National Geographic 11月号

Facebookである方が書き込まれたことから知ったのだが、National Geographic11月号の特集はSorrow on the Mountainと題して、今年4月にエベレストで発生した大規模な雪崩による「エベレスト史上最悪の日」とされる歴史的な事故が取り上げられている。

地元ネパールで登山に関わる人たちの仕事と暮らし、事故の顛末と遭難した人々やその周囲の動き、山をめぐる経済効果や労働問題、事故の後に持ち上がった政治的な動き等々が各種メディアを通じて報じられてきたが、それらを俯瞰する形で読んでみると、この事故が起きる前から、その背後にあった社会問題が浮き彫りにされているように思う。もちろん、それらは現地で登山関係の仕事に従事している人々にとっては、周知の事実に過ぎないのかものであったとしても。

そこに登山の仕事がある限り、そこでの稼ぎを求めて行かなくてはならない男たちがいる。名峰を征服する登山隊の華々しい活躍は彼らの支えがあってこそのものであり、登山活動がそこにある限り、こうした男たちやその周辺の産業で働く人々にも恩恵が及ぶことになる。また、登山料等の収入は、国家に対しても貴重な財源となり、300万ドルもの収入を与えることになるなど、経済的な効果は計り知れない。

それほど重要な産業なのだが、これを支える最前線の現場、つまり登山の仕事でほとんどの補償もない状態で、命の危険を冒して働く人々に依存している現状。だが、その仕事による収入を必要としている男たちや彼らが養う家族があり、登山者たちもそうした彼らを必要としているというジレンマ。労働条件の改善は必要であるとはいえ、そこにマオイストたちがツケ入る隙間も大きなものであるわけで、これが政治絡みの騒動へと繋がる。とりわけこの国の「基幹産業」のひとつともなれば、なおさらのことだ。

上記に示したリンク先でも記事内容のあらましは判るとはいえ、ぜひ印刷された今月号を手に取っていただければ幸いだ。記事内にいくつも散りばめられて、文章同様に、あるいはそれ以上に多くを語りかけてくる写真とその解説を読みながら、この問題についていろいろ考えさせられるものがある。

U-mobile

今回は直接インドやインド世界と関係のない話題で恐縮である。先日購入したGalaxy S4 Zoomを使用するために、いわゆる格安SIMと呼ばれるものをいくつか検討していたが、その結果U-mobileと契約してみた。通話とデータ通信を合わせたプランは以下のようになっている。

U-mobile 通話プラス

通話回線はDocomoのネットワークを利用することになるので、カバーするエリア等について心配は要らないだろう。

現在までのところ、日本の既存大手の携帯電話会社では、回線契約と携帯電話端末の販売がセットになっていて、通話・データ通信ともに高い料金であるところに、電話機の販売代金を月々割り引くという形で、あたかも料金が割安になったり、電話機が無料や破格の安値で手にできたりするかのような見せかたをしている。

通常、契約は2年単位であるため、契約+電話機購入で付いてくる月々の割引料金の期間、つまり契約期間が終了すると、その割引がなくなってしまうので、毎月の支払いが急に高くなる。それを避けるためには、新たに携帯電話機を買い直すことになる。

契約更新月が経過して、古い携帯電話機をそのまま使っていても、電話機を新たに買い直して再契約しても、携帯電話会社から届く請求書の金額が同じような具合であれば、普通は後者を選択することになるだろう。まったくもって、売る側の都合だけで操られているのがこれまでの日本の携帯電話市場の世界だ。

また、そうした携帯電話会社によそで購入したSIMロックのかかっていない携帯電話端末を持ち込んで使用するとなると、その会社で携帯電話機を購入する場合と違い、月々の割引を得ることができないため、毎月の請求金額がこれまたずいぶん高いものになってしまう。

要は、回線契約の際に当然のこととして、携帯電話機を購入させられてしまい、2年毎に買い直しさせられ、しかもその電話機はSIMロックがかかっているため他社では使用できないという不条理さがまかり通っているのはいかがなものかと思う。SIMロック解除に応じる携帯電話会社もあるが、解除手数料が3,000円(税別)というのは実に高い。(行政側の指導により、来年5月あたりには、各社が無料でSIMロック解除に応じるようにという動きはあるようだが・・・)

そんなわけで、携帯電話機の抱き合わせ販売なしで、通話+データ通信のみで契約できるところを探してみると、いくつかあるのだがデータ通信速度、MNP利用で即日開通という条件で考えると、今のところ敷居が低いのはU-mobileということになった次第である。

この「MNP利用で即日開通」という部分だが、同社のウェブサイトで紹介されている一般的な加入方法においては、実際に使用できるまで数日間のブランクが生じてしまいそうなのだが、幸いにして同社の直営店舗で手続きすると、1~2時間程度で使えるようになることが判った。

U-mobileのリアル店舗が南青山にオープン (INTERNET Watch)

