自前の電気

3月11日に発生した東日本大震災の津波の影響により起きた福島第一原発の事故はまだ先行きが見えないが、これにより東京電力管内の地域では、長期間に渡る電力需要に対する供給の不足が明白となっている。

とりわけ夏のピークの時期にどう対応するかということで、計画停電に加えて電力利用の総量規制あるいは使用制限といったところにまで踏み込んでの様々な議論等がなされているところだ。

生活や医療への影響はさることながら、従来からの不況に加えて震災による総体的な落ち込みから回復を目指さなくてはならない産業界への影響も大きく懸念される。

不幸にして、電力不足に対する様々な策が功を奏さなかった場合、当局がコントロールできない大規模停電が発生することになるわけだが、そうでなくとも電力使用の制限がかかることにより、地域的に時間帯をずらして電気の利用ができなくなることは避けられないのだろう。

停電といえば、インドやその周辺国では珍しいことではない。計画停電であったり突然の停電であったりするが、電気がストップした人々の動きが一瞬止まるものの、そのまますぐに自前の発電機や灯をつける動きが始まり、さきほどまでと比べて格段に暗い照明の中で、何事もなかったかのように物事が進んでいく。

経済制裁下でエネルギー事情がとりわけ逼迫しているミャンマーでは、最大都市のヤンゴンでさえも一般市民の居住する地域では、計画停電どころか限られた時間帯にしか電気は来ない。給電されているはずのタイミングでも停電が頻発する。地方都市ではなおさらのことだ。そのため『常時電気が使える』ことが中級クラスのホテルの売りとなるほどだ。そうしたところでは常時自前の発電機が唸りをたてて稼働している。国軍は優先されていることから、カントンメント地区周辺ではレギュラーに電気が来ているのだが。

停電が日常茶飯事の国々において、給電が突然停止することが物理的な破壊につながってしまうような機器類を扱うところでは、自前のバックアップ電源が用意されており、安全に継続運転ないしは停止させることができるようになっている。『電気が来なくなる』という状況に慣れているため、日本で計画停電が実施されるときのようなパニックが起きることはない。

ある国々ではごく何でもないことが、こちらでは『危機』になってしまうことについて、経済発展とともに私たちの足元が実は脆弱になっている面もあることに気が付かされたりもする。興味深いことに、停電への対応の経験により蓄積されるノウハウというものはかなりあるようだ。

2003年に北米の広い地域で発生した大停電のことを記憶されている方は少なくないだろう。あのときに停電によって生じる社会の様々なシステム等のトラブルに対応するため、米国政府の要請により、インドから専門家たちが派遣されている。

・・・とずいぶん前置きが長くなったが、生活の中でも旅行先でも、一市民として停電で困ることはいろいろあるが、とりわけ個々の『通信インフラ』である携帯電話のバッテリー切れ、そして日没後には目の前が見えなくなることがまっさきに頭に浮かぶ。

ところで、最近こんな機器が発売されている。

アウトドアライフを彩るポータブルバッテリーPES-6600 (ナビポタ.com)

消費電力の多いスマートフォンを複数回充電できる大容量の充電池は他にもいろいろあるが、フル充電で最大240時間点灯可能というLEDライトが付いているのが頼もしい。対応する電圧は100-240Vのユニバーサル仕様なので、電源につなぐコネクタープラグを用意すればどこでも使用することができる。

日常生活でも旅行先でも、この一台をカバンの中に放り込んでおくといろいろ役立つ機会が多いことと思われる。

デリー発ブータンツアーの価格

デリー発のブータン行きのツアー(パロー・プナカー・ティンプー)が手頃であることに気が付いた。7泊8日で33,333Rsである。同時期の同じく7泊8日のタイ行きのツアー(バンコク・プーケット・パタヤー)が39,999Rsであることと比較すると、ずいぶん値ごろ感がある。

Amazing Bhutan (makemytrip.com)

Fun-tastic Thailand (makemytrip.com)

