ゲリラとポルノ

 政府を向こうに回して独立や自治等を求めて活動する反政府武装勢力が、麻薬の生産やその流通、要人等を身代金目的で誘拐、実効支配地域の住民たちの中から強制的に徴兵を行なうといったことはよく耳にする。
 質・量ともに圧倒的に有利な政府を相手にまともに渡り合うのは限りなく不可能に近いことだ。何しろ向こうは「国家」という巨大な機構の中に豊富な財源を持ち、警察という治安組織、軍という武力を備えるとともに、「法」という後ろ盾のもとにあらゆる権力を行使できるからだ。さらに必要とあれば「外交力」にものを言わせて周辺国や世界の列強国から様々な形の有形無形の援助を受けることも可能なのである。
 そうした中で反政府武装組織が活躍できるスペースといえば、公権力がまともに機能している限りは、政府の腕力が及びにくい辺境ということになるだろう。そこに住む人々はえてして政権を構成するマジョリティとは大きく違う背景を持つ人たちで、特定の地域性、民族性、宗教その他の文化的・思想的要素を共有するとともに、内部での結束が非常に固いグループということにもなろう。見方を変えれば、まさにそうした異質性がマジョリティとの埋めがたい溝、絶えない摩擦と軋轢を生むのかもしれない。
 ともあれ田舎の貧しい民間人たちがやむにやまれず武器を取る、いわば百姓一揆に近い性格のものとすれば、資金的にとても苦しいのは無理もない。彼らが闘いを挑む相手の自国政府と対立関係にある隣国から資金、技術等の供与を受けているケースもあるにせよ、基本的にはなんとか知恵をしぼって自給自足でやっていくしかない。
 そうした中、インド東北部のトリプラ州では反政府組織が資金調達のためにポルノフィルムを製作してインド国内や周辺国に流しているという記事を目にした。組織に捉えられた女性がゲリラ兵士を相手に出演を強制されるケースが多いとのことだが、ゲリラグループ内の女性兵士が出ることも珍しくないのだそうだ。こうしたものが出てきたのは最近一、二年ほどのことだが、この風潮はここにきて一気に広がってきているとも書かれている。
 ゲリラとポルノという奇異な取り合わせはショッキングだが、これは降伏したゲリラ兵を取り調べた警察から出た情報だという。トリプラ州の反政府組織が実効支配する「解放区」、他地域のシンパたちの失望そして人心離反を狙ったプロパガンダという部分もあるのかもしれないが、政府が組織の非道を糾弾してみたところで、この地域で続く叛乱の原因が取り除かれるわけでもない。
 インド国内いくつかの地域で今も分離活動が続いている。多民族・多文化が共生するこの国で、まさに人々の叡智が試されていることだけは間違いないだろう。
India rebels ‘making porn films (BBC South Asia)

秋は代々木公園でお会いしましょう

 毎年秋の恒例行事となっている「ナマステ・インディア」は、ここ数年会場となっていた築地本願寺から場所を移し、「第13回ナマステ・インディア フェスティバル 2005」として、同じく東京都内の代々木公園で2日間(昨年までは1日のみ)開催されることになった。
 ここでは例年5月にタイフェスティバルが盛大に開かれていることをご存知の方も多いことだろう。会場・期間ともに従来よりも大幅にスケールアップすることになるが、プログラムの内容もまた一層充実することであろう。
 次第にその数を伸ばしている日本在住のインドの人々の数と同様、回を重ねるごとにこのフェスティバルが着実に成長してきていることを見るにつけ、主催者の方々のたゆまぬ熱意と多大な努力がうかがえる。会場では、長年日本に定住し在日インド人コミュニティの顔役的な立場にある人々を見かけるが、やはり彼らの協力もまた成功の重要な要素であることはいうまでもない。
  同フェスティバル主催者のウェブサイトによれば、在日インド人たちの数は東京地区だけで約7000人と言われているとのこと。催しが盛況であることはもちろんだが、ぜひ多数の方々が会期中に会場を訪れて、日印間で人々の交流をさらに深める きっかけとなることを期待しよう。
第13回ナマステ・インディア フェスティバル2005
会期:2005年10月1日(土)〜2日(日) 午前10時〜午後8時
会場:東京都 代々木公園

インターナショナルな「国内線」

International, but domestic.jpg
 エアインディア、インディアンエアラインス両社では、同じフライトで国内線区間と国際線区間を兼ねたものが少なくない。
 エアインディアは国際線・国内線空港が別々になっている街からの発着は、いつも前者なのでわかりやすいが、インディアンエアラインスの場合は、てっきりドメスティックと思い込んでいても、実は国際空港から離陸なんてことがある。国内線ターミナルから遠かったりすると、チェックインに間に合わなくてアウト!というドジを踏むことだってあるかもしれない。
 インディアンエアラインスのチェンナイからカリカット行きの便を利用した際、国内線ターミナルに着いてみると、隣の国際線のほうに行くように言われた。カリカット行きのフライトはオマーンの首都マスカットを経由して最終目的地はUAEのドバイまで行くものであることがわかった。
 インディアンエアラインスの時刻表を調べてみると、湾岸諸国行きを中心にこうしたフライトが多いことに気がつく。特にUAEは産油国としても湾岸地域の商業の中心地としても高い地位を占めているので、インドとのつながりが強いのだろう。

続きを読む インターナショナルな「国内線」

ドリアンに期待する

ancestral goa.jpg
 Ancestral Goa は、ポルトガル時代のゴアの生活を再現したテーマパークだ。入場料は20ルピー。インド人の家族連れやカップルその他の観光客等の訪問多い。ちょっと古いが、Deccan HeraldでHeritage revisitedと題してこの施設のことを取り上げた記事がある。
 展示物はペイントされた土人形や主に同様の素材からなる建物のミニチュアからなり、履物作り、市場の様子、ローカルな酒場その他農村のさまざまな光景が再現されている。いくつかの展示物ごとに担当の説明係がいて、ゾロゾロとやってくるお客たちの顔を見て、英語あるいはヒンディー語その他で説明してくれる。人形にしても建物の造りにしても「民俗村」としてはチープすぎるが、ちょっとマンガチックな温かみを感じる屋外展示物が並ぶ。
 園内には小さな「聖地」もあった。通称「Big Foot」なるローカル聖者が祭られているのだ。テーマパークにこんなスペースがいきなり出現しても、一応線香を上げて手を合わせる人たちが多いのはやはりインドらしいところだろうか。

続きを読む ドリアンに期待する

スパイスを眺める

sahakari spice farm.jpg
 つまらないからやめときな、と言うのは運転手。 「草木を見て300ルピー払うのかい?無駄だよ」ときた。 その「つまらない」とはスパイス・ファームのことである。かつて「黄金のゴア」としてその名を広く知らしめたこの土地の主要な産物のひとつが香辛料であったのはご存知のとおり。今もそれらを作る農場がいくつもあるのだが、そのうち何ヶ所かは入場料を取って観光客用の見学コースを設けている。
 私たち一家が向かったのはポンダという街の近くのサハカーリー・スパイス・ファームという農場だ。ちなみに「ポンダ」はデーヴァナーガリーではफोंडाと綴るのだが、ローマ字ではPHONDAではなく、通常PONDAと表記されている。

続きを読む スパイスを眺める