ボリウッド音楽、公共の場での使用が有料に!?

 インドはなんと音楽に溢れた国だろう。バスの壊れかけたラジカセから、オートリクシャーの騒々しいラジオから、オシャレなモールの高品質スピーカーから、結婚式を盛り立てるブラスバンドから、そして人々のパーンで赤く染まった口から、ボリウッド音楽のメロディーが流れ出て来ない日はない。だが、それも過去のものとなるかもしれない。
 10月24日付けのヒンドゥスターン紙によると、インド随一の音楽会社、Tシリーズに引き続き、ボリウッドで一大帝国を築き上げているヤシュ・チョープラーの音楽会社ヤシュラージ・ミュージックも、自社が著作権を持つ音楽の、公共の場での使用を有料化することを決定した。つまり、「Bunty Aur Bubli」、「Fanaa」、「Dhoom:2」、「Salaam Namaste」、「Kabhi Alvida Naa Kehna」などの映画音楽を公共の場で自由に流すことができなくなった。


 Tシリーズは既に、自社が著作権を持つ音楽を公共の場で使用するライセンス料として、5つ星ホテルから毎年5万ルピー、ショッピング・モールからは各TVセットに付き1,000ルピー、結婚式の主催者からは最高25,000ルピー、ブラスバンドからは1,500〜2,000ルピーを徴収している。それだけでなく、ソーヌー・ニガム、クマール・シャーヌー、アビジート、ヒメーシュ・レーシャミヤーなどのシンガーたちのショーの主催者や、ダンス教室の運営者などもライセンス料を支払わなくてはならなくなっている。ヤシュラージ・ミュージックが著作権を持つ音楽も、おそらくTシリーズのものと同様の扱いとなるだろう。
 法律上、ライセンスなしにこれらの音楽を使用したものは、6ヶ月〜3年の禁固刑、または5,000〜2万ルピーの罰金刑を科せられる。
 音楽会社がライセンス料の支払いを求めているのは、音楽の公共の場での使用を余儀なくされている立場の者ばかりだ。おそらく庶民にはそれほど関係ないだろう。だが、海賊版の横行とか、違法ダウンロードとか、そういう切実な問題を野放しにして、まるでその埋め合わせをするかのように、「取れる者から取る」のは、どこか本末転倒のような気もする。しかし、この強気の態度は、ボリウッド音楽に対する圧倒的な需要を見越してのことだろう。ボリウッドは今や、依然として博打性はあるものの、関わった者全てが潤う一大産業となりつつある。
 音楽に関しては、本当の問題は庶民のカセット・CD離れであろう。僕はいい映画音楽なら迷わずCDを購入しているが、僕の周囲で音楽CDを購入しているインド人はほとんどいない。僕の部屋にあるCDの山を見て、必ずインド人が聞くのは、「これはVCDか?」という質問である。僕が「全部オーディオCDだよ」と答えると、かなり残念そうな顔をする。あたかも、VCDなら宝の山だが、音楽CDならゴミの山、という表情である。今どき、質にこだわらなければ、音楽はインターネットから簡単にダウンロードできてしまうし、多くのインド人は、音楽はわざわざ金を出してまで買うものではない、と思っている節がある。
 おそらく次に問題となるのは映画スターの肖像権であろう。映画スターの写真は自由にあちこちで利用されている。街中で売られているポスターなんてひどいものだ。僕もウェブサイトで彼らの写真を勝手に利用してしまっている。だが、この流れで行くと、近い将来ライセンス料を要求されるようになるかもしれない。
 とにかくまずは、公共の場でインド映画音楽を気軽に流すことが、これからだんだん難しくなっていきそうだ。

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