ポプラと水路の風景

ちょっと奮発してチキンのシズラー

レーの市街地をしばらく散歩してから、ポプラの木立の中に席を並べているレストランで昼食。背の高い木のさらに限りなく上に広がる高い空。ラダックらしい風景だ。

こんな空を見上げるだけでいい気分になってくる。

ポプラといえば、レーから郊外に出ると水路と並んで走る道の両側がポプラ並木になっているところが多い。村の中でも道、水路、ポプラ並木がセットになった景色をよく見かける。

サワサワと流れていく水に心洗われるような気分

仏教寺院の存在や家屋のたたずまいを除けば、中央アジアにも通じる雰囲気がある。古の時代には中央アジアとインドを結ぶ交易路にあったラダックだが、今もそうした地域と陸続きであることを思い起こさせてくれる。

どこの国にいるのか判らなくなるような景色

レーの町を散策

旧市街の旧王宮のふもとあたりはムスリム地区になっていて、彼らがタンドゥールで焼くパン屋が軒を連ねている。ナーンの類のパンや菓子類を買い求める人々で賑わう。そうした店の中には「サモーサー」を売る店もあり、三角ではなく細長いもので、中にはマトンが入っており、ジューシーで旨かった。同じような店が並んでいるが、店ごとに混雑の具合が違う。やはり人気店とそうでない店とがあるようだ。
パンを買い求める客
ラダック人たちの中で、ムスリムは少数派ではあるもの、レーをはじめとする市街地では存在感がある。その中で9割ほどはシーア派のムスリムたちである。本日の宿泊先は町の中心から外れた静かなロケーションにあるラダック人ムスリムの家族が経営する宿。娘さんと息子さんは州外の大学で学んでいるが、帰省中であった。
レーで宿泊した宿
書籍漁りも楽しい
宿には住み込みで働く二人のジャールカンド州からきた出稼ぎ人たちがいる。近くの他の宿やレストランといった観光客相手の場所でも働いているのはたいてい外から来た人たちだ。北インド各地やネパールなどから大勢の人々が仕事を求めてやってきている。
そうした中では、夏のシーズンだけラダックに来て稼いで、あとは故郷に帰ってなにがしかの仕事を得て暮らしているという人たちもあれば、夏はラダックで冬はゴア、その中間の切り替えの時期に少しだけ帰省することもある、といった具合の渡り鳥のような者も少なくない。
マニ車の間から旧王宮を望む
インドの他の地域からの出稼ぎといえば、観光客相手の仕事に限らない。道路や橋梁の建設現場で働く人々の大半はやはり外から来ている人たちだし、農家の畑で収穫作業に精を出している人たちの中にもまた出稼ぎ人たちの姿は多い。
ラダックは、インドの中で決して経済的に豊かな地域ではないが、人口が希薄であるため夏の繁忙期には人手が足りなくなり、外部からの労働力を必要としている。だがそれがゆえに本来の居住者たちだけではまかない切れないほどの仕事量をこなすことができ、地域の振興に貢献していると言えるだろう。
「12月とか1月とかに来てみなよ。このあたりを歩いても、ラダック人以外ほとんど目にしないんだよ。ヨソの人たちはシーズンが終わると帰ってしまうから。」
レーの中心部で商売を営む初老男性が言う。インド各地、そして世界各地からの旅行者はともかく、様々な業種で仕事に就いている地域外の人々が多い夏の時期のレーの町はまさにコスモポリタンといった具合だが、それは季節性のものであるということは、オフシーズンに訪れてみないとピンとこないことだろう。
カルズー池
カルズー池のところに出た。何という名前の植物か知らないが、池の中で無数の小さくて赤い花が咲いており、強い日差しの中で力強く輝いていた。

