Delhi-6

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Delhi-6 のポスターが好きだ。このポスターだけで、見たいという気になってしまった。あと2日で引越しだというのに、罪なポスターである。
ハヌマーンがシャガールの絵みたいに遠くで飛んでいる感じが良い。大理石のフレームも良い。だが、私は本気でこれをDelbi-6と書いてあるのだと思った。(本当はDelhi-6)デリー-6とは、オールドデリーの郵便番号らしい。

アメリカ育ちのローシャン(アビシェーク・バッチャン)は、余生をインドで暮らしたいと願う祖母を連れてオールド・デリーのチャーンドニー・チョォクにある古い屋敷にやってきた。
折りしも、デリーでは黒サルが出没しては人を脅かし、大ニュースとなっていた。
ローシャンは最初、インドを楽しんでいた。愉快な人達との近所付き合い、ミターイー、屋上での団欒、聞こえてくるカッワーリー、オールドデリーの空を自由に飛ぶハト、ラールキラーやジャーマ・マスジド、カラフルなラーマーヤナ劇・・・。ただ、隣家にいる若い娘(ソーナム・カプール)とは、すれ違いの日々が続いた。
ある日、母親が倒れた。近所の人に助けられながらサイクル・リクシャーで病院に向かっていたローシャンだったが、聖なる牛が通っているため先に進めなくなってしまった。さすがのローシャンもインドに頭に来るか?という時に振り返ってみると、いつのまにか祖母が歩いており、ありがたそうに聖なる牛に触れていたのだった。呆れるローシャンであった。
ローシャンが最初に軋轢を感じたのはインドの警官だった。不必要にいばりちらし、ビンタを喰らわせる彼に怒ったローシャンは、警官にビンタを喰らわせたのだった。そのため、彼は刑務所に入れられたが、父親の友人アリー(リシ・カプール)が袖の下を払ったおかげで釈放される。
チャーンドニー・チョォクには清掃人のジャレービーがいた。彼女がゴミを持つのを手伝ったせいで、ローシャンの手は灰で清められなければいけないはめになってしまった。カースト差別を思い知る彼であった。
ある日、ローシャンはこっそり車を運転してしまったビットゥの弟達を救った。車を運転したのは、黒サルの仕業ということになり、ますます黒サル報道は加熱した。
ビットゥーはと言えば、インディアン・アイドルに申し込み、有名になる日を夢見ていた。ところが、父親が勝手に結婚を決めてしまった。それを見かねたローシャンは、口出しをして、隣家と摩擦を起こす。
地元の高利貸しのラーラーは、とても若い娘と結婚していた。ところが娘はカメラ屋のスレーシュとできていた。ある日、2人がいちゃついている時に突然ラーラーが帰ってきたので彼女は黒サルが現れて彼女をレイプをしようとしたとでっちあげる。スレーシュは、窓から飛び降りて逃げおおせたが、ちょうどローシャンが窓の下を歩いていたため、ローシャンはレイプ未遂犯にされてしまう。
地元の人達は怪しいバーバーを呼んで黒サル対策の相談をしていた。そのうちに、ヒンドゥー教徒が「サルはいつもムスリム地区からやってくる」と言い出す。するとムスリムは「でも被害に遭ったヤギのヒナーはムスリム、いや、ムスリムのヤギだ」と言い出す。
バーバーは無責任にも「モスクが出来る前、ここにはヒンドゥー寺院があった。黒サルはヒンドゥーの怒れる魂の化身だ」と言い出す。地域のムスリムコミュニティは、それを訊いて怒りだすが、地元のヒンドゥーの住民は同調し、ついにはムスリムが経営している店をメチャメチャに破壊してしまう。これをテレビの報道で知ったローシャンは現場にかけつけ、被害にあった店主を抱きしめる。
ローシャンは、もはや敵が多い人となってしまった。彼自身は、ムスリムの母とヒンドゥーの父を持っているためヒンドゥーコミュニティーから寺に入るのも止められてしまった。ローシャンは「皆の中に神が宿っているのだ」と演説をするが、それがムスリム達の怒りを買い収拾がつかなくなってしまう。ローシャンは、こんな地域を飛び出してアメリカに帰ることを決意する。
一方、隣家ではビットゥーの結婚の準備が進んでいた。ビットゥーはインディアン・アイドルのオーディションに参加するため、家出を計画していた。それもカメラ屋のスレーシュと。
ローシャンは空を飛べないはずのハトが飛んで戻ってくるのを見た。彼はやっぱりここに残ることにする。また、ビットゥーのことが好きだと気づいた彼は、父の友人アリーとビットゥーの弟達に応援されて、彼女を追いかけることにする。
一触即発となったチャーンドニー・チョォクでは外出禁止令が敷かれた。ビットゥーは家を出た。スレーシュも家を出た。弟から情報を貰ったローシャンは、バザールで売られている黒サルスーツに身を包んで、屋根から屋根へ飛び移ってビットゥを追った。警備にあたっていた人々は屋根から屋根へと飛び移る黒サルの姿を認め、手に手に武器を持って追ってきた。
ビットゥーに追いついて告白したローシャンだったが、後ろから暴徒に襲われ、ボコボコにされてしまう。しかも、店を破壊された恨みを持ったムスリム店主に銃で撃たれてしまう。ローシャンは意識不明の重態となる。
撃った店主はローシャンの姿を見て、初めて間違いに気づく。ビットゥーの弟達は全てを話した。そこで、彼を殴ったり蹴っていた人々は、もしローシャンが黒サルになって叩かれていなかったら、代わりにヒンドゥーとムスリムが抗争を始めていた、ということに気づく。
人々は彼を救急車に乗せて病院に運ぶ。救急車のエンジンがかからなかったが、人々が一丸となって車を押したおかげで車は走り出したのだった。
その頃、ローシャンは天国で祖父に会った。だが、祖父は別れを告げて言ってしまう。ローシャンは救急車の中で息を吹き返したのだった。ローシャンが身に着けていた黒サルのマスクは、ダシャヘラーの日に、ラーヴァンと一緒に焼かれたのであった。

