子どもたちの楽園 1

子ども、とりわけ男の子が大好きな乗り物の横綱格といえばスポーツカーと鉄道だろう。前者は父親が乗りまわしているのが普通のセダンだったりするとつまらないだろうし、そもそも家にクルマがなかったりすることも少なくないが、後者については誰もがよく利用することから機会は平等かもしれない。(もちろん鉄道が走っていない地域も少なくないが)
インドでいろいろな乗り物に利用しても、子供が一番喜ぶのはやはり鉄道である。親にしてみればトイレや洗面台がついているので、他の陸上交通機関に比べて長距離移動しても安心、少し上のクラスであれば座席まわりのスペースにゆとりがあり、あまり疲労を感じずに済むので楽だ。
はるかに短い時間で目的地に着くことができる飛行機も子供たちの人気者だが、なぜか彼らの興味は搭乗し離陸したところで終わってしまうのが常のようである。おそらく外の景色が変わらなくて飽きてしまう、狭いシートでじっと我慢していないといけないので退屈・・・といったところが理由か。
鉄道だって、しばらくずっと沿線風景が変わらない地域だってあるし、チェアー・カーだったら飛行機内に座っているのと環境はそう変わらない。でも駅に停車するたびにドヤドヤと人々の出入りがあったり、プラットフォームの景色を眺めたり、物売りがスナックなどを見せびらかしに来たりといったところが、ちょうど良い具合に「ブレーク」となるのだろう。
ウチの子供によると、インドの列車は「大きな生き物みたい」で面白いのだそうだ。言われてみれば、無機的でメカニカルな雰囲気より、むしろ体温や体臭といったものを感じさせるムードがあるような気がする。
長い連結車両をけん引するディーゼル機関車が、プラットフォームにゆっくりと入ってくるときの「ドッドッドッ」という地響きに似た音、派手に軋む車輪の悲鳴、車内の消毒液の匂いとともにどこからか漂ってくる食べ物の香り、大声で会話する人々、駅構内をやや遠慮気味に行きかう動物たち・・・。
加えて、機関車や車両のクラシカルなスタイルはもちろん、あの重厚長大さも魅力らしい。「だってす〜っごくデッカイもんね」と6歳になったばかりの息子が言う。小さな子供にとって「大きい」こと自体もまた憧れなのだ。
そんな息子がとても気に入っている「博物館」がデリーにある。普通の博物館ならば、幼い子供は皆そうであるように、すぐに「帰ろうよ〜」となってしまうのだが、ここだけは日中一杯過ごしてもまだ物足りないようだ。場所はチャナキャプリのブータン大使館横、National Rail Museumである。
〈続く〉

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