上記の金額はインド国籍の人向けのものであり、私たちが利用できるわけではない。ブータンは独自の鎖国政策の関係で、外国人の入国を大幅に制限している。観光目的で訪問する場合も通常はツアーのみとなる。

そして3人以上のツアーの場合、各々の滞在費用が1日当たり200米ドルとなる。モンスーンの閑散期には165米ドルに下がるようだが、それでもまだずいぶん高い。これらはツアー・オペレーターを問わない公定価格となっているようだ。加えて物価上昇と米ドルの価値が漸減していることにより、2012年1月から250米ドルへと値上げが予定されている。もちろんのことながら、これらの金額にはブータン出入国にかかる国際線チケット代は含まれていない。

外交上、ブータンと特別な関係にあるインドの国籍を持つ人たちについてはこうした『外国人料金』は適用されないことから、こうした価格でのパッケージツアーが実現している。

ただしブータンという国について、私たち外国人が憧れるのと同じようなイメージをインド人観光客たちが抱いているかということについてはちょっと疑問がある。すぐ隣の国であることに加えて、自国の広大なヒマラヤ地域とひと続きの位置にあるということもある。

またインドといっても広いので地域にもよるが、北インド都市部とりわけ東側地域に滞在・在住しているブータン人たちはけっこういる。西ベンガル北部では、商用・観光・買い物その他の目的でやってきたブータンの人たち、そしてブータンのナンバーを付けたクルマもよく見かける。

同様にブータンに仕事のために在住しているインド人も少なくない。下は土木作業の労働者から上は様々な分野の専門家まで、広い分野に関わるインド人たちがいる。

ブータンのテレビ放送のネットワークはインドの技術援助によって実現したものであるし、通信網も同様だ。現在、ブータンで国語であるゾンカ語関係を除き、たいていの科目は英語を介して教えられている。政府の意志で教育の英語化が推進されたためであり、1970年代以降に教育を受けた人々ならば、流暢な英語を話すようになっているようだ。だがその『英語環境』をブータンの教育現場にもたらした人々とはインド人教師に他ならない。

先述のブータンとインドの間の特別な外交関係と繋がりでもあるが、ブータンが独自に在外公館を持たない国にあっては、現地のインド大使館がその部分の役目を担う。

そんなわけで、在インドのブータン王国大使館は、在日本の業務も兼轄しており、担当官が毎年一定の時期に来日して東京の在日本インド大使館にて執務することになっている。

それらはともかく地理的に近いこと、人の往来も盛んなことなどから、インドの人々とりわけブータンからあまり遠く離れていない地域に住んでいる人たちにとっては、日本人が抱くような『秘境』といった印象、『鎖国政策』を続けている閉ざされた国という印象はあまりないかもしれない。

それよりむしろチベット系仏教徒たちの見慣れたイメージ、自国にもある景色や眺めの延長線上にあるように、地味に捉えている部分のほうが大きいのではないかとも思う。

インドの人々にとってのブータンは、ヴィザや高額な滞在費といったハードルがなく、経済的にも時間的にもちょっとゆとりのある人ならば、いつでも訪れることのできる国である。ブータン通貨ニュルタムはインドのルピーに対して等価で固定されており、ブータン国内でインドルピーはそのまま通用するという環境でもある。

そんなわけで、気安く外国旅行に出かけることができる層の人たちの間では、ブータンという国に対して文化的な興味関心でもなければ、南アジアとは明らかに違う世界であるタイ、美しく開放的なムードのビーチのほうがエキゾチックで興味をそそるものであることと思われる。

私たち外国人にしてみれば、同じ時期で同じ期間のもので『ありきたりのタイのツアーよりもブータン訪問のプランのほうが安いなんて!』とビックリすることになるのだが。

マンフロットの卓上三脚 MP1-C & MP3-D

3年ほど前に『カメラと一緒にいつでもどこでも』と題し、カメラの三脚メーカーとして知られるマンフロット社製のMODOPOCKET 797を取り上げたことがあったが、最近この路線の新型モデルのMP1-CMP3-Dという小型テーブル三脚が登場した。

