつつある』ように見えるのが怖い。

    事故があった原発周辺地域の『風評被害』云々という言い方をよく耳にするが、実は風評などではなく実際に無視できないリスクを抱えているということについて、国民の目を塞ぎ、耳も塞いでしまおうとしている政府のやりかたについて、被災地支援の名の元に同調してしまっていいものなのだろうか。

    これまで原子力発電を積極的に推進してきた日本の政策のツケが今になって回ってきているように、見て見ぬ振りをしていたり、『どうにもならぬ』と内心諦めてしまったりしている私たちのツケが、次の世代に押し付けられることのないように願いたい。

    同様に、これから原子力発電への依存度を高めていこうとしている国々についても、将来もっと豊かな時代を迎えようかというところで、予期せぬ事故が発生して苦しむことにならないとも言えないだろう。今の時代に原発を推進していこうと旗を振っていた人たちは、そのころすでに第一線から退いているかもしれないし、この世にいないかもしれない。一体誰が責任を取るのか。

    もっとも今回の原発事故で四苦八苦しており、原子力発電そのものを見直そうかという動きになっている日本だが、それでも他国への積極的な売り込みは続けており、すでに受注が内定しているベトナムでの事業に関するニュースも流れている。

    チェルノブイリが残した反省、福島が私たちに突き付けている教訓が生かされる日は、果たしてやってくるのだろうか。

  • 航空性中耳炎

    中耳炎になった。小学生だったころ以来である。当時は風邪を引いては耳もおかしくなっていたものだが、今回は飛行機に乗ったことが原因である。

    航空性中耳炎について耳にしたことはあり、航空機の乗務員の間でしばしば発生する職業病のようなものということは知っていた。機内の気圧の変化により、耳の中が痛くなることがあるが、その際にあくびや唾を飲み込むなどしてうまく耳抜きができないままになっていると生じる不具合である。

    気圧の変化といっても、上昇時つまり耳の中の気圧が周囲よりも高くなる際よりも、下降時に鼓膜の内側の気圧が、その外側よりも低くなるときに起きやすいという。

    飛行機が着陸態勢に入るというアナウンスの後、飛行機がどんどん高度を下げていく中、耳の中がツーンと突っ張った感じになった。いつものようにあくびをしたり唾を大きく飲み込んでみたりする。普段ならば耳の中が「バリバリッ」と音を立てて元に戻るところだが、今回はカゼを引いていて鼻がひどく詰まっているためか、左側の耳にはまったく効果がなかった。

    飛行機が滑走路に着陸してターミナルまでゆっくりと動いている最中もその状態は変わらず、市内に出て宿に荷物を置いてもまだ同じ状態が続き、数日経っても回復しなかった。

    プールや海で泳いでいて耳の中に水が入ったときの様子に似ている。おかげで左耳の聞こえかたが悪くなっている。障子一枚隔てた向こうからの聞いているような感じだ。

    これではいけない、と耳鼻科医に診てもらっているところだが、なかなか治らない。診察の際に左の鼻から、耳に繋がる耳管に空気を通してもらうと、かなり痛みを伴うがなんとか通気できるようになる。

    するとしばらくの間はすっきりと聞こえるようになるのだが、またすぐに塞がってしまうような感じになる。塞がっているといえば、鼻腔から耳にかけて空気がスムースに通るようになっていなければならないとのこと。そこが塞がってしまうから気圧の調整がうまくいかず、耳の中の気圧が外気よりも低くなったままになってしまう。

    すると鼓膜の内側に水が溜まってきてしまい、いわゆる滲出性中耳炎を発症する。これがいわゆる航空性中耳炎が起きてしまうメカニズムであるとのことだ。

    やれやれ・・・。

  • 地震・津波そして原発 1

    地震・津波そして原発 1

    このたびの地震による災害により亡くなられた方々にお悔やみ申し上げるとともに、被害に遭われた方々の一日も早い回復と被災地の復興を切に願いたい。 

    未曾有の災害を引き起こした巨大地震、震源地は東北地方の沖合であったことから、言うまでもなく地震そのものによる建物の倒壊等の被害はさほどでもなかったようだが、その後この地域の太平洋沿岸を襲った大津波が主たる原因である。もちろんそれを引き起こしたのが、複数の震源地が連動する形で起きた巨大地震だ。 