前半、人物が次から次へと出てくるので頭が混乱してしまった。大物俳優はすぐ覚えられるので良いのだが、描写が簡単な人物があまりにも多すぎるので、置いてけぼり感を感じてしまった。また、短いカットが多い。歌シーンなんかは、写真の高速スライドショーだった。これはオールドデリーのゴミゴミとした感じを出したかったのかもしれない。関連性がよく見えない散発的出来事も次々と起こる。そして、特に大きな事件が起こるわけでもなしに、そのままインターミッションに突入するのである。これには不安感を覚えた。
後半になるとコミュナル対立が起こり、またローシャンが苦悩をし始めて映画らしくなってくる。そして最期に今までのストーリーが全て1つに繋がって、ヒーローがボコボコにされて終わるのである。Rang De Basantiみたいに、またヒーローが死んでしまうのではないかと思ったが、今度は生き返っていたので良かった。
というわけで、全体的には期待したほどの傑作ではなかった。歌は良い。Slumdogのサントラより良いかと思われる。空耳か「まさかり」「マトンカリー」に聞こえる。
特筆したいのは、ソーナム・カプール。Saawariyaの時は、髪やヴェールであまり顔を見せていなかったので、今回あらためてソーナム・カプールを見た。アニル・カプールの面影がどこにもなく、物凄〜く綺麗だった!この映画で彼女は洋服も着こなせるということが判明した。今後も銀幕で彼女を見るのが楽しみである。
ヒンディー語の台詞で印象に残ったのは、『hai ke nahin ?』と『Baba sab theek karega, ok?』だ。『hai ke nahin ?』 は聞いたことはあるけれど、こちらではあまり使わないので耳に残った。『Baba sab theek karega, ok?』は笑ってしまった。いちいち台詞の後ろに「オゥケーイ?(分かった?いい?)」と付ける人は、結構いる。えらそうな表現でもある。
Rang De Basanti との共通点もいくつも発見してしまった。映画中に、ストリーリーに絡まった劇が挿入されることは前作と共通していた。また『神様が何とかしてくれる』と言っている祖母を、『他人任せで自分で何もしない』と批判するのも前作に共通していえると思った。ユーモアを混ぜて説教することもラーケーシュ・メヘラーの特徴なのかもしれない。
新鮮だったのは、ローシャンの説教が失敗に終わるシーンを描写したことだ。映画やシリアルドラマの中だと、ヒーローやヒロインが説教するとメロドラマっぽい音楽や「ドドーンッ」という効果音が入って、説教を聞いている人の顔がちょっとアップになり、いかにも説教が効いていますよ〜というのを表現するが、現実世界ではそんなことは起こらない。むしろ、人々は決まり文句に飽きて鼻でせせら笑うのだ。それが映画の中で描写されていた点で新鮮だった。
映画の中の雰囲気は好きである。オールドデリーの空のシルエットが美しかった。真っ白なハトが、尾羽を揺らしているのも良かった。アメリカ帰りのインド人が珍しがって携帯でオールドデリーを撮影する、という設定だったため視覚的に面白く作られていた。ナマーズ(礼拝)の描写も圧巻!
本作品は、期待したほどではなかった。だが、デリーの興味深い描写を見て、デリーに住むのが楽しみになってきた。

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