タメルの憂鬱

ネパールのカトマンズの旅行者ゾーン、タメルといえば同国を訪れる人たちの多くが一度は宿泊や買い物などで利用するエリア。

Nepalopediaで、街中の様子を見ることができるが、かつてはのんびりした風情であったこの一角は、今や賑やかな繁華街となっている。

そのNepalopediaのウェブサイト左上部で、英語・日本語・中国語に切り替えることができるようになっているのを見てもわかるとおり、近年は中国からの観光客が急増している。漢字の看板を掲げた中国人専門のようになっている宿、彼らが多く利用する中国人経営のレストランなども見かけられるなど、客層にも大きな変化が生じているようだ。 続きを読む タメルの憂鬱

ボーヂョー・アウンサン博物館

ボーヂョー・アウンサン博物館は閉鎖中

ヤンゴンでボーヂョー・アウンサン博物館に行ってみた。ダウンタウンの北側のカンドーヂー湖の北側にある。

建国の父アウンサン将軍が1947年に暗殺される前に居宅としていた屋敷という歴史的な価値からヤンゴン市の文化遺産に登録されている。

父親が亡くなったとき、まだ2歳だったアウンサンスーチーさんは、幼少時をしばらくここで過ごしている。

2009年に訪れたときには閉まっており、改装工事でもしているのかと思ったが、残念ながら今回もそうであった。付近の住民に尋ねてみると「なんだかずっと閉まってますねぇ」とのことであまり多くを語らないが、どうやら政治的な理由であるらしい。

政権にとって長年の懸案となっているスーチーさんの存在があるため、彼女の父親ゆかりの場所というのは、国内政治的に憂いをはらむものなのだろう。

そういえば昔のミャンマーの紙幣にはアウンサン将軍の肖像画があしらわれていたものだが現在はまったく見当たらなくなっている。 続きを読む ボーヂョー・アウンサン博物館

中国の裏庭

以下、土曜日にヤンゴンの国際空港から出発する便である。

航空会社 目的地 便数
エア・アジア バンコク 1便
バンコク・エアウェイズ バンコク 2便
タイ国際航空 バンコク 2便
ミャンマー国際航空 クアラルンプル 1便
ミャンマー国際航空&マレーシア航空共同運航 クアラルンプル 1便
ミャンマー航空&ジェットスター共同運航 シンガポール 1便
シルク・エア シンガポール 2便
ベトナム航空 ハノイ 1便
中国東方航空 昆明 1便
中国南方航空 広州 1便
中国国際航空 昆明経由北京 1便

曜日によってはエア・インディア(コールカーターから週2便)が就航していたり、中国東方航空(昆明から週4便)といった具合にバラつきはあるものの、日々の就航状況はだいたいこのくらいと考えてよいだろう。

特徴的なこととしては、同国が後発発展途上国であることに加えて、先進国等による経済制裁、周辺国からのフライトしかないとことである。

そうした中でも中国からは3社が乗り入れており、中国の3都市と結んでいることが注目される。中国東方航空はマンダレー空港と昆明間にも週5便就航させている。

特に中国の休暇シーズンともなると多数の観光客を乗せてやってくるようだが、年間を通じて商用で訪れる中国人たちが多い。とりわけ資源開発等の関係で中国系企業が多数進出しており、経済制裁下にあってもマーケットに多数溢れる家電製品の多くは、近年品質向上著しい中国製品である。

幾多の経済開発援助プロジェクトも中国の手により実施され、国営メディアが流す国際ニュースの大部分は新華社通信からの配信を受けたものである。

先進諸国が経済制裁を課して孤立を深めたミャンマーに対して、ちょっと距離を置いて中立的な立場にあるのがアセアン諸国ならば、ここぞチャンスとばかりに積極的に進出を続けてきたのが中国。

いまや中国という強力な後ろ盾を得て、近年順調な経済成長を推し進める現在の支配システムが、年内に予定されている『総選挙』により国民の信任というお墨付きを得て継続することは間違いないだろう。

