まとまりましょう 2

前回の記事「まとまりましょう」の続きです。
〜登場人物〜
社長秘書嬢:自称マラーティー。B型。ダンス・グループの言いだしっぺであり、あらゆる決定権を握る。
ウッタラーンチャル嬢:最近、転職して当社に入って来た子。自己顕示欲過剰でノンストップで喋る。気まぐれなため、練習をすっぽかす。
マッディヤ・プラデーシュ嬢:今年6月に入って来た新入社員。発言は少ないが自己主張はする。
カンナディガ嬢:マーケティング部。O型。真面目なメンバーだが、踊りが下手で皆の非難対象に。
:自称日本人。A型。踊りはあまり得意ではないが真面目に練習に参加しているメンバー。
オーディション
会社のイベントをとりしきっている人事部(HR)の人が、イベントが告知されてまだ間もないというのにオーディションを開催した。歌や踊りを披露したい人は、このオーディションでパフォーマンスの全部または一部を必ず披露しなければならない。
「何で今オーディションなの!準備できている人なんて誰もいやしないよ」
とブツクサ言いながら、私達のグループは一生懸命間に合わせの練習をした。
オーディションは二次、三次と開催された。奇妙なのは皆必死に準備するにも関わらずオーディションが突然延期になることだ。延期が繰り替えされるに従って、私は気付いてしまった。オーディションとは参加者を振り落とすために行われているわけではなく、方便にすぎないのだ。計画を立ててコツコツと何かをするのが不得手な人は、本番が迫ってから慌てて準備をする。たぶんオーディションは、土壇場になっても準備出来ていないという状態を防ぐための人事部による工夫なのであった。これは、お仕事にも実際に使えそうなテクニックだと思った。
待ちぼうけ
イベントが近づいてきたこともあり、衣装のことを考えなければならなかった。話し合った結果、私達ダンスグループは、色とりどりのガグラー(スカート)・チョーリー(ブラウス)を着てパフォーマンスを行うことにした。そこでムスリム居住区に位置するバーザール、コマーシャルストリートに繰り出すことにした。
土曜の2時にコマーシャルストリートの宝石屋の前で待ち合わせをした。私は午前中、某日本企業を訪れる用事があり、その後知人とお昼ご飯を食べてからコマーシャルストリートに行くと約束の時間に30分送れそうだった。そこで、グループをとりしきっている社長秘書嬢に
「30分遅れるよ」
と連絡したところ、
「ちょっと〜、皆2時きっかりに来るって約束したはずなんだけど」
と言われた。そこで泣く泣く昼ごはんを抜いて約束の時間に行ったら、誰もいなかった。最初の1人がフラリと現われたのが2時半。2人目と3人目が来たのが2時45分。「2時きっかりに」と言ったはずの社長秘書嬢が来たのが3時15分だった。こんなことなら電話連絡なんかせずに無断で遅刻して来れば良かった。
誰が赤を着るか?
さて、やっと全員揃ったのでガグラー・チョーリー選びを始めることにした。まずはコマーシャルストリートで尋ねまわったが、意外なことにここはサーリーやシャルワール・カミーズばかりでガグラー・チョーリーは扱われていなかった。「マーシャッラー」と書かれたプレートが飾られている店先で「ガグラー・チョーリーはどこで手に入りますか?」と尋ね歩いているうちに、私達一行はセッピング・ロードの始点にあたるチョォウにたどり着いた。そこで、ようやくガグラー・チョーリー用の布が売られている店を見つけた。既製品のガグラー・チョーリーもあったが、子供っぽいものばかりだった。そこでオトナの私達はまず布を買って、それから仕立ててもらうことにした。
黒いブルカを被り、手をヘンナで染めた女性のグループが座りこんでいる店内に靴を脱いで上がりこんだ。見渡すときらびやかな装飾が施された色とりどりの布が壁一面に積まれていた。店主は「これはどうだ、ベリーグッドだぞ」と言いながらガーグラー用の真ん丸い布を一枚、一枚、魚捕り用の編を広げるように目の前で広げてくれた。
日本人の目には新鮮なため、どれもこれもが良いように映るのだが、そこはさすがインド人。お目が高く、どれもこれも駄目に映るらしい。棚から布を出しては広げていた店主は、私達が布にケチをつけてばかりいたので
「そんなんじゃ、いつまでたっても決まらないぞ」
と怒り出し、布を取り出す時に私達に投げつけてくるようになった。目の前の床は布の山となった。
2時間ほど店内の布を見てみたが、あまり気に入ったものがなかった。選ぶのに疲れてしまった頃、2500ルピーのビーズの刺繍がほどこされた真っ赤な布を社長秘書嬢が被ってみた。するととっても良く似合っていたので、そこにいたメンバー全員がいっきにその赤い布に惚れ込んでしまった。私達は、同じデザインの違う色の布を棚から取り出させて目の前に並べてみた。これでやっと衣装が決まるかもしれなかった。
ところで社長秘書嬢は自分が赤を着て、他のメンバーが違う色を着るものと思い込んでいるフシがあった。だが、マッディヤ・プラデーシュの子が
「私、今回の踊りの衣装を友達の結婚式でも着たい。それにはやっぱり赤を買いたい」
と言い出した。
社長秘書嬢は
「いいわよ。じゃぁ舞台で私が赤を着た後、あなたの着ていたものと交換するからね」
と即座に言った。社長秘書嬢は大柄だが、マッディヤ・プラデーシュ嬢は小柄。明らかにサイズが違う。だからマッディヤ・プラデーシュ嬢は慌てて
「サイズが違うから、それは出来ない。」
と言った。
社長秘書嬢は、考えた。赤はヒロインが着る挑発的な色だ。その赤を他の人が着て、自分がその他の色を着るシーンを着るのはどうだろう?「ありえない」と思ったのだろうか、
「じゃぁ、皆で赤を着よう」
と言い出した。だが生憎店内には、同じデザインの赤が2つしかなかった。取り寄せるにしても、時間がかかるらしい。そのため、メンバーの間で赤の布をめぐる争いが起きた。それがまるでゴレンジャーごっこをして「赤」の役を取り合う子供みたいだった。
しばらくは赤の取り合いが続いていた。だが社長秘書嬢は、
「私はもっと格が上のものを着て他の子よりも目立てば良い」
と思ったらしかった。社長秘書嬢は、
「私、実は赤のドレスをいっぱい持っているから、お母さんにこれ以上赤の服を買ってくるなと禁止されているのよ。だから、あなたたちがこれを買いなさい。ア、旦那さん。予算がもうちょっと上の品物を見せてくださる?3000ルピーとか4000ルピーでも良いわ」
と言った。それを聞いたウッタラーンチャルの子も、予算を上げてもっと良い衣装を買う気になっていた。マッディヤ・プラデーシュとカンナディガの子はそれを聞いてちょっと怪訝な顔をしたが、結局この2人が赤を入手することになった。私は赤と色違いの同じデザインのガグラー・チョーリーを買うことにした。
こうして色とりどりのガグラー・チョーリーを着る計画がだいなしになった。デザインもバラバラになりそうである。本番まであと2週間。私達はまとまることが出来るのだろうか?(続く)

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