    地震発生当初は、電話等の通信手段の途絶、交通の遮断等により、被災地の様子がよくわからなかったものの、やがて現地から刻々と伝えられる情報から、地震大国日本であってもこれまで経験したことのない規模の災害であることがわかってくるまで時間はかからなかった。 

    被災前の福島第一原子力発電所

    そのあたりまでは被災地の状況、被害者の現況等々に集中的にスポットが当たっていたのだが、まもなく福島県の原子力発電所が危機的状況であることが明らかになるにつれ、こちらに軸足を移した報道が多くなってきた。 

    やや押さえたトーンで伝えていた日本国内のメディアと違い、とりわけ日本国外のメディアの中でとりわけ影響力の大きなものが率直な意見を述べると、原発事故関係の報道は一気に加熱した。 

    日本語による報道でも『東日本大震災』であったり『東北・関東大震災」であったりと一定していないが、海外への伝わり方は報道や単なる伝聞を含めてさらに混乱している模様。メディアといっても、その質や信頼性は様々であるため、流言蜚語の類も少なからず見られた。インターネットの掲示板等による伝聞ともなるとなおさらのことだ。とりわけ地震発生直後、そして原発の異常が伝えられた直後には、ずいぶん飛躍した噂の類が広く流布したケースもあったようだ。 

    そんなわけで、ある国々では日本の東北地方太平洋沿岸で起きた地震と津波の災害について『東京に大津波来襲、市街地大半壊滅状態』とか、原子力発電所の建屋の中で水素爆発が起きたことについて、日本国外では『自衛隊基地に格納されていた水素爆弾の破裂により大惨事』といった、事実と異なる認識をした人も少なくないことに気がついた。その後、様々なソースから現状が伝えられることにより、そうした明らかに誤りである伝聞を信じている人はほとんどいなくなっているはずだが。 

    確かに地震の規模や津波被害、そして大地震が連鎖するかのように長野県、静岡県で異なる震源による大きな揺れを記録するなど不穏な状況にあるが、それよりもかなり高いレベルの放射能漏出と、立て続けにあまりにも多くの不安材料が表出したことが重く受け止められているようだ。これに対する各国の対応、在日外国人たちの反応も素早かった。

    在京のドイツ大使館が機能の大半を大阪・神戸の領事館に一時的に移転させたように、西日本の都市に大使館業務を『疎開』させた国はすでにいくつもある。また在日の自国民に退去勧告を出したり、帰国のためのチャーター便を用意したりした国も多い。アラブ首長国連邦、サウジアラビア、タイ等から政府派遣留学生として日本に来ている学生たちにも早々に帰国指示が出て、多くはすでに自国に戻っている。 

    外資系企業では、社員を国外や西日本方面に退避させたり、自宅勤務させたりしているところもかなり出てきている。また日本に出稼ぎに来ている外国人たちについても、相当数が急いで出国したり、今後速やかに帰国することを予定したりしているようだ。そうした人々の多くは、チケット代金に糸目を付けず、席が確保できるならば何でもと買い求めるケースも少なくないと伝えられることから、彼らの緊張感がうかがわれる。 

    もちろん放射能漏れに対する認識や考え方による相違はある。だが一昨年の新型インフルエンザ流行初期における日本国内の激しい動揺ぶりを思い起こせば、もし同様の事故が他国で起きたとすれば、日本政府はその土地に在留する邦人たちに対する『速やかな国外退去』へと動くことは間違いない。ただ今回はその事故が日本国内で起きた。それがゆえに逃げようにも行く先がないため、抑制した反応をするしかないというのが正直なところだろう。 

    これまで『安全である』とされてきた日本。国土や周辺地域に多数の活断層を抱える地震の巣のような面があるため、ときおり大きな地震が発生して局地的に相当規模の被害を出すことは珍しくなかった。それでも今回のように外国人住民たちが大挙して国外へ脱出するような『危険な状態』と認識されるようなことが起きるなどとは、想像しがたいものであった。

    現在、様々な国々で日本から輸出される食品について、放射能汚染の検査が実施されるようになっている。

    Radiation checks stepped up on Japanese food imports (asahi.com) 

    同様に日本から到着する旅客についても同様にチェックがなされるようになっているところが多い。そうした中でやはり検出される放射線レベルが高い乗客が見つかっている。 

    Radiation trace found on Japan air passengers to S.Korea (REUTERS) 

