海賊退治

イエメンとソマリアの間の海峡、アデン湾は、世界で最も危険な海域と言われているのだとか。昨今国際ニュースで目にすることが多い海賊被害が続出しているがゆえのことである。 日本の外務省のウェブサイトにも以下のような記述がある。
ソマリア沖の海賊・武装強盗行為対策に関する国連安保理決議の採択について
アデン湾周辺海域:日本籍船の原油タンカー襲撃事案の発生に伴う注意喚起
『海賊』といっても、子供の物語の挿絵で見かけるようなアイパッチをした首領やカギ型の義手をつけた飲んだくれ男が帆船に乗ってやってくるわけではない。高速船、精度の高いナビゲーションシステム、最新式の重火器類など近代的な装備を手にしたプロ集団であるだけに、各国が協調して警戒に当たっても、なかなかその被害が減ることはないようだ。
海運大国でもあるインドは、10月下旬から自国船舶の保護のため同海域での海軍による警戒活動を始め、早速その成果を挙げたとの勇ましい記事がこちらである。
Indian Navy foiled pirate attacks (Hindustan Times)
記事の続き
巡回中の軍用船から飛び立つ武装ヘリに乗り込んだコマンドーたちが、海賊行為の現場を急襲して撃退・・・と書いてみれば簡単だが、その現場ではもちろん壮絶な銃火のやりとりがあったことだろう。
海軍による早速のお手柄といったところのようだが、そもそもこうした活動が不要な平和な海であってくれれば一番良いのだが。

日々の糧は天から届くのか?

コトの背景については詳しく報じられていないのだが、ちょっと気になる・・・というよりも、あんまりなニュースを目にした。『アフガニスタンで物乞い禁止』というのがそれだ。
物乞いをする人たちは犯罪の餌食になったり、いいように搾取されたりしがちであるから保護しましょう、福祉施設に収容しましょうというのが表向きの理由らしいが、そんな余裕のある国情ではないはず。
さりとてこういうお触れを出す政府にしてみても、それが現実的でないことは重々承知のはず。すると真の目的とは何だろうと、あれこれ考えてみたりするが、そんな呑気なことをしていられるのは、遠く離れた国の暖かい部屋の中で、今日明日の糧の心配もなく暮らす赤の他人。
日々路上で物乞いを続けている当人たちにしてみれば、生存を賭けた最後の手段を否定されようと取り締まられようと、おそらく命ある限りそれを続けていくしかない。本格的な冬の訪れはもう目前に迫っている。
Afghanistan bans street begging (BBC South Asia)

勝ち目はあるのか?

テレビニュースを見ていたら、『ハウラー駅で爆発物』という速報が出ていた。ウェブサイト上でもこの件について以下のような記事が掲載されている。
Box with ‘explosives’ found in train at Howrah station (NDTV.com)
なんだか最近ずいぶん多いなと思う。
そういえば、お隣りパーキスターンの首都のイスラーマーバードでも、ほんの数日前に大きな爆破テロがあった。標的となったマリオットホテルはグローバルに展開するアメリカ資本のホテル。ニュースによると建物は全焼とのことで、ホテルとしての機能は停止している。メディアで報じられていたホテルエントランスのパーキングエリアに大きく空いたクレーター状の穴が爆発のすさまじさを物語っているようだ。
ホームページ上にも事件により無期限で休業する旨記されている。同サイト上に用意されているPhoto Tourで豪華な施設設備等が紹介されているが、首都一等地の特にセキュリティが行き届いているはずのエリアに立地する国際的なホテルがこのような攻撃に遭うこと、そもそもザルダーリー新大統領がテロ対策を交えた演説を行なった直後にこうした事件が起きることについて、こと治安に関する新体制の能力に大きな疑問を抱かざるをえない。
こうした中で、インドにとっては腹の底まで信用はできないものの、国軍の支持を背景に内政面ではそれなりの安定をもたらし、近隣国に対しても一定の筋が通った対応をしてきたムシャッラフ大統領の辞任後対する不安は、後任のザルダーリー氏の選出でますます先行き不透明なものになった。このたびのテロ事件は、同国の今後の迷走ぶりを予見するかのようで実に気味が悪い。
パーキスターンにおける近年の過激派の浸透には、ジア・ウル・ハク大統領時代にさかのぼるこれまで歴代の政権がとってきた政策に要因があるとよく指摘されている。利用するほうも利用される側も互いの利益のために手をたずさえていても、まさに同床異夢で腹の奥で考えていることは違う。風向きが変わればあっという間に縁遠くなってしまうどころか、敵対してくることだってありえる。『傀儡政権』だってスポンサーにいつまでも忠実というわけではないように。また国内において比較的リベラルな傾向のある東部と、より厳格な北西部の文化的差異に基づく地域対立の関係もあるようだ。
また政府自身についても、ISI(パーキスターン統合情報部)に対する文民統制の欠如が長年指摘されているところであるし、北西辺境州の中のFATA (Federally Administered Tribal Areas)のように中央政府の管理がほとんど及ばないエリアがあるというのも、パーキスターン国内的にはそれなりの歴史的経緯と合理性をもって認識されているとしても、外国から眺めれば明らかに治安対策上問題が大きい。
従来、インドではテロが起きるたびにパーキスターンの関与を疑い、これを強く非難してきたが、国内しかも首都の中心でこうした事件が起きることを防ぐことができない政権自体にそもそも当事者能力は期待できるのだろうか。
だが『外国による関与』のみらならず、今年7月にバンガロール、アーメダーバード、そして9月にデリーで起きた連続爆破テロにあたり、犯行の主体がインド国内にある地下組織のインド人メンバー、つまりテロの国産化が進む傾向が大いに懸念されている。
社会の様々な面でいやがおうにもグローバル化が進む中、過激な思想やテロはいとも簡単に国境を越えたネットワークを形成していき、既存の統治機構はいつも後手に回っているようだ。事件に対する対症療法に終始しているようだ。国境という境目ごとの『タテ割行政的テロ対策』ではもはや封じ込めることはできないのではないだろうか。
テロ対策、治安対策は厳格になっていくいっぽうだが、その反面誰もが『叩くだけではダメだ』ということはとっくに気がついている。なぜテロが起きるのか?彼らの行動をどうやって防ぐことができるのか? テロリストたちはどうやって生まれてくるのか? こうした人々が出てこないようにするにはどうすればいいのか? 私たち人類に与えられた試練といえるだろう。
現象面に限って言えば、インドもパーキスターンも国内で頻発するテロに苦慮している。
『敵の敵は味方』というわけではないが、テロという共通の敵に対して地域で『共闘』していく必要があるようだが、それをできない時点でテロリストたちに大きく先んじられている。進化を続ける21世紀の『都市型ゲリラ』であるテロリズムに対して、果たして政府はついていくことができるのだろうか?