日本国外、インドその他で、機能的にとても魅力的であったり、破格の安値で目を引くような携帯電話機などを購入して、それを日本で使うとなるとあまり容易ではなかったりする時代もあったが、それはすでに過去のこととなった。購入したAndroid端末に日本語環境が入っていなくても、それをインストールするのは簡単だし、SIM側のハードルであった通信速度(がやけに遅かったり)や厳しい通信容量制限(これを越えると超ナローバンドになってしまう)という部分が解消されつつあるためだ。

インド等で販売されているような、デュアルSIMの携帯電話を利用したいという需要もあるのではないかと思う。これまでケータイを2台持ちしている人が、1台にまとめることができるわけで、そんな需要についても、SIMフリー携帯+端末と抱き合わせ販売ではないSIMという状況が一般化すると、ユーザー各々が自分の事情に合わせた携帯電話端末購入と回線契約が出来て良いと思う。

ダム建設工事で危機的状況の文化遺産

パーキスターンのダム建設でこのような問題が生じているとのことだ。

ダム湖に沈む文化遺産を救うために(特定非営利活動法人 南アジア文化遺産センター)

太古の時代より、様々な民族や文化が興亡したこの地域についての概略やダム建設の背景等については、上記リンク先のスライドをご覧いただきたい。

この問題のあらましについては下記リンク先にも記されている。

Diamer-Bhasha threatens ancient heritage sites (DAWN.com)

Bhasha dam and heritage sites(DAWN.com)

南アジア文化遺産センターのウェブサイトによると、ダム建設で水没する地域で失われる岩絵その他の文化遺産は3万点にも及ぶという。長い歴史の中でこうした遺産を残した様々な民族の生活等に関する調査はまだほとんど手つかずだそうで、ダム竣工まで残された時間が10年という状況は非常に厳しい。

この件に関する講演は、11月8日(土)に日本大学文理学部3号館で開催されるシンポジウム・パーキスターン2014でも行われるとのことである。

シンポジウム・パーキスターン2014 (特定非営利活動法人 南アジア文化遺産センター)

ディーワーリー

インドの祝祭、ディーワーリー。隣国のネパールではティハールとして人々が祝う。

このディワーリーの祝祭が祝日として定められている国はかなり多く、南アジアのインド、ネパール、バングラデシュ、スリランカ等以外でもシンガポールモーリシャスフィジーガイアナスリナムトリニダード&トバゴといったインド系移民が多い国々でも公休日となっており、かなりグローバルなお祭りであるといえる。

しかしながら、インドの隣国にして、国内に幾つものヒンドゥーの伝統的な聖地や名刹を抱えている(分離後は廃れてしまっているが)パキスタンについてはこの限りではない。

Pakistani Hindus ask government to give Diwali holiday (BBC NEWS ASIA)

印パ分離独立の際にインド側に移動したヒンドゥー教徒たちの人口が多いとはいえ、今でも総人口の1/20を占めるということは、決して無視できる数字ではない。そもそも同国は、旧宗主国イギリスが去った後に、ヒンドゥーがマジョリティーとして支配することを嫌うアンチテーゼとしてのムスリム国家建設を目指したという歴史経緯があるとはいえ、社会的に高い地位を占める者、影響力の大きな者が去ってしまったことが、その背景にあるといえる。

たかが祝日と言うなかれ。現在同国内で続くヒンドゥーたちへの蔑視やヒンドゥー自身の受難が主にインドのメディアにてしばしば報じられているが、年中行事の中でも最大級の祝祭が軽視されているところに、彼らの置かれた立場が透けて見えると言っても決して大げさではないだろう。

ミャンマーからインドへの陸路越えが可能に

ある方のFacebook書き込みで知ったのだが、なんとミャンマーからインドへの陸路による国境越えが可能になっているようだ。ミャンマー側でのパーミット取得が必要なようである。

その陸路による出国・入国地点は、ミャンマーのサガイン管区のMorehからインドのマニプル州のTamuである。この情報は、こちらをご参照願いたい。

Myanmar / India Land Border Crossing at Tamu/Moreh Open (Lonely Planet THORN TREE FORUM)

Crossing the Indo-Burmese Border on Motorcycle (THE IRRAWADI)

どちらの地域も現在では自由に旅行できるようになっている。しかしながらどちらの地域にも長く抗争を続けてきた反政府武装勢力が存在し、現在は停戦状態にあること、ときおり治安に関する問題が生じていることは頭に入れておきたい。

Trade resumes at India-Burma border (DVB)

もしかすると、数年後にはポピュラーな国境越え地点となっている可能性もある。数年前にパーミット無しでの入域が可能となったものの、さほど注目を浴びることなく、期待されていたほど観光の振興に繋がっていないインド北東部が、ちょっとしたブームとなる可能性もあるかもしれない。

しかしながら、外国人の出入境も可能となっていることから、物流ルートとしてもそれなりの機能を果たすようになっているものと思われることから、両国側ともこの出入国地点のエリアがもはや辺境ではなく、ダイナミックな通商のルートとなりつつあることが、容易に想像できるだろう。