岩田正美『現代の貧困』

紀伊国屋書店の「書評空間」に、岩田正美さんの『現代の貧困』(ちくま新書)の書評を書きました。
●「書評空間:中島岳志」
http://booklog.kinokuniya.co.jp/nakajima/
この本は、表層的な議論に終始するものが多い「格差社会」関連本の中で、もっとも着実で冷静な議論を展開しています。ホームレス、ワークングプア、生活保護などの問題に関心のある方は、必読の書です。
貧困問題を考えるとき、「国家の適正な規模」という問題が常にちらつきます。先々週に鈴木謙介さんの『<反転>するグローバリゼーション』の書評を日経新聞に書かせていただきましたが、この本の結論で鈴木さんが論じようとされていることも、同様の問題に行き着くように思います。
右派リバータリアン(=ネオリベ)に抗するために、「左派リバータリアン=左派コミュニタリアン」の連合を強化しても、問題は深刻化するとしか思えません。今こそ、リベラリズムと国家の問題を正面から論じなければならないと、私は常々考えています。
こんなとき、ロールズの『正義論』は、やっぱり気になります。
しかし、どうしても好きになれないロールズ。
サバルタン(抑圧された人々)の行為主体性から「政治」を考えたいと思っている私としては、「合理的市民の理性」を前提とすることでサバルタンから主体を奪ってしまうロールズは、結局のところ、彼が批判した功利主義者と同じ穴の狢なのではないかと思ってしまいます。
サバルタンの世界におけるリベラルな価値とは何か? それが国家とどのような関係にあるのか(あるべきなのか)? 
 
このような理論的・人類学的な関心は、博士論文を書いたときからもち続けていますが、もちろんきれいな結論など出ていません。
そんなわけで、ああでもない、こうでもないと思考をめぐらしながら、堀巌雄さんの『ロールズ 誤解された政治哲学−公共の理性をめざして』(春風社)などを読んでいる今日この頃です。

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