パーキスターンに味の素進出

かつてアジアで「グルタミン酸を旨みと認識する食文化圏はヒマラヤの手前まで」と言われていたことがあった。

確かに中国や東南アジアではそのような食文化が展開されていて、インドから西はといえば、異なる味覚の世界という捉え方がなされていたようだ。

もちろんそれらの国々でも肉の旨みというのは誰もが判っていたこととは思うが、グルタミン酸調味料の大きな商圏といえば、やはりアジアの東側であったことは間違いない。

だがここ数年は、エジプトで「行商スタイル」での営業活動を展開する味の素が売上を伸ばしていること、人口増加率が高くて若年層の人口が厚く、今後順調な所得増が見込まれるイスラーム圏(といってもあまりに広大だが)での販路を求めて様々な策を練っている様子が伝えられている。

なぜエジプトで“味の素”が売れるのか?(東洋経済)

味の素、東アフリカに進出へ ケニアに拠点、来年度から販売 (SankeiBiz)

また、最近は日本初のハラールファンドが設立されて、日本の食品業界が本腰を入れてイスラーム圏へ進出を図りつつある様子もうかがえる。

日本初のハラルファンド 地銀など50億円出資 (日本経済新聞)

このあたりの動きが可能となったのは、やはり化学調味料メーカーの営業努力はもとより、昨今のグローバル化により、食の分野でも多様化が進んだことも背景にあるのだろう。

同様に、日本国内の消費が長く頭打ちであること、中国や東南アジア方面でも競合相手が増えて、マーケットが飽和状態にあるため、これまでは「圏外」であった地域に活路を求めなくてはならなったという事情もある。

そこにきて、4月に入ってから新聞紙上を賑わせていたこんな記事もあった。

味の素、パキスタン進出 「ハラル」市場の攻略拠点に(日本経済新聞)

これらの地域へのグルタミン酸を主原料とする調味料等の販売はネスレをはじめとする欧州勢が先行しており、日本企業はこれを追う形になるのだが、化学調味料の浸透とともに、地元の食の世界もジワリと変化を迎えつつあるのだろう。

果たしてそれが良いことなのか、そうでないのかは定かではないものの、今後の行方に注目していきたい。

第23回東京ダジャン

今年で23回目となる東京ダヂャンが千代田区の日比谷公園にて、4月13日(日)に開催される。長らく北区の飛鳥山公園で開催されてきて、一時期吉祥寺市の井の頭公園に場所を移し、その後日比谷公園で開かれるようになっている。

こうしたイベントでは往々にしてその国の駐日大使館が「後援」名義を与えていたり、来賓として最初に少し顔を出したりするものだが、東京ダヂャンについてはそうしたものは一切なく、純粋に日本で生活するビルマ市民たちの集まりである。

もともと日本に在住するビルマの人々はほとんどいなかったのだが、1988年の民主化デモとそれに続くクーデター、1990年の総選挙におけるNLDの大勝利という結果を無視して、政権を移譲することなく軍政の続行という時代に、祖国での迫害を逃れて、あるいはそうした状況に希望を失って他国に活路を求めた人々の中で、行き先に日本を選択する例が少なくなかったため、突如として日本の東京その他の大都市を中心に、ビルマ人コミュニティが出現することとなった。

その中で、政治活動を志す活動家がどれほどの割合で存在してきたのかはよくわからないが、多くは生活の糧を得るために日々忙しく働いてきたことだけは知っている。それでもあまり政治に関心のないという人は珍しく、多くは自身でできる範囲で、余暇の時間に祖国を良くするための政治活動に時間を割いたり、経済的な負担を引き受けたりしてきている。

とりわけ88世代と呼ばれる、1988年のデモに端を発した民主化要求運動の時代に、中心的な活動家として、あるいはそれを周囲で支えたり、あるいは賛同して運動に加わったりした大学生を中心とする当時の若者たちの世代はその傾向が特に強い。

多民族国家だけあり、ビルマ人としてのまとまりを欠く部分はあるかもしれないが、日本における民族ごとの活動も盛んである。そうした各民族が集まってビルマ正月を祝うというのがこの集まりである。