デリーからレーへのフライト

早朝5時前に、枕元でけたたましく鳴るアラーム音で目が覚めた。スマートフォンを使うようになって久しいが、これのおかげで不要となったものは多い。目覚まし時計、メモ帳、システム手帳、音楽プレーヤー等々。中には「カメラも要らなくなった」という人も少なくないかもしれないが、写真についてはいろいろこだわりがあるので、私はそこまで割り切ることはできない。
昨日予約しておいたタクシーで空港へ。日曜日早朝ということもあり、道路はガラガラで実に快適だ。飛行機はターミナル1Dから出る。数年前から操業している新しい空港ビルだが、それ以前の古いターミナルの時代の頃の混雑ぶりなどまるで遠い過去のこととなり、ゆったりとした気分で搭乗待ちできるのはいい。フードコートで注文したマサーラー・ドーサーをパクつきながら、空港でのヒマな時間は日記を書いたり、フェイスブックに投稿したりしながら過ごす。
インドでもスマートフォンの普及は著しい。少し前まではその類の携帯電話を持っているのは一見してエリート風の人たちであったが、今ではそうとは決して思えないような人もそんなので写真を撮ったりしている。一頃は圧倒的な人気だったブラックベリーはすっかり影を潜めてしまい、高級機といえばやはりアイフォーンかギャラクシーの上級機種のようだ。写真といえば、インドでも携帯電話やスマートフォン普及の関係で、日常的に写真撮影する機会が増えているのだろう。
フライトは定刻に出発した。雪山が連なる景色を見ることができることを期待して、窓側の席にしたのだが、そうではなかった。今年はモンスーンが派手に雨をヒマラヤ地域に降らせているためか、厚い雲に覆われている。それでも雲の切れ目から氷河の様子が伺えたりするのはさすが世界の屋根ヒマラヤだけのことはある。
雲が厚い
左下に見えるのは氷河
氷河の拡大写真
ようやくその雲が切れたかと思えば、まるで違う惑星のようなラダック地域に入っていた。どこまでも連なる水気のない、草木の存在感とは無縁の切り立った山々、水が流れて谷を形成したらしいにもかかわらず、水は流れていない。ごくわずかに水の流れが存在するところに緑があり、そこに人が生活していることがわかる。こうした景色はどこから始まり、どこで終わるのだろうか。
この山々の向こうはチベットか・・・?
荒涼とした景観の中でごくわずかに存在する緑。そこには水があり、人々の日々の営みがある証でもある。
こうした厳しい風景はヒマラヤ地域西部のムスリム居住地域にもあるが、寛容でゆったりとした自由闊達さが感じられるチベット仏教圏とは異なる。もしラダックがイスラーム化されていたら、人々の気質はかなり違うものとなっていたことだろう。もちろんラダック地域そのものがムスリム地域に隣接しているためもあり、居住しているムスリム人口は決して小さくはないのだが。
機体は次第に高度を下げて、空港近くに広がる軍のバラックの様子が目に入ってきた。

バングラデシュの島 in 瀬戸内

瀬戸内国際芸術祭の夏会期が始まり「ベンガル島」島開きとなったのは7月下旬のこと・・・というのは、実は友人がFBにアップした画像をきっかけに知ることとなったのだが、瀬戸内のある島が、現在とても賑やかになっているらしい。

高松市の高松港では、バングラデシュから民俗芸能のアーティスト、様々な職人たち合わせて100名近くが集まり、古典音楽、舞踊、機織り、陶芸にリクシャーアートのペインティング等々を披露しているとのことで、大変興味深いものとなっていることが伝えられている。

瀬戸内国際芸術祭、夏会期始まる「ベンガル島」島開き (asahi.com)

瀬戸内芸術祭2013】ベンガル島 (Youtube)

芸術祭で触れることができるアートはもちろんのこと、こうした形で参加しているバングラデシュの人たちについてもちょっと興味を引かれるところだ。会期は91日まで。

インドの華人コミュニティのドキュメンタリー

コールカーターには中華系社会が存在することで知られている。ときどきメディアで取り上げられることもあるが、現在の彼らの日常を描写したものとしてはもっとも良く出来た作品だと思う。

20分強という短い作品だが、今のコールカーターに暮らす華人たちの暮らしぶりを垣間見るのに取り早いだけではなく、限られた時間の中に凝縮されたエッセンスが詰まっているような、濃厚なドキュメンタリーだ。

ムンバイー在住のインド人ジャーナリストでドキュメンタリー映像作家としても知られるラフィーク・エリアスによる作品。彼の著書のDVDで鑑賞したことがある。秀作であるにもかかわらず、どこでも簡単に購入できるわけではない。

幸いなことにYoutube上で公開されていたので、多少なりともコールカーター華人社会に関心のある方はご覧になられることをお勧めしたい。

The Legend of Fat Mama (Youtube)