MP1-C  コンパクトデジカメ用
MP3-D   一眼レフにも利用可能

前者は自重30gで、MODOPOCKET 797と同じく最大耐荷重は500gでコパクトデジカメ用だが、後者については自重70g、最大耐荷重は1,500gまでとなっており、このタイプのものとしては珍しい一眼レフ用となっている。両モデルとも色は黒とグレーが用意されている。

どちらも折り畳んだ状態では平べったく軽量であるため、カメラに付けっ放しにしておけるのがいい。通常、こうした小型テーブル三脚は脚部が貧弱であることはもちろんのこと、雲台が華奢であること、重心が高くなってしまうこともあってごくごく小さなカメラにしか使えないのだが、そのあたりはうまく考えて作ってあることに感心させられる。

画像左側に見えるヒモ付きの金具のようなものは、カメラの三脚取り付け用の穴に取り付けるネジを回すための工具。MODOPOCKET 797の場合はポケットからコインを取り出して回していたが、こういうささやかな心遣いはちょっとうれしい。加えてMP3-Dはカメラネジ用の溝が3本あるのが目を引くが、これはカメラにより三脚用の穴の位置が違ったり、カメラそのものの形状もいろいろであることに対応したものだということで、実に汎用性が高い。

MODOPOCKET 797の発展形であるどちらも魅力的だが、とりわけ後者、一眼レフに使えるMP3-Dについては、他に同じようなものがほとんど見当たらないため、ひとつ購入してポケットの中にでも忍ばせておけば、何かと役に立つことがありそうだ。MP1-Cの日本での販売価格は2,300円前後、MP3-Dは3,300円前後といったところだ。

旅行向け三脚

 三脚といってもいろいろあるが、コンパクトカメラを使用している方ならば手軽に旅行先に持参しているものといえば、通常はいわゆるテーブル三脚、つまり小型の三脚なのではないかと思う。 

こうした類もピンキリだ。見るからに華奢なものから、なかなかしっかり造ってあり、小型の一眼レフと単焦点の標準レンズ程度の重量ならば充分に使えそうなものまでいろいろある。 

ただ置いて撮影するだけでなく、石突三か所を壁に当てて安定させてスローシャッターを切るという応用もできるし、あるとなかなか便利である。 

だがあくまでもテーブル三脚である。高さがまったくないため、地面に置いて使うのは毛現実的ではないし、使いたいところで適当な台があって高さを稼ぐことができるとは限らない。 

どうしてもシャッタースピードが遅くなってしまう場面、とりわけコンパクトデジカメの場合はセンサーが小さく、画面が荒れるので感度を上げたくない。かといってある程度の長さの三脚を持参するとなると、それなりの荷物になるため、わざわざ一眼レフを家に放っておいて、コンパクトデジカメ一台で、荷物に振り回されることなく身軽に出かけるというメリットが削がれてしまう。手軽なカメラを使うのにわざわざ三脚の出し入れやセッティング等をするのも面倒ではある。 

そんなわけでテーブル三脚以外のものを旅行先に持ち歩くという考えはまったくなかったのだが、昨年12月に発売されたVelbonのCUBEという、コンパクトデジカメ専用の三脚はかなり気になっている。 

重量は390g。やや大きめのコンパクトデジカメと同じくらいだが全高は940cm。しかも畳んだ状態は三本の脚と雲台がフラットに並ぶので小さなカバンの中でも邪魔にならない。さらには『世界最速』を謳う脚の出し入れのスピーディーさがスゴイ。 

世界最速セッティング – ミニ三脚「CUBE」(Youtube) 

これならば面倒などと思うことなく気軽に使う気になるだろう。3本の脚がフラットになっている状態で引き出すので杖のような形で持つこともできる。つまり一脚的な利用もできるだろう。常時カバンの中に潜ませておくと、野犬に囲まれたときの威嚇用にも使えそう(?)な気もする。 