当日は好天に恵まれて、賑やかで和やかな集まりとなることを期待したい。

 

第23回東京ダジャン(ビルマ市民フォーラム)

 

 

PENTAX Q7 & Q10

外観はPENTAX Q10と同一のPENTAX Q7
Q7と2台持ちすると画角の違いでも重宝するQ10

以前、PENTAX Q7と題して取り上げてみた「世界最小デジタル一眼」を謳うこのカメラ、昨年7月の発売日に購入して以来、愛用している。

先代のQ10に比べて、センサーのサイズが1/2.3から1/1.7型へと大型化したといっても、画質そのものが劇的に向上するというものではなく、コンパクトデジカメと同等の大きさであることから、画質云々にこだわるほどのものではないとはいえ、それでも思いのほか写りが良いことと、レンズ交換式でまさに一眼感覚で楽しむことができるのが、Qシリーズの人気の理由だろう。

「トイレンズ」と名付けられたチープなレンズも加えて8点のレンズを持ち歩くとしても、カバンの片隅にこじんまりと収まってしまうのがいい。冬ならば上着のポケットに全て収まってしまうという機動性も頼もしい。

そんなわけで、ボディをもう一台買い増ししたいと思っていたので、このたび中古で購入することにした。同じQ7にするか、それともひとつ前のモデルであるQ10にするか、少々迷ったが、センサーサイズの違いから同じレンズを装着しても画角が少し異なるQ10を入手することにした。

Q7の発売後もしばらく平行して販売されていたQ10だが、昨年秋くらいには生産終了となっており、現在は1万円強程度で購入することができる。ちなみにQ7はその倍程度の価格である。(2014年4月現在)

ボディのデザインや重量は両者とも同一で、操作メニューもほぼ同じである。どちらもボディの色は黒を選んだので、軍艦部に刻印されているモデル名以外の外見はまったく区別がつかない。2台持ちしてもまったく苦になることのないコンパクトさがありがたい。

私にとって最も使用頻度の高い広角ズームをQ7で常用して、その他のレンズをQ10で使いまわすか、それともQ10はトイレンズの専用機にするかは、そのとき次第である。

写真を撮るのが趣味とはいえ、重くてかさばるカメラは億劫なので、ハイエンドなコンデジを創意工夫とともに思い切り使い倒すことを身上としている(?)私だが、やはりコンデジ単体での限界値は低い。レンズ交換して楽しむことができる「一眼式コンデジ」の存在意義は大きい。

「インドでどうだろう?この一台!」というところで、やはりPENTAXのQシリーズはイチオシだと私は考えている。

著名人の政界への転身

有名なスポーツ選手やタレントが選挙に出馬することが多いのは、社会で知名度が高いため広告塔としての効果が期待できること、そしてもちろんのこと有名であるがゆえに、たとえ新顔であっても個人的な人気により、浮動票を集めて当選する可能性が高いからでもある。

もちろん政治活動を続けてきて政界に通じている人物、経済活動や社会活動を通して高い見識を身に付けて来たような候補者と異なるため、素人扱いされることも少なくないが、社会の様々な層の人たちの意見を代弁する議会という場で、他と背景がまったく異なる人たちが加わるのは悪いことではない。

さて、そうしたスポーツ選手やタレントが選挙で候補者として登場することが少なくないのはインドも同様で、今回のローク・サバー選挙においては、俳優のパレーシュ・ラーワル、射撃選手でオリンピック銀メダリストのラージャワルダン・スィン・ラートール、クリケット選手として活躍したモハンマド・カイフ等々が出馬しているが、西ベンガル州だけを見てもサッカーの元インド代表のエース・ストライカーであったバイチュン・ブーティヤーとベンガル語、ヒンディー語映画等で活躍した女優、ムーン・ムーン・セーンが、マムター・バナルジー率いるTMC(トリナムール・コングレス)から立候補する。

