アソム・ティーはいかが?

 小学校の頃だったか、中学校の頃だったか、社会か地理か何かの授業で「アッサム」という地名が出てきたことがあった。すぐに「あ、寒!」というダジャレが思い浮かんで来たものだった。そのアッサムに自分が行くことになろうとは、あの頃は夢にも思っていなかっただろう。既に2回、アッサム州を訪問している。
 ところが、そのアッサム州(Assam)がアソム州(Asom)に改名されるようだ。アッサム州政府は、アッサム文学者でアッサム文学協会の元会長であるチャンドラ・プラサード・サイキヤーの要求に応える形で、180年前に英国人によって勝手に名付けられた「アッサム」を捨て、元来の「アソム」に戻すことを決定した。2月28日付けのタイムズ・オブ・インディア紙やザ・ヒンドゥー紙が報じていた。


 アッサム地方は元々、プラーグジョーティシュプラーとかカーマルーパなど呼ばれていた。1228年にシャン族がこの地に侵入し、王国を樹立した。彼らは「タイ」と自称していたが、土着の人々からは「アホム」と呼ばれた。元々アッサム地方北部は有毒ガスが頻繁に噴出する地域で人間は住んでいなかったのだが、その代わり犯罪者や反逆者たちの亡命先になっていたという。これらの人々が「アサマ」とか「アッサマ」と呼ばれていたらしい。「ア」は否定の接頭辞、「サマ」は「同じ」という意味なので、つまりは「異民族」みたいな意味だ。多分山間部に住む部族たちもそう呼ばれていたのではなかろうか?そしてそれが訛って「アホム」になったのだろう。よって、外来の「タイ」族が「アホム」と呼ばれるようになったのはおかしい話ではない。アホム王国は19世紀まで存続し、インド亜大陸で最も長く存続した王国となった。
 17世紀には、インドを訪れた外国人により、アッサム地方は、「Acham」、「Assen」、「Asam」などと表記された。その後、第1次ビルマ戦争の後の1826年にアホム王国と英国の間で結ばれたヤンダポ条約により、アッサム地方は英国に割譲され、「Assam」と表記されるようになった。「アッサム」という名称が180年間続いたというのは、この1826年を起点としているのだろう。
 ところで、最近立て続けに行われている都市名変更への批判の声は多いが、僕は別に賛成でも反対でもなく、そう決まったならそれに従っていく、という立場だ。現在英語では「Assam」と表記されているものの、ヒンディー語では元々「Asam」であり、カタカナ表記で悩んでいるときに一瞬だけ「アサム州」と表記しようかと思ったこともあった。アッサム州政府は名称変更をそれほど急いでいないようなので、正式に「アソム州」になるのは少し後のことになると思うが、もしそうなったら「アソム州」と表記していこうと思う。それにしても、「アソム」というのは、「アサム」のアッサミー語読みなのだろうが、どうせなら「アホム(Ahom)」の方が通りがいいのではなかろうか?日本語的にはちょっと間抜けではあるが。個人的に興味があるのは、世界的な紅茶ブランドとなっている「アッサム・ティー」が州名変更に合わせて「アソム・ティー」になるのか、であろう。
 ちなみに、ボンベイ→ムンバイー、マドラス→チェンナイ、カルカッタ→コールカーター、バンガロール→ベンガルールなど、最近都市名の変更が頻繁に行われているが、インド独立後に州名が変更されるのはこれで2例目となる。最初の例は1973年のマイソール州→カルナータカ州の名称変更だ。蛇足だが、もし3例目があるとしたら、それはオリッサ州なのではないかと思う。「Orissa」という地名も英語表記と現地語表記に違いがある。

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9 Responses to アソム・ティーはいかが?

