言語政策に違反、1400校が閉鎖

毎朝30分だけハウスキーピングの女性が来て床の掃き掃除とモップがけをしてくれる。
紺の地味なサーリーを着、オイルでなでつけた髪に季節の花を挿し、こめかみにはターメリックをつけ、白目と白い歯を輝かせている彼女は、私より年下に見えたが、実は3人の子供がいるらしい。上の子はもう7歳になるのだとか。
彼女は、自分は英語は分からないけれど子供は英語ができる、と誇らしげに言う。英語を学び将来エンジニアになって自分達の生活を良くしてくれる、と信じているのだろう。彼女は子供の教育費を稼ぐため嬉々として働いているように見える。
ところが、最近、カルナータカ州の教育事情に激震が起きた。1994年にカルナータカ州政府が制定した言語政策に違反して英語を教えていた1400校に閉鎖命令が下ったのだ。
カルナータカ州言語政策とは、1994年以降に開設した学校はカンナダ語か他の母語で教育しなければならない、というものだ。実際は、父兄たちからの強い要望で英語を媒体として教育していた学校が多かったらしい。
またカルナータカ州言語政策では、英語教育は5年生から開始することになっている。これは、マハーラーシュトラ、デリー、チャッティースガルを含む14の州が1年生から、マニプール、オリッサが2年生から英語教育を始めているのに対し、はるかに遅れている。
また5年生から始められる英語の授業の数でさえも週に4時限と限られており、週3時限のウッタルプラデーシュ、ヒマーチャルプラデーシュに続いて最低レベルだ。週に7時限行っているデリー、メガーラヤ、週に9時限行っているゴアの政策と比べると、こころもとない。
そんな厳しい英語教育の制限を守らない学校が続出した。そして再三指導を受けたにもかかわらず従わなかった学校は、今回、まとめて閉鎖することがカルナータカ州政府の教育部により宣言されたのだ。
生徒は、英語で教育を行う私立学校は言うまでもなく、英語で教えている中央政府系の学校にさえも行く余裕がない人がほとんどだ。ほとんどの子供たちはカンナダ語を媒体とする学校に散り散りに転校していくことになりそうだ。そして教員は可哀想に・・・解雇となるらしい。
子供たちの未来を閉ざそうとして厳しくしているわけではなく、カンナダ語を大事にする目的で政府がこのような政策をとっていることは分かる。また、別にカンナダ語や他の母語で教えている学校に行ったからといって良い学校に進学して良い職につけるチャンスが全く消えてしまうわけではないとも思う。だが、やはりカルナータカ州政府が定めた言語政策に従っていては、英語がものを言うインド社会において、子どもたちの競争力が劣ってしまうのだろうなと思う。
英語さえ流暢ならコールセンターで小金を稼ぐことができたものを、結局他州から来たエンジニア家族のためにハウスキーピングをし、オートリクシャーの運転をする人も多く出てくるのかもしれない。そして彼らとの格差を恨み、カンナダ至上主義のような活動に加わることもあるのかもしれない。なんだか、やるせない。
※10月4日追記
結局、閉鎖命令はカルナータカ州政府の教育部によって取り消されました。

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