アミターブ・バッチャン、入院(再送)

 ボリウッドの往年のスーパースター、アミターブ・バッチャンは、21世紀に入り還暦を過ぎた今でも変わらずスーパースターの座に君臨し続けている。今年最もスクリーンに登場したのもアミターブ・バッチャンであろう。ざっと数えてみただけでも、「Black」、「Waqt」、「Bunty Aur Bubli」、「Paheli」、「Sarkar」、「Viruddh」、「Ramji Londonwaley」、「Dil Jo Bhi Kahey」と今年は今まで8本もの作品に出演している。そのアミターブ・バッチャンが突然腹部の痛みを訴えて入院してしまい、映画関係者やファンたちを浮き足立たせている。
 アミターブ・バッチャンは11月28日、デリーのエスコート病院で検査を受けた後、ムンバイーのリーラーワティー病院へ搬送された。当初はただの大腸炎と報じられていたが、12月1日には3時間半に渡る手術を受けており、実は重症なのではないかとの憶測が飛び交っていた。病院が発表した病名は空腸憩室穿孔(Jejunal Diverticula Perforation)。弱まった腸壁が袋状に肥大化し、そこに穿孔が空くという希少な病気らしい。手術は成功したようで、アミターブ・バッチャンの容態は快方へ向かっているようだ。


 アミターブ・バッチャンは1982年に映画「Coolie」(1983年公開)の撮影中に事故に遭って脱腸し、危篤状態になったものの手術で一命を取り留めたことがあった。その手術と今回の希少な病状との関連性はどうやら否定できないようだ。アミターブ・バッチャンは慢性的喘息や重症筋無力症を患っているため、完全な治療は2ヶ月かかるとも言われている。
 2ヶ月の入院・・・ファンにはもちろん気がかりだが、最も気が気でないのは、今までアミターブ・バッチャンの人気にあやかってきた娯楽産業界の人々である。一説によると、アミターブ・バッチャンの入院により、合計15億ルピーの計画に影響が出ているという。
 とは言え、ボリウッド映画の撮影で影響を受けているのはただ1本、ラーニー・ムカルジー、サルマーン・カーン、ジョン・アブラハムが出演する「Babul」だけである。同映画の撮影は12月に行われる予定だったが、バッチャンの入院によりキャンセルとなっている。今月中はさらにアミターブ・バッチャン主演の作品が2本公開されるが、12月9日公開予定の「Ek Ajnabee」も12月23日公開予定の「Family」も影響はないと見られている。カラン・ジョーハル監督の新作「Kabhi Alvida Na Kehna」、ラーマナータン監督の「Zamaanat」、マヘーシュ・マーンジュレーカル監督の「Struggler」などは撮影が既に終了しており、ルミー・ジェフリー監督の「God Tussi Great Ho」、ラーム・ゴーパール・ヴァルマー監督の「Darna Zaroori Hai」、「Ram Gopal Varma ki Sholay」、「Sarkar(今年公開のとは別?)」も来年2月以降の撮影となっており、それまでにバッチャンは回復すると楽観的な見通しがされている。
 最も影響が出そうなのは、アミターブ・バッチャンが司会を務める「Kaun Banega Crorepati 2」(クイズ・ミリオネアのインド版)であろう。KBC2は、毎週金、土、日に放映されている国民的人気を誇るクイズ番組である。KBC2を放映しているスター・プラスは、日曜日の放映を他の番組に差し替えることを発表した。これで1月7日までは何とか撮りだめしてある分でやりくりできるという。
 今アミターブ・バッチャンにもしものことがあったら、インドの娯楽産業界にはとてつもない危機が訪れるであろう。そのくらいインドの娯楽産業はアミターブ・バッチャン1人に頼り切っている状態だ。しかし、バッチャンのこの長期入院は、もしかしたら映画界やTV界にバッチャン1人頼みの危険性を知らしめる効果をもたらし、産業の健全化に多少役立つかもしれない。
 「これでインディア」でも触れたが、アミターブ・バッチャンの血統はただの一般市民のものではない。インド最高のカリスマ政治家の血が流れているのだ。アミターブ・バッチャンがいなくなるのを密かに待っている存在があるとしたら、それは国民会議派の指導層かもしれない。

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 12月4日付けのタイムズ・オブ・インディア紙には、バッチャン入院の経済効果について興味深い記事があった。1982年にアミターブ・バッチャンが映画「Cooli」の撮影中の事故で危篤状態になったとき、1983年に公開された同映画は84週連続公開の大ヒットとなった。推定によると、興行収入の50%はバッチャンへの同情により動員されたものだったらしい。バッチャンが事故に遭った場面で一瞬だけフレームを止め、「このシーンでアミターブ・バッチャンは重傷を負った」というテロップを入れるという巧妙な作戦も功を奏したようだ。
 さて、今月はアミターブ・バッチャン主演映画の公開が2本控えている。上でも紹介した通り、9日公開予定の「Ek Ajnabee」と、23日公開予定の「Family」である。どの程度の質の映画かは知る由もないが、映画界ではこれらの映画がバッチャンの入院により無条件でブロックバスター・ヒットに大化けする可能性がまことしやかに噂されているようだ。バッチャン人気の底力は果てしない。果たして1983年のマジックが20年経った今でも通用するのか、見ものである。

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