もちろんコンパクトかつ軽量というのがウリなので、堅牢さを期待してはいけない。あくまでもコンパクトデジカメ専用ということもあり、脚を最大限に伸ばすと頼りなくグラつく。荷重は400g以内ということになっている。 それでもリコーのGRDやシグマのDP1といった軽量カメラを使う分には申し分ないし、収納性とスピーディーさという点からも唯一無二の存在である。 

日常的に持ち歩くのはもちろんのこと、旅行先に持参するにも非常に具合の良い三脚である。価格は5,000円以下、概ね4,500円前後といったところのようである。

サートパダー 2

ホテルから湖をボートで回るOTDCのツアーに参加する。周囲に他のホテルはないため、ここの宿泊客だけを対象するものだと思っていたのだが、ちょっと勝手が違った。もちろん同じOTDCによるものだが、プリーからやってくる日帰りツアーグループに合流することになる。

ツアーグループは、朝9時半にホテルに到着。まず最初に埠頭近くにあるビジター・センターでチリカー湖の成り立ちや生態系等についての基本的な説明を聞いたり、展示物を見たりする。

埠頭からはふたつのボートに分乗して出発。この湖にはイラワディ・ドルフィンという種類のイルカが棲んでいる。もちろん船からは彼らの頭やフィンがときどき見られる程度だが。船頭たちはイルカがどのあたりに多くいるのか知っているので、彼らが多数出没する水域に向かう。

イラワディ・ドルフィンの背中

規則では50メートル以上接近してはいけないことになっているようだが、そんなことはお構いなしのようで、往々にして10メートル、しばしば数メートル先でイルカたちが回遊している様子を見ることができた。

通りがかりの他の船。お客を満載で窮屈そうだ。

次に向かうのは、ラージャンサーという60キロほどもある長い砂州である。これがベンガル湾とチリカー湖を仕切っている。もともと湖から海への出口はもっと北のほうにあったとのことだが、これが自然に堆積して閉鎖されてしまった。その結果、水質の劣化が著しくなり、今の出口になっている部分はその対策として近年になってから人工的に開けたものであるという。

広大な砂州。左手はチリカー湖で右手奥はベンガル湾

砂州といってもかなり幅が広く、優に一キロほどはある。小高い砂地の丘に登ると、ベンガル湾とチリカー湖が左右に見える。

このエリアに定住している人はないが、観光客相手の「海の家」がいくつもある。それらではチャーイや簡単な食事を出している。特にチリカー湖特産の魚介類とりわけエビ、カニの料理が人気だ。

旨そうなカニ料理
こちらもまた食欲をそそるエビ料理

それらを注文すると、裏手で薪を燃やして鍋をかけて炒めた料理を作ってくれる。いかにも『オヤジの手料理』といった感じだが、食欲をそそるいい匂いが漂ってくる。私は、数年前から甲殻類でアレルギーが出ることが多く、試してみることがためらわれるのが残念である。

大きなたらいに入ったハマグリのような貝の殻を割り、中から真珠を取り出してみせている男たちがいる。真珠は白いものが大半だが、ときたま黒いものもある。面白いことに、たいていの貝にそうしたものが入っていた。何か仕掛けがあるのか、アコヤ貝ではないのだが、貝の幼少期に真珠が出来るように細工をしてあるのかもしれない。

真珠?
こうしたハマグリのような貝の中に『真珠』

昼間に湖を行き来する船はかなり多い。漁師たちが仕事をする時間帯ではないため、通りかかる船はほぼすべて観光客用のものばかりである。多くはプリーに宿泊して日帰りでここを訪れている。チリカー湖のクルーズは楽しいが、サートパダーについては特に宿泊するメリットはなかったように思う。とても静かではあるものの、船に乗らなければ周囲に見るべきものはないし、とにかく蚊が多い場所である。

<完>