ついに発刊! Lonely PlanetのAfghanistan ?

今年8月に出ることになっていたLonely Planetの『Afghanistan』について取り上げたが、果たして出版そのものが遅れたのか、それとも予想以上の好調な売れ行き(?)となったのか判らないが、10月中旬になってようやく手に入った。初版だけあり全部で244ページ、同社のガイドブックとしてはかなり薄手だが、同社のガイドブックすべてに共通するレイアウトでまとめてあり機能的だ。
ただ他の国々のガイドブックと違う点もいくつかある。巻頭に『Authors』として、取材・執筆チームの面々のプロフィールが写真入りで出ているのが常だが、この本にはそれがない。従来とは違う手法で編集なされたのではないかと思われる。
これまた最初のほうの『Itineraries』で挙げられているモデルルートは北部のみだ。カンダハールを含む南部については、暑季の気候の過酷さはもちろんのこと、北部に比べて見どころがそれほど多くはないということもあるようだが、それ以上に治安面での問題が理由らしい。そのため『カンダハール市外への旅行は勧めない』とも書かれている。
ロンリープラネットのどのガイドブックにもあるように、『Women Travellers』『Travellers with Disabilities』『Gay & Lesbian Travellers』など、それぞれのカテゴリーの旅行者たちについてのアドバイスを含む記事を見かけるが、さすがに『Travel with Children』といった呑気な記述はない。
アフガニスタンの見どころや旅行事情について、断片的な情報はいくらでも手に入るものの、史跡へのアクセス、街歩き地図、地域間の移動手段、宿泊情報その他諸々の旅に関わる事柄を上手にまとめた一冊が『いつものガイドブック』のシリーズから発刊されたのはちょっとうれしい。
現在までのところ、有名どころから案内書が出たとはいえ、アフガニスタン旅行がブームになるとは思えないが、治安維持関係、NGO、ジャーナリスト等として同地に赴く人々による需要はかなりあるのではないだろうか。
もともと旅行するための本なので、多くの人々にとってその目的に役立てて欲しいものだが、周辺国でこのガイドブックを見つけたバックパッカーたちによるアフガニスタン訪問が急増、その結果彼らの失踪が相次いで、せっかくの意欲作が『禁断の書』として知られるようになった・・・という不幸な展開も頭の片隅に浮かぶようでやや気になる。

続 劇場『雑踏』 2

さて、翌朝二日酔いで痛む頭を抱えて目覚めた私であった。前日は食事の後、宿の一階で彼らの与太話の続きに耳を傾けつつ、宿で知り合った人々とメコンウイスキーを飲んでいるうちに深夜になっていた。
ともあれ、この日は記念すべき初めての海外街歩きである。宿の一階で遅い朝食を済ませてから外に出る。すでに時計は11時を差しており、陽射しは強くジワジワと汗ばんでくる。小路を抜けて大通りに出ようかというところで女性が地図を手にしてキョロキョロしている。
「すみません!」と遠慮がちに声をかけてきたのは、当時の私よりもかなり年上の女性。
年のころ30前後くらいだろうか。きちんとした身なりの感じの良い女性だった。
「あの・・・この場所にブティックがあったのを知りませんか?」
彼女は以前この場所を訪れて気に入った店があったのだという。どう見ても住宅街の中の通りに過ぎないのだが、タイ国鉄のターミナスであるホアランポーン駅も至近距離にあるので、まあそういうのがあってもおかしくないだろう。
「土地の者じゃないのでわからないです」
そう私が返事をすると、彼女はバッグから取り出した地図とメモ帳とを見比べながら腑に落ちない表情。
彼女はシンガポールから旅行しに来たのだという。適当な世間話をしつつ、「暑い日差しの中でも何だから」と近くの店に誘って飲み物を注文した。
少し欧州系が混じったようにも見える風貌でやや大柄な美人、しかも明るくてとても感じの良い人だ。彼女は学生時代から旅行が好きで、近隣の国々によく足を延ばしていたという。「その中でもタイは特に好き」とのことで、結婚してからもときどきこうやって訪れているのだそうだ。「ご主人は?」と尋ねると「仕事が忙しいし、旅行嫌いだからたいていひとり旅になってしまう」とのこと。かなり裕福な人のようで、宿泊先も日本語のガイドブックにも出ているリッチなホテルだ。
今日はどうするつもりなのかと聞けば、「特に決めてないけど、もしよかったら一緒にどう?」ときた。きれいな女性と一緒に街を散歩できるとあれば、断る理由などどこにもない。すでに正午近くになっていた。トゥクトゥクで少し走った先にちょっと小ぎれいな店があり、そこで彼女と昼食。

