黒ペン地帯、青ペン地帯

 カシャーン!
 「しまった!」
 カシャカシャ・・・
 「ああ、駄目か!」
 こうしてまた、青ペンが1本殉死した・・・。
 僕の部屋は床が大理石となっている。日本ではなかなか大理石の床の部屋なんてないと思うが、タージ・マハルの国インドでは、ある程度のレベルの住宅になると必ず大理石床だ。夏場は涼しくていいのだが、ひとつだけ困った問題がある。それは、落としたものがすぐに壊れることだ。特に僕はボールペンをよく落とすので、今までいくつものペンを駄目にしてしまっている。冒頭の音声は、床にボールペンを落とした音と、僕の反応と、すぐさまペンを拾って壊れてないか試す音と、それが不本意な結果に終わったときの絶望の溜息である。ボールペンが先っぽから大理石床に衝突すると、必ず壊れるようだ。なるべくキャップをかぶせておけばいいのだが、ついつい忘れて放置してしまったりするため、未だにボールペンの無残な殉死は絶えない。


 まだ使い始めのペンが殉死するのが一番ショックだが、その中でも特に青ペンの殉死が僕には一番つらい。僕はペンにはこだわりを持った人間なので、お気に入りのボールペン(Mitsubishi uni-ball signo 極細0.38)を日本から持って来ているのだが、黒色は卸問屋でまとめて大量に購入する一方、青ペンはあまり持って来ていない。持って来たとしても、インド人にあげてしまうので、手元にはあまり残らない。今回日本に帰ったときは、つい青ペンを買って来るのを忘れてしまった。勉強には普段、黒ペンを使用しているが、書類などに書き込むときにはインド式に青ペンを使っている。そんなわけで、青ペンの殉死は格別ダメージが大きい。
 ところで、世界は少なくとも黒ペン地帯と青ペン地帯に分かれると思う。日本は黒ペン地帯、インドは青ペン地帯である。日本で「ペン」と言ったら、普通は黒ペンのことを指す。黒こそ毛筆時代からの由緒正しき基本色であり、その他の色は「装飾色」ぐらいの扱いでしかない。市役所や銀行に行っても、そこにおいてあるペンはまず黒ペンである。しかし、インドでは青ペンの方が主流だ。申請書や記入用紙には大体、「黒ペンまたは青ペンで書き込むこと」と注意書きがある。黒ペンも一応認められているが、青ペンで書く方が何となく好まれるような感じである。黒ペンだと、特にサインなどしたときに、コピーなのか実際に書いたのか区別がつかないときがあるが、青ペンなら確実にそこに書き込んだことが分かるからなのではないかと予想している。僕はインド大使館でヴィザを申請するときにも、「こいつは分かってるな」と思わせるために青ペンで記入することにしている(逆効果か!?)。観光地などにたむろっているインド人の子供たちはよく外国人に「ワン・ペン・プリーズ」と言って来るが、実はインド人にペンをプレゼントしようと思ったら、黒ペンよりも青ペンの方が断然喜ばれる。
 僕が適当に調べた限り、米国、英国、フランス、オーストラリアや南米諸国も、ペンの主流は、黒よりも青のようだ。インドが青ペン地帯になったのは、英国の影響である可能性が高い。一方、中国、韓国などの東アジア諸国は黒ペン地帯のようだ。赤ペン地帯というのがもしかしてあるかもしれないが、今のところ赤ペン先生以外はそういう情報はない。よって、世界は黒ペン地帯と青ペン地帯に大別できるように思える。また、黒ペン地帯は、書道の文化圏と重なっている可能性が非常に高いと推測できそうだ。

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3 Responses to 黒ペン地帯、青ペン地帯

  1. 住田 says:

    アルカカット様
    こんにちは。部屋の床が大理石なら、机の下にマットなどを引くとどうでしょうか?ペンが落ちた時のダメージを和らげることができるかもしれません。

  2. arukakat says:

    住田様
    解決案をご提案いただき、ありがとうございます。いいマットがあれば、敷いてみようと思います。

  3. まー says:

    面白いです!!
    青ペン地帯・黒ペン地帯(と赤ペン地帯)
    学校の先生は何色を使っていらっしゃいますか?先生は赤ペンを持っているなんてことはありませんよね^^
    あと、いつも思うんですが、「物を頭に乗せて運ぶ地帯と乗せない地帯」っていうのはどうなんだろう。何かご存知ですか。

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