野良牛たちのアンシャン

 デリーは最近、公道から野良牛を排除する方向に急速に向かっている。デリー市局(MCD)が発表した、野良牛1頭につき2000ルピーの懸賞金は、市内で野良牛争奪戦を巻き起こしたようだ(実際にその様子は見たことがないが)。本ブログでもそのニュースを取り上げたが、けっこう反響があった。最大の関心事は、捕獲された野良牛がその後どうなるのか、であった。その答えが、8月26日付けのタイムズ・オブ・インディア紙に掲載されていた。結論から言ってしまえば、それは悲しいニュースであった。
 記事によると、捕獲された野良牛は、「ゴーサダン(牛養護所)」と呼ばれる場所に集められる。デリーにはゴーサダンは5ヶ所あり、NGOによって運営されている。ところが、ここのところそれらのゴーサダンでは毎日3〜5頭の牛が死んでいるという。野良生活をしていたらもっと生きれたはずの牛が、である。

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ゴーサダンで死ぬ野良牛たち


 タイムズ・オブ・インディア紙の取材によると、ナジャフガル地区にあるマーナヴ・ゴーサダンでは、約450頭の牛が収容されていたが、少なくとも5頭の牛の死体が腐敗した状態で放置されていたという。MCDは牛の死体を運ぶためにトラック業者を呼んでいるのだが、業者が来ないため、そのような状態になっているのだとか。他のゴーサダンでも同じような状況のようだ。
 野良牛たちがゴーサダンで次々に死んでいく理由として、ゴーサダンで働くボランティアの1人は、「野良牛たちはゴミを食べるのに慣れていて、胃はポリエチレンを含んでいる。だから、ゴーサダンで出される食べ物を消化することができない」と述べている。多くの野良牛たちは、飼料を食べるより空腹でいることを選ぶようだ。
 確かに道路をうろつく野良牛は自動車などにとって非常に危険だが、捕獲された野良牛たちがバタバタと死んでいくと思うと心が痛む。ゴーサダンで飼料を拒んで死んでいく野良牛たちの姿は、何となくアンシャン(ハンガーストライキ)によって英国政府に非暴力の戦いを挑んだマハートマー・ガーンディーの姿を想起させる。「地上は誰のものでもないのに、人間たちが勝手に自分のものと決めつけ、家を建て、道路を敷き、挙句の果てにはオイラたちを追い出してこんなところに放り込んだ。こんな横暴、許されるか」という無言の怒りが聞こえてきそうだ。それとも、もっとうまい飯よこせ、という身体を張った抗議運動なのだろうか?インドの牛は、やはりインドの牛ということか。
 よく知られている通り、ヒンドゥー社会では牛殺しは大罪である。捕獲されたことが原因で野良牛たちが死んでいると確定したら、その批判の矢はMCDに、そしてデリー政府に向けられるだろう。それに加え、インドは動物愛護運動の勢力も強い。このままだと大きな問題に発展しそうだ。

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5 Responses to 野良牛たちのアンシャン

  1. 住田 says:

    アルカカット様
    野良牛の行き着く先がこの有様だと胸が痛いです。ポリエチレンを含んでいたら、ゴミは消化できても飼料は消化できないということですか?ポリエチレンが胃にあったら、なんでも消化できないと思うので捕獲されても野放しでも同じことではないでしょうか?食事をとらないという行為は環境が変ってストレスを感じているのかもしれませんね。動物愛護運動がどのようにでるか気になります。

  2. arukakat says:

    ポリエチレンと消化の関係はよく分かりませんが、生ゴミばかり食べていると、胃の生草を消化する機能が退化してしまうということではないでしょうか?そういえば、田舎の牛は本当に立派な体格と角をしていますが、デリーの牛は弱々しい印象があります。

  3. まー says:

    情報ありがとうございます。記事読みました。(場所はgosadanという名前だったんですね。)これはヒンドゥー教の人にとっては衝撃的でしょうね。22日にも記事があって気になっていたのですが。
    収容過多な場所や重なる移動などでストレスになっているかもしれませんね・・・。
    死にそうなノラは時々見ますし、感染症が多いので足もひきずっていますよね。あのまま連れていくとその途中でも死んでしまいそう。
    胃にゴミから漁ったビニール袋が入ってそれで死ぬという話も聞きますけど、ポリエチレンってなにかな。ドクターの方の言葉はちょっとこじつけっぽく聞こえます。
    飼料自体が健康な牛用なのでしょうね。弱っている牛用の飼料はないのかも。
    こうやってマスコミが掲載するとインド人のみならず外国人が運営している愛護団体も強い抗議をしそうに思います。

  4. kashi says:

    海亀が、クラゲと間違ってビニール袋を誤飲してしまう問題。実際に亀の胃袋から、ビニール袋が出てくる映像も何度か見ました。
    年々インドのビニール袋の消費(ゴミ)は、凄まじい勢いで増加…..牛は、ビニール袋を誤飲しないのか?と気になって見ていた事があります。幸い私の観察していた牛は、おりこうさんで、ゴミの中から見事にビニールを避けていました。ビニールにこびり付いていた物もきれいに舐めていました。
    ある日の会話
    「どうして肉は、食べちゃいけなくて、牛乳はいいの?」と私・・・・
    「牛乳は、野菜でしょ」と、ヒンドゥー教徒のガイドA君・・・・
    私「野菜じゃないよ!」 A君「じや、肉ですか?」 私「肉じやないよ、乳製品ってわかる?」 A君「分からない」 私「animal proteinだから、どちらかと言うと動物性?」A君「?????」A君「ヒンドゥー教徒にとって、牛はお母さんと同じ。だから、牛乳を飲むのは、お母さんのおっぱいを飲むのと同じ」と・・・
    お母さんに懸賞金をつけたり、オークションにかけたりしたらまずいでしょう・・・ましては、死に追いやったりしては・・・450頭のうち5頭・・・・その死因は?
    どんどん捕まって、どんどん死んでいったら・・・その遺体の行くへは? 土葬はありえないし・・・色々な点で???です。
    乞う、続報!

  5. まー says:

    牛乳は野菜って面白いですね。
    私の周りのインド人も「牛さんお母さん説」です。
    土葬はありえるようです。
    昔は動物と子供は川に流していたそうですが法律で禁じられてからは土葬もするようです。他の動物に荒らされないように多量の塩と一緒に土葬します。無理を言えば火葬もあります。遺族が決めると言えばいいのでしょうか。
    ヤムナ東岸に象コミュニティがありますが、象さんが死んだらどうするんだろうかとずっと疑問に思っているんですが・・・

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