    Tokyo passengers trigger off radiation detectors at Chicago airport (YAHOO ! NEWS)

    今のところ公衆衛生に支障を来たすような数値が検出された乗客の存在は認められていないものの、そうしたケースが生じた場合にどういう対応がなされるのかはよくわからない。 

    インドでもすでにデリーならびにチェンナイの国際空港にて、日本からの乗客や荷物に対する放射線のモニターが開始されている。 

    Radiation counter opens at airport but yet to hear a bleep (THE TIMES OF INDIA) 

    そうした中、ムンバイーの国際空港はこれに関する対応が遅れていることを憂慮する記事もあった。

    Is city exposed to radiation? (MID DAY) 

    被爆した人物と接触することにより、どれほどの影響があるのかはよくわからないが、人の行き来はさておき、今後は世界各地で日本製品・産品に対する買い控え等の影響が出ることは想像に難くない。 また日本から帰国したインド人の談話を掲載したメディアもある。

    Nightmare in Tokyo: Indians tell tales of horror (Hindustan Times) 

    またフェイスブック等でも、このたびの一連の騒動の中で帰国あるいは第三国へに出た人たちによるコメント等が書き込まれているのを目にすることができる。

    今回の一連の騒動を受けて、各国で原子力発電事業そのものを見直そうという動きさえ出ている。インドでも同様の懸念の声が一部から上がっている。 

    Japan nuclear meltdown raises concerns in India (ZEE NEWS)

    原子力発電所における地震や津波による被災と同様に懸念されるのは、テロあるいは他国による攻撃といった人為的なファクターだろう。たとえそれにより最悪の事態を引き起こすことがなくても、その国のイメージを著しく損ない、大きな社会不安を引き起こす。 

    2001年にアメリカで起きた同時多発テロでの標的がツインタワーやペンタゴンではなく、原子力発電所であったとすれば、また違った次元の恐怖を引き起こすことになったはずだ。

    <続く>

    ※サートパダー2は後日掲載します。

  • 禁煙先進国

    世界のたいていの国で喫煙者は肩身の狭い思いをするようになっている昨今。日本の首都圏ではこんな本が売れているらしい。

    最新版 東京 喫煙所マップ  東京喫煙愛好会著 (PHP研究所)

    ISBN-10: 4569793258

    ISBN-13: 978-4569793252

    著者が『東京喫煙愛好会」となっているのも面白い。もはや喫煙という行為は、かつてのように大人の嗜みではなく、一部の好事家の変わった趣味といった具合だろうか。

    それでもまだまだ喫煙者に対して甘いという声も聞こえてくるようだ。それにタバコの価格だって他の先進国に較べてまだまだ安いではないかとも。世界で最も喫煙者に対して厳しい国はと言えば、欧米ではなく南アジアのある国のこと。ブータンでは法律上では『麻薬並み』に厳しい扱いになっている。 

    もう何年も前にヒマラヤの禁煙国として、ブータンの禁煙化について書いてみたが、それから6年以上経った今、同国で人々から尊敬される存在である僧侶が、タバコに関わる罪状で5年の実刑判決を受けたことがニュースになっている。 

    国境の町プンツォリンと接するインド側のジャイガオンで購入した噛みタバコ72パケットを密輸したというのが罪状だが、タバコで『5年間の服役』とは厳しい。 その商品とは、インドのどこの街でよく見かけるBABAブランドのものようだ。 

    Charged for handling tobacco (KUENSEL ONLINE) 

    Enforcing the ban (KUENSEL ONLINE) 

    同国ではすでにタバコの販売が禁じられており、個人的な消費目的である場合のみ外国から関税を支払い持ち込むことができるようになっている。ただし関税の支払いのレシートを保管しておかないと、タバコが見つかった場合密輸と判断されるとのこと。 

    また地域によっては条例等により、屋外や公共の場での喫煙行為自体が違法となっている場所もある。アッサム国境の町ゲレチューでは、今年1月1日から自室のみOKということだ。罰金は500 Nu(ブータン通貨ニュルタム、インドルピーと等価)だ。アッサム側の町と接しているため、市内に流通するタバコが後を絶たないため、思い切った策に出たものと思われる。 

