海を渡ったハヌマーン像

 1月27日付けのヒンドゥスターン・タイムスに面白い記事が載っていた。題して「津波がハヌマーンをスリランカから南アフリカまで運んだ」。
 24日の朝、2人の姉妹が南アフリカ共和国ステンジャー市のブライスデール・ビーチを散歩していたところ、砂浜の中に奇妙な物体を見つけた。それは猿の形をした重さ25kgの像で、首には「シュリー・ラーム(吉祥なるラーム王子)」と書かれた彫刻のペンダントをかけていた。紛れもなく、ヒンドゥー教の神様の1人、ハヌマーンの像である。基部は壊れていたが、「スリランカ」という文字がペイントされていた。姉妹は、12月26日に発生した津波により、スリランカから南アフリカまで運ばれてきたのだろうと考え、像があまりに美しかったため、自宅に持ち帰った。南アフリカ共和国では、英領時代の名残でインド系移民が全人口の約3%を占めており、ヒンドゥー教寺院もあるようで、姉妹はその像を寺院に寄付する予定だという。

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南アフリカ共和国に流れ着いた
ハヌマーン像


 本当にスリランカから南アフリカ共和国までハヌマーン像が漂着したのかは意見の分かれるところである。海洋学者のフランク・シェリントン教授は、「靴などの物体が太平洋や大西洋を渡ったという報告はあるものの、潮流によって25kgの像がこのような距離を漂流するとは思えない。像がどこから来たのか、精査が必要だ」と慎重な意見を述べている。ウムゲニ・ロード寺院のセルヴェン・タヴェル氏も、「その像は改宗した家族によって捨てられたものだろう。同様に廃棄された像は、今までいたるところで見つかっている」と否定的な見解を述べている。だが、今回のハヌマーン像の発見は宗教指導者たちを最も興奮させているようだ。ステンジャー市のハヌマーン寺院グループ(そんなのがあるのか!)のマダン・スィン氏は、「最近の若者は道徳と信仰心が薄れてきている。この出来事は、信心深い生活をするようにとの神のお告げだ」と都合のいい解釈をしている。ちょうどハヌマーン寺院があるのだし、マダン・スィン氏による自作自演のような気がしないでもない。
 だが、津波と関係あるにしろないにしろ、「スリランカ」と書かれていたなら、スリランカから流れてきた像であると考える方が普通だと思うし、その方が面白い。
 それにしても、よりによって発見されたのがハヌマーンの像とは、偶然の悪戯を感じぜずにはいられない。ハヌマーンと言えば、「ラーマーヤナ」の中で、海の上を飛んでランカー島まで行ったことで有名である。英領インド時代、サトウキビのプランテーションで働くため、フィジー、モーリシャス、トリニダード・トバゴなどの島々に連れて行かれたインド人労働者たちは、不安に満ちた船上で「ハヌマーン・チャーリーサー」というハヌマーンの賛歌を歌ってお互いを励ましあったという。漁船の旗にハヌマーンが描かれることも多い。ハヌマーンはインドでは航海の守り神である。というわけで、インド洋を渡って南アフリカまで漂着するのに、ハヌマーンほど適した神像はいないのだ。
 ハヌマーンがスリランカから南アフリカ共和国まで漂着したのは、インド人もビックリ、ヒンドゥー教徒も大喜びの珍事件と言える。

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