デリーで連続爆破テロ

7月下旬にバンガロールとアーメダーバードで連続爆破テロが起きたことはまだ記憶に新しいところだが、昨日デリーで同様の事件が発生した。カロール・バグ、グレーター・カイリーシュパート1その他で、午後6時10分以降の45分間で合計13回の爆発があり、18名死亡、125名が負傷と伝えられている。
またコンノートプレースのリーガルシネマ、サンサド・マルグ他4ヵ所においては、置かれていた爆弾が当局の処理班により不発処理がなされたとのことだ。事件の詳細ならびに背後関係等については、メディアによる続報を待ちたい。
今回の事件は先述の大きな事件が起きてからふた月も経たないうちに首都で起きたことから、よりインパクトの大きなものとなるのではないだろうか。そして不特定多数の人々が常に出入りする都市というものの脆弱性を再認識させる出来事だ。テロが起きることを誰も止められない。
過激派活動家たちの取り締まり、活動拠点の検挙、散発的に行なわれる検問などといった対症療法的なセキュリティ対策だけではどうにもならないことは、すでに誰もがよくわかっている。だからといって何をすればよいのか。行政・治安関係者の模索と苦悩は続くことだろう。そうした中で特定のコミュニティに対する不信が募る。バンガロールとアーメダーバードでの事件発生後、デオバンディそのものを危険視する記事を大きく掲げたメディアもある。
ちなみに日本でもデオバンディの一派であるタブリーギージャマアトが主に東武伊勢崎線沿線の何箇所の礼拝施設を運営していることはよく知られているが、こちらについてもいわれのない偏見が及ぶことがないことを願うばかりである。
SERIAL BLASTS RIP DELHI; 18 DEAD, OVER 125 INJURED (Zee News.com)

敵は意外に身近なところにも

先月25日にバンガロールで、26日にアーメダーバードで、それぞれ連続爆破テロが起きた際、テレビなどはこぞって『次はどこが狙われるのか?』と報道していた。今後さらに他の地方都市で同様の事件が起きるのかどうかわからないが、テロリストたちにとって当面の最大のターゲットといえば、やはり独立記念日であり、祝典の開かれる首都であり、ということになる。ゆえに当局としても、これは是が非でも死守しなくてはならないものだ。
そうした背景もあり、特に人の多く集まるところでは、多数の警官たちが動員され、車両の行き来が制限されていたり、徒歩以外の往来を封鎖していたりというところも少なくなく、そのエリアに住んでいたり、仕事等の用事があって出入りしたりするごく普通の良き市民たちにとっては、そうせざるを得ない世相になっているということは、実にハタ迷惑ということになるのだろうが、やはりそういう脅威があるのならば、甘受しなくてはならない必要悪である。
空港、ショッピングモール、ビジネス街の大きなビル、特に重要な名跡といった部分については、それなりにガッチリと保安上の措置が取られているように思うが、不特定多数の人々が、常に流れる水のように大小の道路や路地などから出入りする市街地では、やはり警察その他の治安関係者たちにとってかなり分が悪いことは想像に難くない。

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