『経済制裁』という、いわば思考停止した状態のまま、ミャンマーが『中国の裏庭化』してゆく現状を座視していてよいものかどうか疑問に思う。

スィッキム州が近くなる

パキョン空港、聞きなれない名前だが、2011年に開港予定のスィッキム州初の旅客機が離着陸する空港となる。
すでに西ベンガルのバグドグラーからスィッキム州都ガントクへのヘリコプターの定期便があり、その他スィッキム各地やカンチェンジュンガ峰方面などへの遊覧フライトはあるが、これまで地元等からの要望の高かった航空機の乗り入れがついに実現する。
これまで鉄道ならば西ベンガル州のシリーグリー、飛行機ならばその隣町のバグドグラーまで行き、そこからミニバスや乗り合いジープなどでアクセスという具合であったスィッキム州だが、空港がオープンすることにより、直接州都に降り立つことができるようになる。
おそらくマナーリー近郊のブンタール空港くらいの規模で、小型機のみが乗り入れることができることになるのだろう。それでもおそらくデリーからヒマーチャル・プラデーシュ州のマナーリー、シムラー、ダラムサラへの便を運行しているキングフィッシャー航空が、コールカーターからの便を飛ばすことになるのではないかと予想している。
スィッキムはモンスーン季節には多雨の地域であるため、運行はあまりアテにならないことと思われるが、ハイシーズンにはかなりの需要が見込まれるはずだ。
鉄道も2015年にはスィッキムに乗り入れる予定だ。西ベンガルからスィッキム州に入ったところの町ランポーが終着駅となる。そこから州都ガントクまではさらに40kmほどあるが、それでもインド国内の主要都市から州境まで直接アクセスできるとなれば、観光業促進のための大きな力となることだろう。
工期は未定で、実現したところでいつの話になるかもわからないが、インド国鉄はランポーからガントクまで更に延伸する計画も描いている。
スィッキム州がグンと近くなる。

やはりバーングラデーシュが旬

いわゆる『NEXT11』のひとつに挙げられているバーングラーデーシュがやはり旬のようだ。こんな記事を見かけた。
世界のアパレルが“バングラ詣で”ユニクロ進出で脱・中国加速 (産経ニュース)
要は中国で頻発する労働者のストライキ、賃上げ圧力に加えて人民元の切り上げが、もはや「あるのかないのか?」ではなく「いつになるのか?」という差し迫ったところまできているため、これまで生産の拠点としてきた中国以外にどこか候補地を見つけなくてはならなくなったわけである。
つまり中国での状況の変化という大きなファクターがあり、これに対応できる世界の工場としてのポテンシャルを秘めた国ということで注目されているのだ。
まずは人口規模。人口1億6千万を数える世界第7位の大国(ちなみに第6位は1億8千万のパーキスターン、第8位は1億5千万のナイジェリア)である。労働力大国ともいえる同国だが、それに対する就業機会は少なく、賃金の水準も低いため毎年大勢が国外に流出する傾向がある。
湾岸産油諸国はもとより、東南アジアとりわけマレーシアでは非合法な就労目的で渡ってきた移民の存在に当局は手を焼いている。もちろん国境を接するインドでは、デリーやムンバイーその他の主要都市に不法に住み着いているバーングラーデーシュ移民は多く、ときおり大がかりな摘発がなされていることがメディアで伝えられている。
都市部のみならず、とりわけ国境を接するアッサムや西ベンガルなどでは農業に従事している人々も多いなど、経済的な理由における移民圧力がバーングラーデーシュでは高い。
同国にとって、大量の海外移民は外貨獲得の貴重な手段であるいっぽう、多くの人々が国外に活路を求めざるを得ない状況は、社会の安定と発展、ひいては治安面における不安を引き起こすことから座視するわけにはいかず、従前から国外からの投資を歓迎する姿勢を見せていた。
しかし不安定な政治、頻発するハルタール、労働力の質、隣国インドと比較しても格段に貧弱なインフラ、モンスーン期の洪水による操業の不安と交通の途絶などといった懸念等から中国やインドほどの注目を集めることはなかった。
そのバーングラーデーシュ自体の情勢は変わらないのだが、先述のとおり近年中国の状況に変化が起きているため投資先のオプションとして浮上することになったようだ。当面はバーングラーデーシュで従前から盛んで実績もあるアパレル関係が大半のようで、中国のように「なんでもかんでも」というわけではない。
そもそも同国自体が魅力を増したわけではなく、近年外国企業にとって中国における操業に不安や不満が出てきたがゆえ、代替地のオプションとして浮上してきたに過ぎない。
だがバーングラーデーシュとしては、今後の大きな成長の手がかりとする好機が到来したといえる。国外から眺めてみても、世界の工場としての魅力はもとより、そう遠くない将来には人口2億に届く同国は大きな市場になり得る。
所得水準、平均的な教育水準、インフラ事情等、どこを眺めても現状があまりに貧弱であるだけに成長が軌道に乗れば、その伸びしろも大きなものとなることは言うまでもない。
バーングラーデーシュの首相オフィス直属の投資委員会が設置されており、同国政府の意気込みと投資呼び込みへの期待の大きさがうかがわれる。
Board of Investment, Prime Minister’s Office (投資委員会)
やはりバーングラーデーシュが旬のようだ。以前『バーングラーデーシュが旬』と題して、大手旅行代理店H.I.S.のダッカ進出について取り上げてみたが、こうした『ブーム』もその背景にあったのだろう。