    闇で出回るタバコといえば隣国インドから入ってくるものが大半だが、値段のほうは例えばWILLSがインドで40 Rsであるとして、ブータンにおいては首都で流通の中心地でもあるティンプーでは60~80 Nu、インド国境から遠い地域に行くと100 Nuあるいは150 NUという価格にもなるというから、喫煙者の経済的な負担も大きい。とても喫煙という行為を楽しむ環境ではない。 

    是非はともかく、禁煙環境という意味ではブータンは世界最先端にある。

    ※コールカーターのダヴィデの星 3は後日掲載します。

  • チベット 酸素 ヘモグロビン

    高い所はどうもダメなのである。高所恐怖症というわけではないが、高地で酸素の薄い状態が苦手だ。
    特に飛行機で、海抜3000 m以上のところに降り立ってしばらくすると一両日は動けない。ちょっと二日酔いに似た症状となる。頭が痛くてダルくて、ベッドから立ち上がる気もしない。
    いつだかデリーからのフライトでラダックのレーに着いたときもそうだったし、ペルーでリマからクスコに飛んでみたときもそうだった。到着してから宿に荷物を置き、少年たちのストリートサッカーに加わると、空気の薄さからやけに息が切れると感じた。
    リマで同じ日系宿に宿泊していた人たちが同じ宿に泊まっており、近くのペーニャ(フォルクローレのライブハウス兼飲み屋)に出かけたのだが、アルコールが入ると強烈に効いた。
    翌日、翌々日と部屋でノビていた私に、彼らが『コカ茶が効くらしいよ』と駅前のマーケットに出かけてくれたが、その日本人3人が羽交い絞め強盗に遭ってしまい、非常に申し訳ない思いをした。相手は10人くらいいたそうだ。
    以降、高所に弱いという自覚が出来たため、そうした場所に着いたばかりでいきなり身体を動かしたり、酒を飲んだりしないようにしている。
    もちろんその程度の高度ならば、しばらく安静にしていると順応するし、日数をかけて高度を上げていけば、こうした症状は出ない。それでも山道や斜面を上ったりすると息が切れるし、ちょっと走ったりするだけでもとんでもなく苦しい。どうやら私は登山にはまったく向いていないらしい。
    酸素が薄い状態に対して、人の身体とはうまく出来ているもので、血液中のヘモグロビンを増やすことにより、低酸素状態で効率良くこれを体内に循環させることで対応する。だがそうした高地に順応した状態は高血圧を招くなど、決して人体に好ましい状態ではないこともよく知られている。
    高度による影響は個人差が大きく、トレーニングによりその体質を変えることはできず、結局時間をかけて高度に順応させていくしかない。その他、本来は緑内障やてんかん等の治療薬であるアセタゾラミドというが高山病対策に有効であるとされる。商品名『ダイアモックス』として知られており、高地でのトレッキングに出かける人による利用も多い。だが高山病の症状が出て重症化した場合は『死なずに済む』ためには低地に移動するしかない。
    海抜3,000 mを越えたあたりから、高山病を発症する人が出てくる(本当に高地がダメな人の場合、2,000 mでも辛いそうだ)というが、その程度の高さでも重篤化した例、さらには死亡例もかなりある。
    だが海抜3,000 mから4,000 m超の高地でも、ごく普通に暮らしている人たちもあり、チベット高原やアンデス山脈などはその典型だ。
    そんな高地に暮らしているチベット人たちの体質について、最近見かけたニュースが興味深かった。

    チベット人の遺伝子は高地生活に適応
    (ナショナル・ジオグラフィック)
    The Genetics of High-Altitude Living (Science)
    低地で暮らす人々に較べて、チベット人たちは呼吸回数が多く、血管も太いのだという。つまり体内に酸素を巡らすための効率に優れているということになる。
    面白いのは、私たちが高度に順応するために血液中のヘモグロビンを増やすのに対して、高地で生活してきたチベット人たちには、これとは逆にヘモグロビンの増加を抑制する遺伝子を持っているというのだ。そのため高地に暮らしていながらも、ヘモグロビンが増えることによる負の影響を受けずに生きていくことができる。
    長い歳月、幾世代にも渡って高地で生活してきたため獲得した体質ということになるのだろうが、やはり私たち人類の身体も時とともに環境に合わせて進化を続けていることを思い出させてくれる。
    ※『彼方のインド4』は後日掲載します。