  1. கொசு 蚊 says:

     地名変更がインドでは流行ですね。
    西べンガル州はどうなるんでしょう?あそこも西を取るとかいう話がありましたね。
    ムンバイ、チェンナイ、コルカタ(確かこれは文語で口語ではコリカタにちかいんでは?)なんかは成田空港の行き先表示も変わったが、これはインド政府の働きかけがあるんでしょ。単に原地音にちかずけようという日本の方の時勢?のせいではない!それじゃ、なぜインドはインドをやめてバーラトにしろとまでは言ってこないんでしょうか?(あるいは日本でもそこまで言う人はいない)。インド政府がそうしろというなJapanもニッポンにしてもらいましょうよ。僕はことあるごとにインド人に「おいらの国はニッポンだ!」と言ってまわるんですが。
     もっとも南インド(特にタミル人は)では、この表現好まないみたいです。இன்தியாインディヤーを使いますね。
    インドでも統一されてないから無理ですか。

  2. இன்தி&#299 says:

    "intiyaa"表示されませんね、本文では。

  3. arukakat says:

    >それじゃ、なぜインドはインドをやめてバーラトにしろとまでは言ってこないんでしょうか?
    IndiaとBharatの関係は、都市名の新名旧名の関係とはまた違うからなのではないでしょうか?正式国名とは別に、国際社会でより通用性のいい別の国名を持っている国は他にもたくさんあります。ビルマがミャンマーになったように、国名の変更を国際社会に求める国もありますね。インドも将来そういうことがないとは言い切れませんが、今のところIndiaでもBharatでもHindustanでもOKなのではないでしょうか?

  4. arukakat says:

    >Ghalib先生
    そういえば、確かにヒンディー語で「アーサーム」という表記も見ました。オックスフォードの辞書もそうなってますね・・・。Ghalib先生の指摘から考慮するに、ウルドゥー語をそのままダイレクトにヒンディー語表記したのだと思います。
    一方、アッサミー文字では「アサム」という表記になっているようで(http://as.wikipedia.org/wik…)、「アサム」というヒンディー語表記はおそらくそちらの方をベースにしているのではないかと思います。
    というわけで、デーヴナーグリー文字ではどちらもありなんじゃないでしょうか?

  5. arukakat says:

    ヒンディー=ヒンディー辞書の「Maanak Hindi Kosh」には、「asam」も「aasaam」もありますが、「asam」の項に「インド東部にある国境沿いの州だが、今日では誤ってaasaamと呼ばれている」と書かれていました。語源は上記の通りサンスクリット語の「a+sama」なので、「アサム」の方が正統派で、「アーサーム」は慣用とみなすべきだと思います。

  6. ghalib says:

    >ヒンディー語では元々「Asam」であり、カタカナ表記で悩んでいるときに一瞬だけ「アサム州」と表記しようかと思ったこともあった。
    えっ?「アサム」?ヒンディー語では通常[aasaam アーサーム]ではないんですか?マクレガーの辞書でも「アーサーム」ですが。ウルドゥー語でも「アーサーム」です。

  7. ghalib says:

    もう一点。
    日本語の「アッサム」と促音になるのは「Assam」をローマ字読みしたからです。英語の発音辞典では「アサム」(二つのアは基本母音エとアの中間音で、catやhatの[a])。アクセントは第1音節ないしは第2音節に置かれる2種類の発音があります。

  8. atabo says:

    >インド独立後に州名が変更されるのはこれで2例目となる。最初の例は1973年のマイソール州→カルナータカ州の名称変更だ。
    1968 年のマドラス州→タミルナードゥ州の事例もあります(1967,1969説もあり)。
    しかし、英語訛りの「アッサム」を捨てたいというのは理解できますが、「アソム」という、いわば蔑称に由来する名称に変更というのは不思議な感じもします。

  9. arukakat says:

    >ataboさん
    ご指摘ありがとうございます。確かにマドラス州→タミル・ナードゥ州がありましたね。ということはアッサム州→アソム州は3例目ということですね。
    新聞記事を鵜呑みにしてしまいました。

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