「おーい!また来たんだね!」
レーのメインマーケット界隈を歩いていると、誰かが背後から声をかけてきた。
振り向くと、そこでニコニコしているのは、昨年アリアン・バレー等に行くときに頼んだ運転手、ザンスカールからこの時期のレーに働きに来ているナワンさんであった。
「やあ、元気そうだね。今年はいつごろまで仕事なんだい?」
3年続けて訪問しているとはいえ、滞在期間は短いし、話をしたりする人は限られているものの、夏の時期にレーで商うために来ているカシミール人、レストランに出稼ぎに来ているネパール人、地元ラダック人の旅行代理店スタッフ等々、旅行者相手の仕事をしている人たちによく声をかけられる。何はともあれ、日々多くの人々を相手にしていながらも、こちらのことを覚えてくれているのは嬉しい。
レーのメインマーケット界隈は、再開発とやらでちょっと忙しい感じになっている。道路が通行止めとなり、路面を掘り起こしての工事が進行中。完成すると、ちょっと小洒落た一角になる予定らしい。
「ポプラの木は切り倒されてしまったし、なんか風情がなくなってしまうようで、どうかな?と思うんだけれどもね。」という人もあれば、「キレイになるのが楽しみだよ。」という者もある。
いずれしても、限られたエリアでの再開発であり、夏のシーズンにおける集客効果を狙ったものであるがゆえに、それで何かが大きく変わるわけではなさそうだ。
メインマーケットの裏手の旧市街の小路が入り組んだムスリム地区は、どこか中央アジアを思わせる雰囲気があり、土釜で焼いた挽肉入りのサモーサーをかじりながらフラフラと散歩するのがとても心地よい。
〈完〉