ベンガル人であり、ミドナプル地区から出馬するムーン・ムーン・セーンはともかくとして、スィッキム州出身のブーティヤー族であるバイチュン・ブーティヤーがダージリン地区から出馬していることについては、いろいろな波紋を投げかけることになっている。

西ベンガル州のダージリン地区は、同州内の他の地域とは地理的、文化的、人種的な要素が大きく異なる。インドが英領であった時代に当時のスィッキム王国(現在のスィッキム州)から割譲された地域ということもあり、ブーティヤー族の住民も多い。それがゆえにダージリン地区においては盤石とは言えないTMCの有力候補として擁立されたわけである。

TMC candidate Baichung Bhutia campaigns in Darjeeling (The Indian EXPRESS)

だが同地区は長年、西ベンガル州からの分離活動が盛んであった地域であり、ネパール系の住民たちの利益を代表するGJM(ゴールカー・ジャンムクティ・モールチャー)がその流れを牽引している。TMCは、ネパール系ではないものの、サッカー人気の高いこの地域において、近隣地域であり、居住地域が重なることから民族的にも馴染みの深いブーティヤー族出身のバイチュン・ブーティヤーに期待をかけているはずだ。しかしながら地元のTMC活動家たちは、バイチュンのGJMとの融和的な姿勢について不満を隠さないという具合で、党内部でもいろいろ摩擦が生じていることがうかがえる。すでにひと月近く前の記事ではあるものの、参考までにリンクを掲載しておく。

Baichung Bhutia draws ire of local TMC leaders after seeking GJM support (The Indian EXPRESS)

 

 

ナコーダー・マスジッド

ナコーダー・マスジッドのエントランス

アーグラー郊外のスィカンドラーにあるアクバルの廟を模しているとされる、コールカーターのナコーダー・マスジッド。現在のグジャラート州西部のカッチ地方を起源とする商業コミュニティにより建造されたスンニー派のモスクで、1926年に完成している。

この街のモスクを代表する存在であるといえるが、地元のコミュニティではなく、国内とはいえ現在のインドの西端からやってきたムスリムたちにより建造されたというのは、いかにもコスモポリタンなコールカーターらしい。同時にこのあたりにはグジャラート州などインド西部起源のムスリム住民が多いのではないかという推測もできるだろう。

この地域は旧中華街、旧ユダヤ人地区等と交わる昔からの繁華街。元々、欧州人でも地元ベンガル人でもない外来の人々が多く定住したエリアなので、前述のグジャラートから移住したムスリムたちにも都合が良かったのかもしれない。

1万人の礼拝者を収容できる大型モスクなのだが、狭小地に建てられているがゆえに、伝統的なムガル様式を踏襲した建物ながらも、礼拝堂が多層構造になっているのが特徴だ。

エントランスのあるザカリア・ストリートからよりも、ラビンドラ・サラニからの側面の姿のほうが見事な造形を楽しむことができる。モスクが面している道路とキブラの方向とのズレを、建物が捻じれた構造にすることによって解決してあるため、ちょっとだまし絵のような印象も受ける。

ラビンドラ・サラニから眺めるとこんな具合

ユナーニー医学の腹薬

周囲は門前町となっており、様々なイスラーム関係のグッズやその他の日用品などを商うイスラーム教徒の商売人たちの店や露店が所狭しと賑やかに並んでいる。モスクのエントランス正面にあるAMINIA HOTELという食堂は、このバーザールで最も早い時間帯から開く店のひとつのようだが、まだ辺りが薄暗いうちから店のスタッフたちが準備を開始して、通りを行き交う人々の姿が多少目に付くあたりには営業を開始している。ここのネハーリーは絶品なので、朝の時間帯にここを訪れる際にはぜひ味わっていただきたい。

AMINIA HOTELでは、もちろんそれ以外の時間帯にも各種ケバーブ類その他、おいしいイスラーム系料理が沢山用意されている。いかにも下町の大衆的な料理屋さんといった風情で、エコノミーながらも味わいは本格的で、ナコーダー・マスジッドの向かいというロケーションも最高だ。夕方遅い時間帯になっても営業しているので、ぜひともナコーダー・マスジッド詣でとセットで訪れたい。