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続 劇場『雑踏』 1

しばらく前に、The Trainという映画を観た。
妻子とともにバンコク在住、広告会社に勤める演じる主人公ヴィシャール・ディクシト(イムラーン・ハーシミー)が、通勤時にBTS車内で知り合った人妻ローマー・カプール(ギーター・バスラー)と恋に落ち、連れ込んだホテルの客室でふたりは暴漢に襲われる。ヴィシャールが殴打されて気絶している間にローマーは暴行されてしまう。
その後、ヴィシャールの連絡先や家族構成などを知ったトニーという名の犯人にたびたび金を要求される。ドナーさえ現れれば、すぐにでも臓器移植を必要とする一人娘のため夫婦で蓄えてきた貯金にまで手を出すことになってしまう。
しかしここにきて、実は不倫相手のローマーという名は彼女が勤めていた職場の別人のもので、しかも彼女と暴漢はグルで同様の手口で様々な男たちから現金を巻きあげる常習犯であることが判明し、ヴィシャールは娘の手術費用と妻から失った信用を回復すべく立ち上がるというもの。
イムラーン・ハーシミーがよく出演する不倫のもの映画のひとつで、半月もすれば観たことさえも記憶からキレイに消え去ってしまう程度のものではあった。近年インド映画の撮影でよく利用されるタイだが、街中の色彩豊かな盛り場風景はこういう作品中でなかなかサマになってカッコいいと改めて感じ入った次第である。同時に、その場限りではなくこのようにして後から後から脅されるような目に遭ったら恐ろしいなぁと思っていたら、昔初めて海外旅行に出たときの記憶が、ふとよみがえってきた。

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素敵な図版満載のガイドブック

EYEWITNESS INDIA
『これはなかなかいいよ』
手にとって薦めてくれたのはインドに長く暮らす親友L君だった。彼にはいつも何かと世話になっている。
イギリス系の出版社DK (Dorling Kindersley)から出ているEYEWITNESS TRAVEL GUIDESというシリーズのINDIAという本である。表紙のデザインは凡庸だが、ひとたびページを開いてみれば、他の多くのガイドブックとの違いは明らか。エントリーされている土地の多さでは、LP(ロンリープラネット)のINDIAに匹敵する。しかしこれとはまったく性格が違う本なのだ。

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名車の系譜 2

ミニ
ミニ
兄の子
ところで『ミニ』といえば、世界で最もポピュラーなイギリス車であることに誰も異論はないだろう。1959年から2000年にかけて、40年以上の長きに渡り数々のマイナーチェンジを繰り返しつつ、ヴァン、ピックアップ、モーク(あまり知られていないが軍用のジープのようなタイプ)そしてスポーツカーとしてのミニ・クーパーと様々なバリエーションの車種を世に送り出してきた。
ミニのジープ仕様は主に軍用
このミニに、どこかインドのアンバサダーの面影を感じる人も少なくないと思う。それもそのはず、モーリス社のオックスフォード・シリーズ?のインド版が現在のアンバサダーだが、先述のベイビー・ヒンドゥスターンの本家モーリス版であるマイナーをデザインした<アレクス・イグノスィス(Sir Alexander Arnold Constantine Issigonis)が、同じくモーリス社のミニ・マイナーとして開発したのがこのミニなのだ。そんなわけでアンバサダーことオックスフォード・シリーズ?から見れば、兄の子つまり甥にあたる。
ともに長く親しまれたイギリス発のクルマ
イギリスのモーリスとは、もともと自転車を製造していた創業者が1910年に設立した会社で、イギリスの自動車産業を代表する企業にまで成長した。1952年には長年ライバルであったオースティン・モーターと合併してBMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)となる。その後1967年からはBLMC(ブリティッシュ・レイランド・モーター・コーポレーション)の傘下企業となる。そして1994年からはBMW社により買収されて以降、これまで保有してきたブランドをめぐる合従連衡の動きの中、これらの一部が独立したり切り売りされたりといった変遷があったが、もともとモーリスが開発した『ミニ』ブランドは、現在もBMWの手中にある。
オックスフォード・シリーズ?とミニ、どちらもイギリス発の最も長い期間親しまれたクルマとして人々の記憶に残ることだろう。
やはり血は争えない?
現在も生産が続くアンバサダーと、フルモデルチェンジする前のミニに共通する面影があるように、2001年に出たアンバサダーの新型モデルAVIGO(従来のモデルと並行して生産)とフルモデルチェンジ以降のミニのデザインの方向性もずいぶん近いように感じる。ああいうカタチのクルマをモダナイズすると似た感じになってしまうのかどうかわからないのだが、今や相互の行き来や縁もなくなってしまったとはいえ、やはり『近親者』であるがゆえのことかもしれない。
新型アンバサダー AVIGO
フルモデルチェンジ後のミニ
〈完〉