インドで古典舞踊を習う場合、良い師匠(自分に合った師匠)に出会うまで、現地で必死に探して2-3年を要するという。私の場合、ラッキーなことにMalti Shyam女史という素晴らしいダンサーに最初から巡り合うことができた。

先生に連絡を取ると、デリーの中心街にカタック・ケンドラという国立舞踊学校があるので、そこに来て欲しいという。先生はカタック・ケンドラが持つプロダクション・ユニットの第2舞踊手なのだ。つまり、デリーで2番目に評価されている女性ダンサーである。(←当然、その当時はカタックダンスの情報を何も知らないので、普通のダンサーだと思っている)
外国人の場合はプライベートが良い、というので、先生にアパートメントまで来ていただき、教えていただくことになった。先生は部屋に来ると、まず私の足の裏を見て、「この足の裏の形だったらグッドよ!」と仰られた。ふ…ふぅん…そういうものなのか。
レッスンが始まった。基本の足運びを教えていただく。
右足から「タァ・ティ・ティ・タタ」、左足から「アー・ティ・ティ・タタ」と踏んでいく。何だかフラメンコのサパティアードみたいだ。段々わくわくしてくる。
「MASAKOは覚えがいいわ」と先生は上機嫌だ。もっと色々なステップをやるのかな、と思っていたら足運びはそれで終わりになった。
次に、「プージャ・カ・トゥクラ(直訳して、祈りの踊り)」を先生が見せてくださる。カタック特有のシンメトリーな動きに旋回が少し入った踊りだ。ゆっくりと美しく切れ良く踊る様に私は見とれてしまった。
「さぁ、踊ってちょうだい」先生が楽しそうに仰る。
私は戸惑った。一回見ただけなのだ。
フラメンコを習っていた時はいつも素敵な先生が目の前で踊ってくださって、先生を真似しながら体を動かす。少しずつ鏡の中の自分を見ることができるようになり、何度も同じことをやることで段々と自信がついてくるものだ。
だが、インドでは一回見たことや覚えたことをすぐ次にやらなければならないらしい。(←インド特有のスパルタ教育システムの成果であることを後日知ることになる)
先生がリズムを歌い始めた。なんでもいいから動かなければ!私の手足はカチコチになり、そのまま硬直し…止まった。
先生は笑い、リズムを歌いながら、私と一緒に2回ほど踊ってくださった。ムーブメントの一部に祈りのポーズが入り、日本人として嬉しい。
「じゃぁいいわね。次よ。」
アーマドという、ゆったりとしたアイテムは今までに見たことのない不思議なムーブメントで、全く理解できない。が、とにかく真似てみる。真似ることから全ては始まるのだ。
冷や汗たっぷりの最初のレッスンが終了した。
なんか違う…
私の思っていたカッコいい切れ良く踊るダンスはこんな練習で果たしてできるものなのだろうか…?
が、折角インドにいるのだ。何かを得て帰りたい。水や電気の滞る生活で私は大分楽観的になっていたのかもしれない。
先生が帰られた後、一人で、先生から教えていただいた旋回をやってみた。が、平衡がとれず、足がもつれ、転んでベッドに頭をぶつけてしまった。こんなにもできないなんて…。負けず嫌い魂がむくむくと頭をもたげてくる。今日習ったことを練習して、きちんとできるようにしよう。
段々とフラメンコが遠くなってきた。
http://indo.to/miyabi
佐藤雅子
カタック舞踊家。1995年渡印、1997年よりインド人間国宝パンデット・ビルジュ・マハラジ師に師事。2004年ソロ活動許可取得。2005年帰国。国内外での活動のほか、都内にて後進育成に努める。ホームページ「miyabi-kathak.com」。-
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